バラをもっと深く知る⑨ 梅雨時ならでは。遅咲きのバラの花 季節の風情の中で味わう

バラは開花時期がさまざま。GW前のモッコウバラから咲きはじめ、順に満開に。
そしていまも、これからも。とくに今年は、これから咲く花が貴重です。
咲き続くバラ
どんどん明るくなる日差しの中、黄色や白色のモッコウバラが家々のフェンスからこぼれ咲きます。次の主役はオールドローズ。続いてHTが大きく立派な花を咲かせます。そしてシュラブローズ各種が咲くころに至って、バラ満開の季節になります。壁面や地面に花で色の面をつくるランブラーローズ、ローズペイザージュは少し遅め。その満開時期はあっという間に過ぎます。
気候や、地域による違いはあり、また蕾を間引いての開花調整によっても違いますが、今年の6月になったいま咲き、これから咲きはじめるバラもあります。“遅咲き”と呼ばれる品種たちです。
最近発表の品種からピックアップしました。
しっとり・はなやか~最近発表のバラから
モン クゥール(ロサ オリエンティス)

やや遅咲き。コロンとした花が房咲きになって葉脈が目立つ濃緑の葉の上、しなやかに伸びる枝先に咲き、語りかけてくるよう。「私のハート」をくすぐります。
ホリデー アイランド ピオニー(蘭インタープランツ)

ふんわり。大きな丸い花が低めの株の上に房になって、うつむき加減に咲きます。

この時期ならではの花色が、中央に紅色のぼかし。白緑色の蕾が、花のかわいらしさを一層強調します。

紅色が色濃く鮮やかに咲くことも。花芯の黄色と一緒になってあでやか。シャクヤク(ピオニー)と妍を競うよう。
ティアーモ(独コルデス)

目立つ赤色。赤バラは、ヨーロッパの人たちにとって特別なもの。イタリア語で「アイ・ラブ・ユー」の意味の花は、花径8㎝と大輪種にしては少し小さめ。樹は小ぶりの木立性。病気に強い品種です。
プラリーヌ ルージュ(仏デルバール)

いかにもフランスのバラらしい色彩デザイン。浅緑色の硬質の葉にルージュピンクの花が映えます。樹はトゲの少ないシュラブ。お菓子の名前です(写真:花ごころ)。

中央で内側に折り曲げたような独特の花弁の重なり。花からは蜜のような甘さにアップル、ラズベリー…フルーティな香りが漂います。国営越後丘陵公園の第12回の香りのコンクールでS系金賞を受賞。
コフレ(河本バラ園ローズ ドゥ メルスリー)

中央藤色・周囲がグリーンの花色。トルコキキョウなどにはあっても、バラには珍しい花色。この時期の花の色は、ワクワクさせてくれます。中輪です。

雨に打たれながら、うつむき加減にそっと開きはじめます。

咲き進んで平たいロゼット咲きに。細かい花びらがびっしり。
アジサイやハーブの花咲くころ
数々のバラであふれる季節を経て咲くだけに、“遅咲き”品種は、つい見落とされがちですが、花数が減ったいま、逆にじっくり楽しめます。
晴れた日は、強かった日差しが少し落ち着く昼下がりから、夕暮れどきに。いまにも降り出しそうな曇天の下で。そしてそぼ降る雨に打たれながらも健気に咲く花々。見渡せばアジサイ、ハナショウブ、ホスタ、宿根草や花のハーブ類も咲き誇ります。早くも咲き始めた二番花も一緒に。“遅咲き”のバラから、“季節の情感”を感じてみたらいかがでしょう。
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玉置一裕
Profile
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。