バラをもっと深く知る㊺茎と房の空気感
横に張る細めの枝先に、青藤色の中輪芳香花を咲かせる‘ポルト ブルー’(ロサ リエンティス プログレッシオ)。
枝の描く線が、スカビオサの花・茎の線とからみ合って一枚の絵を描く
バラは花を観賞するものですから、まず花に目がいきます。そこに立派さや豪華さ、あるいはかわいらしさ・やわらかさを求めるかどうかは人によって違うでしょう。
ここで見落としてならないのは、葉が病気にかかりにくい、よく繰り返し咲くかどうか、あるいはトゲが少なくて仕立てやすいなどの機能面や栽培面は別にして、花をきれいに見せるのは葉や茎、そして房のかたちなどであること。
葉が大きければ花を豪華に、小さければ花をかわいらしく見せます。枝が太ければ立派、細ければたおやかに見えます。
それはヒトにおける背丈や体形・顔と、衣服の関係にも似ているでしょう。組み合わせのバランスがよければきれいに、あるいはまとまって見え、またそれが個性となります。
自然樹形でふわっと
剪定をはじめとする「仕立て」によって美しい樹姿を実現することも可能ですが、基本はまず品種本来の自然の樹形です。
株を覆うように咲く種類の代表例はローズペイザージュ(ランドスケープローズ)。
“色の面”をつくり、公共の場を美しく彩ります。そのように目的を特化した品種でなくても、株が小型で短枝に花を咲かせ、株全体を花で覆う品種も増えています。
一方株から自然な感じで枝を出して咲く品種は、株全体にびっちり咲くより、やわらかで自然。代表品種例は‘アイスバーグ’です。
半横張り性で、花一輪というよりふわっと咲く姿がきれい。この樹形を理想とする育種家も多います。
60年以上前に生まれたので、葉の丈夫さはそこそこですが、枝にはトゲが少なく細め。初冬までよく繰り返し咲きます。
風に揺れ咲いたときの花茎の出方・房の付き方に空気感があって、それが株姿全体のやわらかさにつながっています。
房の付き方に空気感がある‘アイスバーグ’(KIOI ROSE GARDEN)
枝の線がきれいなバラ
近年発表の、枝の線がきれいでやわらかさのある株姿の主な品種をあげてみましょう。
つる仕立ても可能な大きめシュラブ
大きめに育ち、主に段差剪定でつる仕立てもできる‘ナエマ’(上)は、長く伸びた枝先から桜ピンク色の花がふんわり咲く姿が、抱えて咲く中大輪花・漂うローズ+フルーツのフルーティフローラルの芳香が一体となって、やさしさ・甘さを表現します。
枝変わりの‘マハネ’(下、秋花)も同様です。構造物を覆うようにびっちり咲くより、この空気感が品種の個性となっています。デルバールは2026年日本デビュー20周年です。
‘フランシス バーネット’(ロサ オリエンティス プログレッシオ)は、花弁の重ねの多いほんのりピンクの中輪花が房咲きに。
ふわっと伸ばした枝先が花房の重さで下にたわんで咲く姿がきれい。花数は少なくなっても秋にも咲きます(下)。
ティーとグリーンの中香があり、とても花保ちが良い品種です。バラの家の殺菌剤散布区分でタイプ0と葉も丈夫です。
中型シュラブ(木立)
イングリッシュローズの‘デスデモーナ’は、「聖杯型」と表現されるカップ咲き中輪。ほんのりピンクから白色へ。
オールドローズ香とアーモンドの花の香りに、キュウリとレモンピールのほのかな香りが混じります。
トゲが少ない枝は最初斜上し、花房の重みでふんわりとした樹姿に。そのやわらかさが草花ともよく似合います。
‘ピクシー’(ロサ オリエンティス プログレッシオ)は、やや青みをおびたピンク色のロゼット咲き中輪。ダマスク系の強香。
葉の耐病性はタイプSと最強。それもさることながら、その美しさは、赤みをおびた花茎と花茎の間の空気感です。
花のピンク・茎の赤み・浅緑の葉で株姿全体で、上品な明るさを表現しています。花名のごとく、花と花、花茎と花茎の間に、妖精が戯れているようです。
小型シュラブ(木立)
2026年10周年のローズ ドゥ メルスリーで、2025年秋に発表されたばかりの‘リュネビル’。
株丈0.4~0.5mのコンパクトな株に、ラベンダーピンクのポンポン咲き小輪花を咲かせます。
ポリアンサタイプで、縦に長い房咲き。小さな花が茎と茎の間に咲くさまが、ビーズやスパンコールを重ねてつくるリュネビル刺繍を思わせることからの命名です(写真:河本バラ園)。
ナゼキレイ!?
育種家たちは、花や樹の機能はもとより、樹形や咲き方も細かくチェックして、発表を決めています。
例えば春の開花の最中に株から飛び出る枝が出て美観を損なうような品種は、最近ほとんどなくなったことにお気付きでしょうか。
これは肥料過多でも起こりますが、育種段階での選抜の結果です。
ここ数年さまざまなタイプのバラが増えています。まず花から。そして私たちは育てやすさも考えて選ぶようになりました。
さらに、その花がナゼキレイなのかも意識してみると、バラがもっともっとおもしろくなります。
著者紹介
#バラ #バラの育て方 #特集
玉置 一裕
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。