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バラをもっと深く知る㊽公共の場を彩る②日本のバラ

バラをもっと深く知る㊽公共の場を彩る②日本のバラ

2026年4月にオープンしたバラの家の新店舗。正面の建物に向かって左右には‘風姿花伝 紅(ふうしかでん くれない)’が群植され、シンプルで美しい景観をかたちづくっている

1980年代「修景バラ」登場

日本での公共のスペース利用専用のバラは、1980年代に「修景バラ」の名称が与えられて登場した、‘春風(はるかぜ、1985年)’と‘花見川(はなみがわ、1986年)からです。

当時「ランドスケープローズ」という考え方が海外から具体的な品種とともに導入され、「パークローズ」「カラースケープローズ」などとも呼ばれました。

‘春風(はるかぜ)’(写真:港の見える丘公園で)‘花見川(はなみがわ)’いずれも京成バラ園芸作出。両品種とも株が大きなシュラブタイプで一季咲き。いまでもしばしば公園で大きく育った株を見かけます。

国際コンクールが開催、ガーデンができる

これら公共の場所に植えるバラの紹介は少しずつ行われています。2011年にハウステンボス(長崎県佐世保市)で「ローズペイザージュ国際バラコンクール」が開催されました。

2020年にはぎふワールド・ローズガーデン(岐阜県可児市)にローズペイザージュ5,500株が植わるウェルカムガーデンができ、四季を通じて来園者を楽しませています(写真)。

ノックアウト交配で ~雨ニモマケズシリーズ

その一つが岩手県・吉池貞藏さん作出の「雨ニモマケズ」シリーズです。

海外での無農薬・減農薬の動きにあわせてバラの「耐病性」向上に対する意識が高まる中、木立性のFLタイプの「耐病性が高いバラ」として登場しました。

シリーズ名は地元岩手県出身の宮沢賢治の詩にちなみます。いずれも花は中輪・木立性で短い枝に繰り返し咲きます。

交配親には‘ノック アウト’シリーズを利用しています。

コンクールで受賞

「雨ミモマケズ」シリーズは現在4品種が発表され、いずれも日本開催の国際コンクールで受賞しています。

最初は、‘雨ニモマケズ・リバーシブルピンク’。続いて同シリーズの‘クリームイエロー’と実がきれいな‘クラウン オブ ローズヒップ’‘ノースアイボリー’が発表されました。

雨ニモマケズ・リバーシブルピンク

2019年第17回ぎふ国際ローズコンテストで金賞ほか3賞を受賞。樹高1.3m以上の木立性。(写真:ガーデンナーセリーYOSHIIKE)

雨ニモマケズ・クリームイエロー

2019年度JRC F部門銅賞受賞。写真下はピンクが周囲からのった秋花。樹は樹高1.3mの木立性。

雨ニモマケズ・クラウンオブローズヒップ

2020年第18回「ぎふ国際ローズコンテスト」金賞受賞。樹高1.0mの木立性。秋には実も楽しめます(写真:ガーデンナーセリーYOSHIIKE)

雨ニモマケズ・ノースアイボリー

2023年発表。第20回「ぎふ国際ローズコンテスト」(銀賞)、第17回国営越後丘陵公園「国際香りのばら新品種コンクール」(F系金賞)、JRC2023年度(F銀賞)受賞と、国内開催の3つの国際コンクールすべてで受賞した、数少ないバラの一つです。

樹高は1.2mの木立性。アイボリー色の花は、春は抱え気味に咲き(上、写真:ガーデンナーセリーYOSHIIKE)、秋はロゼット咲き(下)に。

香りがあり、越後コンクール受賞時にその香りは「ティー~華やかなダージリンティーの香りにさわやかなレモンとバイオレットの花を合わせた香り」と評されています。

この品種、2025年世界バラ会議が開催された福山市のコンクールで福山市長賞を受賞。このほど‘雨ニモマケズ・ばらのまち福山’の愛称がつけられました。

開花段階の変化・季節の変化、やわらかさ ~風姿花伝シリーズ

2019年、「ロサ オリエンティス プログレッシオ」のブランドのもと、‘マイローズ’‘シャリマー’の2品種を発表以来、高い耐病性を前提に次々と新品種を発表してきたのが木村卓功さん。

2024年 に日本風ノックアウトを目指して育種され、「日本版木立性ローズペイザージュ」とも言えそうな「風姿花伝(ふうしかでん)」シリーズが2024年に発表されています。

深い赤色の半八重咲きの‘風姿花伝 紅(くれない)’同年秋には山吹色の一重咲き‘山吹(やまぶき)’です。2026年春にはコーラルピンクの波状弁咲き‘奏(かなで)’の3品種があります。下記の特長があります。

花の美しさ

  • 開花段階・季節における咲き方や花色が変化しそれぞれどの段階でもきれい
  • 花・咲き方にやわらかさがある。房で咲いたときも花と花の間に空気感がある

シリーズ名が、“時分の花”まことの花“など年齢に応じた”花“の表現を訴える世阿弥の能楽論書『風姿花伝』にちなんでいることからも、それはうかがえます。

機能性

  • 一斉に咲く「花付き」を向上
  • 花保ちがよく最後の花でも傷みが少ない
  • 花がらを摘まなくても自然に散る
  • 木立性で横に枝が広がりすぎない
  • 耐病性はいずれもバラの家の殺菌剤散布区分のタイプ0と高い
  • 花が終わるとすぐ次の花枝が上がり連続開花
  • シュートは出るが株から飛び出ない

株姿の美しさと植栽

  • 手間なく自然樹型で咲き続ける
  • 群植して「色の面」をつくってもきれい

風姿花伝 紅(ふうしかでん くれない)

深い赤色の丸弁半八重咲き中輪。房咲き。樹は高さ1.0×幅0.9m。

写真は上から赤く咲く春花(画像:バラの家)、中:紅色のトーンで咲いた6月の花、群植した風景

風姿花伝 山吹(ふうしかでん やまぶき)

吹色の一重咲き小中輪。房咲き。樹は高さ1.2×幅0.9m。樹姿が細立ちでやわらかさがある。

写真上:株全体に咲く春花、下:山吹色で咲き始めた初々しい咲き姿

風姿花伝 奏(ふうしかでん かなで) 

2026年春発表、もっとも注目された品種の一つ。コーラルピンクの波状弁咲き中輪で、花に圧倒的な魅力があります。樹は高さ幅とも1.0mの木立性。

写真:上・中 赤みの強い蕾から内側に反った花弁で開花、次第に開き中央にアプリコット、周囲にピンクを感じさせる、下:花色が次第に淡くなり最後には白く

日本人好みの「花のきれいさ」も加わって

水鏡に映す‘風姿花伝 紅’

‘ノック アウト’作出から26年、殿堂入りから8年経ったいま、公共の場でローメンテナンスで管理でき、多くの人を楽しませてくれるバラの選択肢が、かなり広がってきています。

雨ニモマケズ」「風姿花伝」両シリーズいずれも、最初から公共の場に植えるという「用途」を目的に育種されたものではありません。始まりは「誰でも育てやすいバラ」を育種すること。‘ノック アウト’を意識しながら耐病性を向上させ、連続開花する品種が発表されてきたものです。

さらに日本人が好む「花の美しさ」も加わっています。日本では四季の変化の中で養われた感性から、花が変化する咲き姿や、繊細さ、やわらかさが好まれます。

これら品種はもとより家庭にも向き、群植しての美しさがあって手間がかからないことから、公共の場への植栽も向きます。

ほかにも公共の場に向いた品種は多くあるでしょう。ロサオリだけを例にとると、花保ちがとても良く夏剪定が不要な‘マイローズ’、開花の連続性をテーマに選ばれた‘サマルカンド’などがあります。

いまのバラはとくに、実際の花を見て感じないと、その良さはわかりません。さらに機能面でも「耐病性」だけでなく、よく見ないと気付かない美しさ、愛好者や公園管理者の「育てやすさ」を実現するさまざまな性質が、花と樹には隠されています。

著者紹介

玉置一裕 

玉置一裕

バラの専門誌『New Roses』編集長。

『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。

#バラ #バラの育て方 #特集

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