スターチスの育て方|冬越しや夏越し、植えかえ方法も紹介

スターチスは花が長持ちし、ドライフラワーにしても色あせしにくいため、フラワーアレンジメントやインテリアの花材として人気です。
また、一般家庭の庭やベランダでも育てやすく、ガーデニング用の植物としても人気があります。
この記事では、スターチスの基本的な育て方や、冬越し・夏越しの注意点、植えかえの方法などを詳しく解説します。
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スターチス
学名 Limonium sinuatum 原産地 地中海沿岸から小アジアにかけて 分類 常緑多年草 耐寒性 やや弱い 耐暑性 弱い 栽培カレンダー
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月開花期種まき植えつけ・植えかえ肥料(地植え)肥料(鉢植え)
スターチスの基本情報

スターチスは、イソマツ科イソマツ属の常緑多年草です。
原産地は地中海沿岸から小アジアにかけての地域で、あまり耐暑性は高くありません。
そのため分類は多年草ですが、日本の夏の高温多湿に耐えられず、開花後に枯れることが多いため、一年草として栽培されます。
ただし、寒冷地などで気候条件が合えば、複数年にわたり花を咲かせることもあります。
開花時期は5月〜7月で、赤・ピンク・白・黄色・紫など、花の色のバリエーションが非常に豊富です。
花のように見える部分は「萼(がく)」であり、その中に小さな花が咲きます。一つひとつの花は小さいですが、密集して咲くため見応えがあります。
また、開花後も萼が色あせしにくいためドライフラワーとしても人気があります。草丈は6cm〜80cmほどで、花壇の中段〜後段の植栽にも向いています。
スターチスの育て方

スターチスは比較的育てやすく、切り花やドライフラワーとしても人気の植物です。
ただし、健康に育てるには、日当たりや水やりの管理、土づくりなど、いくつかの基本を押さえることが大切です。
ここでは、スターチスの栽培に必要な準備から、植えつけや手入れのコツ、季節ごとの管理方法まで解説します。
育てるときに必要なもの
スターチスを育てる際は、鉢植えか庭植えかに応じて、使用する道具が異なります。以下の道具や資材を事前に準備しましょう。
- スターチスの種または苗
- 水はけの良い用土
- 肥料(元肥・追肥用)
- 軍手
- じょうろ
- ハサミ
- 支柱(草丈が伸びたときの倒れ防止のため)
- 6〜7号鉢・鉢底ネット・軽石(鉢植えの場合)
- スコップ(庭植えの場合)
日当たり・置き場所

スターチスは日当たりと風通しのよい場所が適しています。日照が不足すると、花つきが悪くなったり、茎が間伸びしたりすることがあります。
また、高温多湿に弱いため、夏場は直射日光や雨を避けられる場所が理想的です。
地植え
地植えでは、水はけのよい日向を選びましょう。ただし、雨が多く当たる場所では株が湿気で傷みやすくなるため注意が必要です。
冬には霜柱で株が持ち上がることがあります。放置すると乾燥して枯れてしまうため、見つけたらすぐに植え直してください。
鉢植え
鉢植えの場合は、日当たりと風通しのよい場所に置き、夏の暑さや直射日光を避けるために半日陰へ移動をしてください。
冬は凍結しない軒下などに移動させると良いでしょう。
適切な温度・湿度
スターチスの耐寒温度は約4℃〜5℃で、この温度を下回ると地上部や根が凍害を受ける恐れがあります。
暖地であれば地植えでも越冬が可能ですが、寒冷地やが発生する地域では、株元にマルチングを施すなどの寒さ対策が必要です。
一方で、花芽をつけるためには15℃以下の環境におよそ30日間さらす必要があります。
冬に暖房の効いた室内で育てると花芽のつきにくくなる原因となるため注意が必要です。
また、スターチスは品種によって暑さへの耐性に差があるため、購入時に確認しておくとよいでしょう。
最適な用土
スターチスを元気に育てるには、水はけがよく栄養分が豊富で、中性~弱アルカリ性の土壌が適しています。
地植えの場合
植えつけの1〜2週間前に苦土石灰をまいて、土壌の酸性を中和しておきましょう。
さらに、腐葉土や堆肥などの有機質資材を土に混ぜ込んで、よく耕します。
時間をおいて土を熟成させることで、植えつけ後の根がしっかり張りやすくなります。
鉢植えの場合
市販の草花用培養土『ハイポネックス培養土鉢・プランター用』を使うと手軽です。
自分で配合する場合は、赤玉土(中粒)5〜6:腐葉土3:酸度調整済みピートモス1〜2の割合がおすすめです。
種まき
スターチスの発芽適温は15℃~20℃前後で、種まきの適期は地域によって異なります。
9月下旬〜10月頃にまいて、夏(5月~7月)に開花させるのが適しています。
スターチスの種は細かい毛に覆われているため、そのままの状態でまくと水を吸いにくく発芽率が低下します。
市販品の中にはあらかじめ処理されたものもありますが、処理されていない場合は種を砂と混ぜて揉み、毛を落としてからまくのがおすすめです。
- 育苗トレイに清潔で排水性の良い用土を入れ、種をばらまきます。
- 覆土はごく薄く(2mm程度)、種が少し見える程度にします。
- たっぷりと水を与え、新聞紙などで覆って乾燥を防ぎます。
- 発芽後は日当たりと風通しのよい場所で管理し、過湿にならないように水やりに注意します。
本葉が2枚〜3枚になったら、生育のよい株を選んで黒ポットに丁寧に鉢上げします。根を傷めないように、周りの土ごと移すのがポイントです。
鉢上げ後も日当たりのよい場所で育て、表土が乾いたら水やりを行いましょう。
育苗期間中は、1週間〜10日に1回を目安に液体肥料『ハイポネックス原液』を与えます。苗が充実したら、庭や鉢などに植えつけましょう。
植えつけ
スターチスの植えつけ適期は、3月〜4月または10月〜11月です。寒冷地で植えつけが遅れる場合は春(3〜4月)に行うと安心です。
また、苗を購入した場合は、入手後すぐに植えつけましょう。作業時は根を傷めないように、丁寧に扱うことが大切です。
庭植えの場合
ポットから苗を取り出し、根を崩さずに植えつけます。複数の苗を植えるときは、25cm〜30cm間隔をあけましょう。
植えつけ後はたっぷりと水を与え、草丈が高くなる品種には支柱を立てて、伸びてきたら倒れないように誘引します。
鉢植えの場合
6号〜7号鉢を使用し、鉢底ネットと軽石を入れて排水性を確保します。苗を仮置きして高さを調整し、鉢縁から2cm〜3cm下まで土を入れてウォータースペースを確保しましょう。
割りばしなどでつつきながら隙間なく土を詰め、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水やりを行います。
鉢植えでも、草丈が伸びる品種は支柱を立てておくと安心です。
水やりの方法
スターチスは過湿を嫌い、やや乾燥気味の環境を好む植物です。
水を与えすぎると茎が徒長したり、根腐れを起こしたりしてしまうため、表土が乾いたタイミングで与えるのが最適です。
水やりの際は、株全ではなく、株元の土に向けて行うようにしましょう。
茎葉がしおれて下がるような様子が見られた場合は、水を必要としているサインです。植物の様子をこまめに観察することが、枯らさず育てるポイントです。
地植え
根づいた後は、自然の雨だけで十分なことが多く、水やりの必要はほとんどありません。
ただし、乾燥が続くときには様子を見ながら適宜水を与えましょう。
鉢植え
栽培期間を通じて、土の表面がしっかり乾いてから鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと水を与えてください。
つぼみがつく3月〜4月頃は、水やりの頻度をやや控えめにし、乾燥気味に管理することで茎が丈夫に育ちます。
また、鉢植えは過湿になりやすいため、梅雨時など湿度が高い季節は水やりの頻度や、鉢の置き場所に注意が必要です。
冬場は土が乾きにくくなるため水やりは控えめにし、気温の上がる昼頃に行うと根を冷やさずに済みます。
肥料
スターチスの肥料は、植えつけ時に緩効性の『マグァンプK中粒』を元肥として土に混ぜ込んでおきます。
元肥がしっかり効いていれば、追肥は必要ない場合もあります。
肥料を与えすぎると、花つきが悪くなったり徒長して倒れやすくなったりするため、控えめな施肥が基本です。
地植え
地植えでは、追肥は基本的に不要です。肥料過多になると病害虫が発生しやすくなるため、与えすぎには注意しましょう。
定期的に株の状態を確認し、生育が悪い時に『ハイポネックス原液』を通常よりうすめて与えてください。
鉢植え
晩秋〜冬に植えつけた場合は、春の生育期に入る3月上旬頃に緩効性肥料『プランティア 花と野菜と果実の肥料』を与えるとよいでしょう。
春植えで元肥を与えてある場合は基本的に追加の肥料は不要です。
生育が悪い場合には速効性のある液体肥料『ハイポネックス原液』で様子を見ると安心です。
冬越し・夏越し

冬越し
スターチスは霜に弱く、寒さで地上部や根を傷めることがあります。
特に苗の状態で冬越しさせる場合は、寒さに当てないよう注意が必要です。
軒下に移動する、マルチングを行うなどして寒さ対策を行いましょう。
夏越し
スターチスは高温多湿に弱く、暖地では夏越しが難しいため、夏前にライフサイクルを終えて枯れてしまうこともあります。
直射日光や雨を避けられる、風通しのよい日陰に移動させることがポイントです。
品種によって耐暑性には差があるため、購入時に確認すると良いでしょう。
花がら摘み

咲き終わった花は、花茎の元から早めに切り取りましょう。株の周りを清潔に保つことで病害虫の発生を防ぎ、株への負担も軽減できます。
花がらをそのままにしておくと、株が種をつけようとして体力を消耗し、老化が進んで花数が減ってしまう原因になります。
こまめに摘み取ることで、長く花を楽しめます。
スターチスの増やし方

スターチスは苗の流通が少ないため、種から育てるのが一般的です。自家採種を行う場合は、花が咲き終わったあとに切り戻しや花がら摘みを行わず、種ができるのを待ちましょう。
採種の手順
- 花が咲き終わった後、茶色く乾燥するまで放置します。
- 株元から茎ごと切り取り、種を紙や受け皿の上で採取します。スターチスの種は2〜3mmと小さいため、落とさないように注意しましょう。
- 採取した種はしっかり乾燥させます。乾燥剤と一緒に通気性のある袋(茶封筒など)に入れて密封容器に保管してください。種まきのタイミングまで、冷暗所で保存しておきましょう。
種まきの方法については、上述した「種まきの方法」を参考にしてください。
スターチスの植えかえ方法

スターチスの植えかえは、10月〜11月の秋が適期です。多年草タイプの場合は、年に1回、一回り大きな鉢へ植えかえましょう。
その際は、根を傷つけないように丁寧に作業してください。
植えかえは、寒さが本格化する前に済ませることが重要です。しっかり根を張らせておくことで、霜柱による株の浮き上がりを防げます。
植えかえが遅れた場合や寒冷地では、春(3月〜4月頃)まで待ち、気温が安定してから植えかえると安心です。
スターチスの気をつけるべき害虫
スターチスはアブラムシに特に注意が必要です。
アブラムシは、9月〜翌年7月の生育期間中に発生しやすい害虫です。新芽や柔らかい部分に被害が発生します。
風通しが悪い場所や肥料が多めで新芽が旺盛な状態だとアブラムシが増えやすくなります。
発見したら少数であれば手でつまむ、水で洗い流すなどして対処しましょう。
また、風通しをよくするために株の間や葉が重ならないように間隔を保つことも予防になります。
スターチスを育てるときのポイント

スターチスを元気に育て、美しい花を長く楽しむためには、日々のちょっとした手入れが欠かせません。
栽培中に注意すべきポイントを押さえておけば、株が健やかに育ち、花もより美しく咲いてくれます。
ここでは、育てるうえで大切な管理のポイントを紹介します。
支柱を立てる
スターチスの中でも草丈が高くなる品種は、風や花の重みで倒れたり茎が折れたりしやすくなります。
生育が始まる4月〜6月ごろに支柱を立ててください。
ただし、自立している場合は支柱を立てる必要はありません。必要に応じて設置しましょう。
支柱は株から10cm〜15cm離して、20cm〜30cmの深さまで差し込みます。
茎の中心部と支柱を紐で「8の字」に結び、草丈の生長に合わせて結び直すことで、倒伏を防げます。
枯れた葉は取り除く
11月~翌年7月の間は、枯れた葉や花がらを定期的に取り除くことが大切です。
景観を損ねるだけでなく、病気予防のためにも重要な作業です。
枯れ葉を放置すると病原菌が繁殖し、株全体を弱らせる原因になるため、その都度取り除いて清潔な状態を保ちましょう。
花が満開になってから刈り取る
切り花として楽しむ場合は、花が満開になってから刈り取るのがポイントです。
早く切りすぎると水の吸い上げが悪くなり、花もちが短くなるため、六分咲きや八分咲きではなく、満開になってから切るようにしましょう。
一方で、ドライフラワーにする場合は、満開になる前に刈り取ると、花の色が鮮やかに残りやすくなります。
用途に合わせて最適なタイミングで収穫しましょう。
まとめ

スターチスを育てる際は、日当たりや水はけのよい環境を整え、過湿を避けることが大切です。
また、夏の高温多湿や冬の霜には注意し、適切な夏越し・冬越し対策を行うことで、健康な株を維持できます。
スターチスは育てやすく、庭や鉢植えでも楽しめる植物です。開花した花は、切り花やドライフラワーとしても活用できます。
ぜひガーデニングに取り入れて、美しい花を長く楽しんでみてください。
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