バラをもっと深く知る㉚赤や黄色の色さまざまに 初冬の花が宙を舞う

ある小春日和のお昼前。少しずつ肌寒くなってきて朝や帰宅時間はコートとマフラーが恋しい季節ですが、総じて穏やかな今年の冬。

あの暑かった夏が遠い過去のようです。10月に咲かなかった、あるいは咲いていても花が小さかったバラの花も、11月から漸く本来の花が咲くようになってきました。

その中で目立つ、ふわっと伸ばして枝先に花を咲かせるバラの花々。木々の紅葉を背景に、宙に浮かぶように咲きます。時折吹く風に枝を揺らし、まるでこちらを向いて何かを語りかけるよう。

この季節ならではのバラの姿です。

これらのバラ、枝が長く伸びつるバラ利用もできる中くらいの大きさや、最初からつるバラ仕立ての方が向いている大型のシュラブローズ。いわゆる「半つる性」の品種です。

周知の通り中型のシュラブローズは、春は冬剪定でリセットして咲かせるので木立に。夏以降伸びた枝を冬に構造物に誘引すれば春から「つるバラ」として楽しめます。

最近は「春は木立で、秋は構造物に沿わせてふわっと咲かせる」という楽しみ方も提案されるようになってきました。

秋花は春よりも花数は少なくなり、構造物にびっしり咲くわけではありませんが、それはそれで花の良さがよく分かり、季節の風情が感じられます。

かっては秋に枝が伸びて、枝先に蕾をつけない品種が多かったのですが、最近は秋にもよく咲く品種が増えてきました。

葉が丈夫になってきて夏に葉をキープし秋の開花を促進していることも、その理由の一つです。

木々の紅葉とまごうように咲く複色の花を中心にご紹介しましょう。

濃いオレンジで裏弁が黄色のバイカラー中輪の‘アルゴノーツ’（ロサ オリエンティス プログレッシオ）。

どこか“和”の雰囲気も感じるしっとりとした花色です。ティーとグリーンの中香。樹高・幅とも1.5m。葉は丈夫で耐病性はバラの家のタイプ0。つるバラ仕立てにするときは段差剪定で。

‘ペネロペイア’（ロサ オリエンティス）。ピンクとアプリコット、黄色のブレンドの八重宝珠弁咲き中輪。

樹は直立気味に枝を伸ばします。樹高表示1.6m。細枝の先にも花をつけ、春はたくさんの花が（上）、秋には枝を伸ばして（下2点）。（フェンス仕立てにしたバラの家実店舗で）

絞りが特徴のデルバールのペインターシリーズ。淡い黄色に明るいピンクの絞りのカップ咲き中大輪の‘エドゥアール マネ’（デルバール）です。

甘いフルーツの香り。春にも枝をふんわり斜めに伸ばして咲きます。

冬剪定で深めに切り戻せばシュラブとしてや、伸びた枝を伸ばしておいて誘引してつるバラとして。樹高1.8×幅1.2m。

‘フラマン ローズ’（デルバール）。オレンジピンクで赤みや黄色みが強くなってグラデ―ションで咲く大輪ロゼット咲き。ティー系の強香。樹高・幅とも1.8m。

枝が細く自然樹形では横に広がるので、最初からつるバラとして、春も構造物から枝をふわっとはみ出させてさせて咲かせる方がよい品種です。

バラは咲く季節ごとに色や咲く姿を変えます。株いっぱいに咲く春の花と株姿だけでなく、秋から初冬には独特のしっとりとした風情があります。

それは空気や光、背景となる周囲の景色によっても大きく変わります。春は日ごとに強くなる明るい日差しと芽吹いて間もない浅緑の木々をバックに。秋はやわらかな日差しの中、木々の紅葉を背景に。

まだ「暖かい」と言っても日を追って寒くなり、時折吹く木枯らしに木々もバラも少しずつ落葉し続けているこの季節。

せっかくの「四季咲き」のバラが増え、四季の移ろいこそが楽しい日本の季節の中で、ポイントをおさえた少しの管理で、初冬のひとときの賑わいを楽しんでみませんか？