更新日:2025.10.07
たわらファーム 川村雄祐さん SNSの総登録者数30万人以上。若手ならではの視点で農業を発信中【後編】祖父母の知恵と経験を受け継ぎ、農業の道へ

「Evangelist」
第6回目のゲストは、たわらファーム 川村雄祐さんです。
同世代の仲間たちと一緒につくる野菜
私は長男で、姉と私の二人姉弟。どちらかが継がないと、畑だけでなく、祖父母の知恵や経験もこのまま失われてしまう――それは本当にもったいないと感じていました。
農業に関する知識をすべて吸収できたらいいなという思いがあり、農業という職業を選択しました。
野菜を育てていて、「もう嫌だな」とか「仕事に行きたくないな」と思ったことが一度もないんです。
苦になったことがないのは、自分にとって一番いい働き方だなと感じています。
今は、同年代の仲間たちと一緒に野菜を育てていて、収穫できたときの達成感や、うまくいかなかったときの課題を分かち合えるのがすごくいいんですよね。
お互いに高め合えるので、1人で農業をやるよりも、仲間と一緒に取り組む楽しさや喜びのほうが大きいなと実感しています。
たわらファームでは、ハウスを使った施設栽培がメインです。ハウスだと、ある程度安定した収益が見込めますし、気候変動にも左右されにくい。

一方で、路地栽培の野菜は本当に難しい。天候の影響や、肥料・液肥のタイミングも、雨や気温によって大きく左右されます。
今年も、暑さの影響で思うように育たないことがありました。
だから、畑で育てる野菜に関しては、失敗のリスクも高く、常に挑戦の連続です。
トマトやイチゴであれば、「今年はかなりうまくいったよね」と言える年もあるんですが、路地野菜に関しては、まだ一度も「これで完璧だった」と皆が納得できた年はありません。
そこはずっと、苦労しながら取り組んでいるところです。
若い力でここまでできることをもっと広めたい

うちは若手中心でやっているので、「どれだけ大きな規模で野菜を育てられるか」に挑戦しています。
若い世代でこういった農業に取り組んでいるところは、まだあまり多くありません。
だからこそ、「若い人たちでも、ここまでできるんだ」ということが、もっともっと広まっていってくれたらいいなと、自分自身は思っています。
岐阜県には「青年農業士」という、40代以下の農家による団体があるのですが、今年はちょうど僕の地区が担当の年でして……運が良かったのか悪かったのか(笑)、その会長になってしまったんです。
ただ、その地区には若い人がほとんどいなくて、結果的に僕が会長を務めることになりました。
会長になってからは、いろんな方が集まる場に出る機会が増え、岐阜県のトップ層の方々との交流の場にも参加するようになりました。
そういう場に行くと、周りからすごく応援されている実感があります。
「期待してくれているんだな」と強く感じますし、その分、ちょっとプレッシャーもありますね。
発信力を強く!

これからは、発信力をもっと強くしていかないといけないと思っています。
ただ「若い子たちが農業をやっている」というだけでは、なかなか広がっていきません。
全国的に見ても、若手だけで農業に取り組んでいるのは珍しいケースだと思うので、そういった取り組みがもっと広く知られるように、発信していきたいと考えています。
発信力というのは、農業に限らず、これからの時代に必要な力だと思います。
発信力が高まれば、それによって多くの人とつながることができたり、協力できる機会が増えたり、さまざまなチャンスが広がる可能性も大きいです。
だからこそ、これからはその「発信力」をもっと強化していきたいと考えています。
以前、地元の小学校の給食センターに、いちごジャム用の冷凍いちごを届けて回ったことがあったのですが、講師として野菜について説明したとき、子どもたちから「サインください!」と言われたんです。
僕の動画の視聴者は年齢層が高めなので、小学生たちは知らないだろうと思っていたのですが、「えっ、みんな知ってるの!?」とびっくりしました。
自分の発信が、地元の小学生や中学生にまで届いていることがすごく嬉しくて、「ちゃんと知名度が上がってきてるんだな」と実感した出来事でした。
直営店を構えて

最近は、知名度がすごく広がってきたと実感しています。
地元の新聞やテレビなど、メディアからの取材がちょくちょく入るようになりました。
正直、農業だけをやっていたら、こうした機会はなかなか増えなかったと思います。
でも、自分で店舗を構えただけで、こうして地元の新聞やテレビが取り上げてくれるのであれば、それは本当にありがたいことだと感じています。
メディアに注目されるきっかけにもなりましたし、すごく良い経験をさせてもらっています。
資材に頼りながら家庭菜園を

家庭菜園では、「できるだけ安く育てよう」と考える方が多いと思いますが、もう少し資材に頼ってもいいんじゃないかなと感じています。
たとえば、ハイポネックス原液のような液体肥料や、活力剤など、意外とそういったものをまだあまり使っていない方が多いんですよね。
でも、身近で手に入る資材をうまく活用すれば、今の気候や環境に合った育て方ができると思うので、「もったいないな」とすごく感じます。
追肥も、たった1回与えるだけで野菜の育ち方が全然変わってきますし、定期的なケアが必要なんだということを、もっと多くの方に知ってもらえたら嬉しいですね。
もちろん、暑くなると失敗するリスクも高まりますが、暑さに強い野菜もいろいろあります。
そういった品種を選び、しっかりと資材を使って育てれば、暑い中でも収穫できますし、もっとたくさん収穫できたり、育てられる期間が長くなったりもします。
そういった知識や工夫を、もっとたくさんの人に伝えていきたいと思っています。
【おわり】
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