バラを選ぶとき、みなさんはどういった点で選ぶでしょうか。「耐病性」?
これはバラの栽培経験がある人には意識されます。最近は「開花連続性」も重視され、よく繰り返して咲き、秋もよく咲く品種が選ばれる傾向にあります。
一般的にバラを選ぶ基準は①花色②香り③花形の順。New Rosesで何回調査しても同じですし、ほかでも同様と聞きます。
バラの花色は、「純粋の青色と黒色」以外はさまざまな花色があります。中でも最も多いのがピンク色の花。とくにフランスのバラにはさまざまなピンク色があり、独自の花色表現が多くあります。
フランス語で、ピンク色はずばり「ローズrose」。フランスでピンク色の表現が増えたのは、ファッション関係の一説にはロココ時代からといいます。
そのころの肖像画~香り高いピンクのカップ咲きのケンティフォリアローズを衣装に飾ったり手に持つポンパドゥール夫人やマリー・アントワネットはよく知られるところです。
(写真:ロサケンティフォリア)
バラではRose Pompadour‘ローズ ポンパドゥール’(デルバール)という品種があります。
これは花名案を出し採用された(花名の決定権は必ず育種会社にあります)立場として命名意図を説明しますと、「ポンパドゥールピンク」の意味です。
夫人そのものを表すのは「マダム・ドゥ・ポンパドゥール」という標記になります。
さて夫人はセーブル陶器を庇護しました。その陶器の青みが入ったピンク色を支援者にちなみ「ポンパドゥールピンク」、フランスでは「ローズポンパドゥール」と言うものです。
豪華で少し奔放に乱れる花弁のたっぷりとした重ねの中大輪花からは、ローズ+フルーツの甘い香り。咲き進んで青みを増すその花色と花のイメージが、ポンパドゥール夫人と重なり命名案となりました。
(写真:ローズポンパドゥール)
同じデルバールの品種で発表当初意味が分からなかったのがrose indienという花色表現。フランス語のローズアンディヤン…インディアンピンク!
その表現がされたのは‘サンテグジュペリ’。花は濃度が高めのピンク、青みが入りますが、しっとりとした濃い目のピンク色。
何色だろう? 調べに調べたところ「インド更紗のピンク」ということでした。
(写真:サンテグジュペリ)
もう一つ分からなかったのが、「rose neyron ローズネイロン」の花色表現がある‘イブ ピアッチェ’(メイアン)。
こちらも少し青みの入った中くらいのピンク色のシャクヤク咲き巨大輪。強い「バラの香り」のガーデンローズとして著名で、香りの切花としても現在日本で最もポピュラーな品種の一つです。
(写真:イブ ピアッチェ)
「ローズネイロン」を海外サイトで調べてみると「よくわからない。ブドウの品種名か?」とありますが、「‘ポール ネイロン’の花色」の意味かと思います。
間違いないでしょう。‘ポール ネイロン’は1869年作出のハイブリッド・パーペチュアル種で、完全四季咲きの大輪品種です。
(写真:ポール ネイロン)
同じような「青みがかったピンク色」の花色に見えても、微妙な違い。これが独特の花色表現になっています。
標準的な花色表現、それはそれでよいのですが、それぞれの文化を反映した花色表現があるからこそ、バラの楽しさ・おもしろさはふくらみます。
バラの花色は①咲く時期によって②開花の段階で③写真の撮り方によっても変わることはよくご存知の通り。
育種・提供会社のカタログ等の花色表現も提供会社の考え方により変更されることがあります。ぜひ実際の花を見て選ぶことをおすすめします。
公開:2017年2月3日
更新:2024年11月27日
玉置一裕
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。