バラをもっと深く知る㊼公共の場を彩る①海外のバラ
陽光を浴びながら低い位置でオレンジの「色の面」が輝く‘シュガー キャンディー ローズ’。オーレアリーフの低木や芝生の緑との対比が鮮やかで、まるでフランスで見るような景観。
右奥は‘ピンク ブリック ハウス’(ぎふワールド・ローズガーデンで)。
紅色やピンク、黄色の「色の面」が目に鮮やか。
それも春だけでなく、四季を通じて花が咲き続け、見た人に彩りとやすらぎを与える~一般に「修景バラ」(日)、「ランドスケープローズ」(英)、「ローズペイザージュ」(仏)といわれる、公園など公共の場に使いやすいバラが、耐病性や連続開花性などの向上により、増えてきています。
最近日本で発表されたバラからこれを見てみましょう。
手間をあまりかけずに咲き続ける
バラの主な栽培管理は①葉をきれいに保つための薬剤散布②株姿を整えるための剪定③生長させるための施肥があげられます。
この手間はバラのタイプによって異なり、公共の場には最低限の管理で咲くバラが求められます。
バラの管理をバラの樹の性質に置き換えると、①薬剤散布の軽減は「耐病性の高さ」につながります。
②剪定の手間を少なくするのが、「枝が伸び過ぎないこと」。株がコンパクトなバラでも飛び出る枝が出ず四季を通じて継続して花を咲かせる~短枝に連続開花するものが求められます。
③「施肥」は株を生長させるための栄養補給。地植えなら苗が小さいうちは通常通り、株が育ったらあまり多く必要がありません。
とくに①、そして②は、「花の美しさ」や「香り」以外に、多くの育種家にとって共通する「樹の性質」向上の大きなテーマとなってきました。
いま新発表されるバラが〇小中輪・中輪〇繰り返し咲き〇株がコンパクトで木立性のバラが増えているのは、一般のニーズに対応するものです。
手間をあまりかけずにローメンテナンスで四季を通じて花を咲かせたい、公共の場に植えるバラはなおさらです。
殿堂入りで評価上がる‘ノック アウト’
その性質を持った典型のバラが、 ‘ノック アウト’(ラドラー/メイアン)。中輪で紅色、ピンクで八重咲き品種も。樹は木立性で高さ0.9~1.2mです。
2000年に作出、2018年に第18回世界バラ会デンマーク・コペンハーゲン大会で殿堂入りしたという信頼性が付加されて一気に広まり、“丈夫なバラ”の代名詞ともなっています。
日本と違い海外では一般にバラを離れて見ます。ヨーロッパの国際コンクールでも咲いた株姿が重視されます。
近くで花を見る習慣がある日本では、かつてバラ愛好家から「丈夫なのはわかるけど、花が…」と言われたものの、離れて見てずっと咲き続け色の面をつくっているので、一般の人には好評。近寄って花を観賞するバラではありません。
いま各地の公園や、街によっては道路の中央分離帯などにも郡植されています。
木立性で株がコンパクト
1980年代のころから開発されてきたローズペイザージュは、ヨーロッパでは小輪で枝が横に広がるシュラブが多く利用されますが、日本の場合は枝が横にはみ出たり花が地面につくことを嫌う心理もあります。
‘ノック アウト’が公共の場で受け入れられたのは「木立性である」ことも大きな理由でしょう。
その木立性のタイプで登場したのが、株がコンパクトな品種。小さい花がとても長く咲く‘ゼプティ’(メイアン2019年、小輪、木立性の半直立性で高さ0.25~0.35m)と、‘レッド キャプテン’(ピン・リン2018年、小中輪、樹高0.4~0.6m)です。(写真はぎふワールド・ローズガーデンで)。
街を彩る「タウンスケープローズ」
いま株がコンパクトな木立性で連続開花するバラとして注目を集めているのが、‘シュガー キャンディー ローズ’(メイアン2022年)です。
2025年に福山市で開催された「世界バラ会議福山大会」の記念バラに選ばれ、このほど愛称が‘キャンディー ローズ フクヤマ’とつけられました。オレンジからキャンディーピンクに変わる小中輪半八重咲きで、株は高さ0.5~0.7mの木立性・半横張り性です。
福山では「タウンスケープローズ」として位置づけられています。「ばらのまち福山」はもとより、ほかの街も明るくも彩っていくことでしょう。
もう一つのコンパクトな木立性の品種が、2021年作出・日本では2023年発表の‘ピンク ブリック ハウス’(スプロール/メイアン)。
蛍光ピンク色・中央黄色の半八重咲き小中輪で、樹は高さ0.5~0.6mの半横張り性です。春はたくさん、秋(写真下)にも多く花が咲きます(ぎふワールド・ローズガーデンで)。
香りのバラも
修景用途のバラは香りが淡い品種がほとんどですが、耐病性が高く初期生長が早く強い香りを放つ品種も。
韓国エバーランドローズの‘パフューム エバースケープ’(2025年)は花保ちが良く、ダマスク系の強香があります。花は中輪八重咲き。樹は高さ0.6~0.9mの木立性です。
小中輪・中輪品種を公共の場に
‘ノック アウト’作出から26年、殿堂入りから8年経ち、ここ数年でバラ全般の耐病性・連続開花性が向上し、あえて「ランドスケープローズ」「ローズペイザージュ」と位置づけられていなくても、小中輪や中輪の木立性品種が、公園でも利用されるようになってきました。
コルデスの品種で、まず‘マチネ’(コルデス)があげられます。2019年発表のラベンダーピンクの小中輪で、樹は高さ0.9~1.0mの半直立性です(花菜ガーデンで)。
花の美しさを楽しめる絞りの品種も。2023年作出でADR認証、2025年日本発表の‘シムサラビン!’は、赤と白の絞りの中輪一重。
ぴかぴか光る濃緑の照り葉に映えます。樹は高さ1.2mの横張り性です。
2026年春の発表品種から
2026年発表の最新品種にも、公共の場に植栽できるバラが続々登場しています。
絞りの品種では‘ロリポップ’があります。オレンジ色と黄色の絞りの半八重咲き中輪。
樹はFLタイプの木立性・半直立性で、高さ0.8~1.0m。2023年作出、各種国際コンクールで受賞しています。
もう一つがピンク色の半八重咲き中輪の‘ラ フェリチータ’。
樹は木立性・直立性で、高さ0.8~1.0m。2024年ADR認証。夏剪定を行わなくても咲き続ける品種です。
タンタウ社からは鮮やかな黄色の八重咲き品種‘サンサン レモン’が発表されました。
樹は高さ0.8~1.0mmの木立性・直立性です。
景観の中でバラがつくる「色の面」を見る
これらのバラ、最初から公共の場の修景用に育種・発表されたものではなく、出自は違っています。
例えば‘ゼプティ’と‘シュガー キャンディー ローズ’は、もともとフランスでコロナ禍で外出できない中、ベランダやルーフバルコニー等で鉢植えで楽しむ「アーバンローズ」として発表されました。
それが日本の気候と栽培環境に合って、公共の場の植栽に利用されるようになってきたものです。
バラに必要な機能としてはいまや「耐病性」だけではありません。「開花連続性」も必要で、「株のまとまりが良い」などプラスアルファの機能性が付加され、さらに花の良さ・花色の多彩さも加わってきています。
植栽はシンプルな構成が似合います。バラだけを群植や列植し、必要があれば芝生や草花を手前に植えて、景観に「色の面」をつくります。
イングリッシュガーデン風のナチュラルな草花との混植に似合うやわらかさを持ったバラや、その植栽方法とは一線を画します。
また株全体に咲く花を見るので「一輪や数輪の花の良さを楽しむ」バラの見方とは、自ずから評価基準が違っていると言えるでしょう。
(次回に続く)。
著者紹介
#バラ #バラの育て方 #特集
玉置一裕
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。