藤(フジ)の育て方|栽培のポイントや注意点

薄紫色の房状の花が垂れ下がるように咲く藤(フジ)。やわらかな香りと美しい花姿で、日本では古くから愛されている植物です。
全国各地にフジの名所があるため、花の季節が来ると観賞に出かける方も多いのではないでしょうか。
フジを育てるには藤棚のように大がかりな設備が必要なイメージを持たれやすいですが、鉢植えなどでコンパクトに栽培することも可能です。ご家庭のお庭でも育てられるため、ぜひチャレンジしてみましょう。
今回は、フジの基礎知識や基本的な育て方、管理のポイントなどをご紹介します。
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☘75:藤の育て方|苗の植えつけや水やりと肥料の与え方、剪定作業もご紹介
藤(フジ)とは|花の特長

フジは、日本を原産とするマメ科の植物です。ツル性植物であるため、高い木などを支えに、ほふくするように生育するという特徴があります。
日本で古くから親しまれてきた花のひとつで、さまざまな歌や絵などの題材になってきた歴史があります。
フジは春から初夏へ移り変わる、4月から5月前後にかけて花を咲かせます。花の色は薄紫色や白、ピンクなどで、小さな花が集まって花を房状に咲くのが特徴です。
ちなみに、「藤色」はフジの薄紫の花の色からとられた色とされています。
まるでシャンデリアのように咲き乱れる姿は非常に美しく壮観です。花の香りの良さでも知られており、甘さの中に爽やかさのある上品な芳香が漂います。花が咲き終わった後にはインゲン豆に似た細長い実がつきます。
フジはつるを伸ばして生長します。長いものだと10m以上になることもあり、藤棚をつくれるほど大きく育ちます。
ただ、お手入れ次第で小さく育てることも可能です。ベランダしか場所がないという方も、フジの栽培に挑戦できるでしょう。
藤(フジ)とは|主な種類

一般的に「藤」と呼ばれるのはマメ科フジ属の仲間です。フジ属は、ノダフジとヤマフジに大別されます。
狭義の藤とされているのはノダフジの仲間です。フジを栽培するときは、ノダフジ系かヤマフジ系の品種から探すことになるでしょう。
ノダフジ系の特徴や種類
ノダフジ系はつるが右巻き(上から見たときに時計回り)で、比較的花房が長いことが特徴です。花房の長さは20cm~30cm程度のものから、最大で100cmになるものまで見られます。
主な種類はシロバナフジやアケボノフジなどです。シロバナフジは純白の花をつけます。花房は20cm~30cm程度です。
アケボノフジは白花の品種ですが蕾のときは淡いピンク色をしており、開花すると花びらの先端がうっすら桃色に染まります。
シロバナフジと同じく、花房は20cm~30cmになります。また、ナガフジの系統は花房が50cm~100cmになることもあり、とてもゴージャスな見た目です。
ヤマフジ系の特徴や種類
ヤマフジ系はつるが左巻き(上から見たときに反時計回り)で花房が10cm~20cm程度と短めです。
房の形状から「花美短(カピタン)」や「達磨藤(ダルマフジ)」という名前でも呼ばれます。
ヤマフジ系の園芸品種にはムラサキカピタンやシロカピタン、アカカピタンなどの種類があります。花房の丈が短いため、全体的に可愛らしい印象です。
ムラサキカピタンは紫色の花、シロカピタンは白色の花、アカカピタンはピンク色の花をつけます。
藤(フジ)の育て方|基本の栽培方法

ここからは、フジの基本的な育て方をご紹介します。フジが元気に育ちやすい環境を用意して、性質に合った方法でお手入れを行いましょう。
藤(フジ)の好む栽培環境
フジは日当たりの良い場所で栽培することが大切です。日当たりが十分でないと、花が咲きづらくなってしまいます。
地植えする場合は大きく育ちやすいため、ある程度のスペースを確保しましょう。鉢植えの場合も、上に伸びるための余裕が必要です。
土づくり
フジの用土は水はけが良く、保水性の高いものが適しています。
鉢植えする場合は、『ハイポネックス培養土 鉢・プランター用』がおすすめです。肥料が含まれているため、植えつけの際に元肥を追加せずそのまま使えます。
地植えする場合は、庭土を掘り上げて堆肥や培養土を混ぜ込みましょう。
植えつけ
フジの種は園芸店などではあまり出回っていないため、苗から育てるのが一般的です。
なお、花を咲かせた後にできる種を採取して種まきすることも可能ですが、花が咲くまでには何年もかかります。
苗の植えつけ適期は、11月から3月前後です。購入した苗は鉢植えでも庭植えでも育てられます。
鉢植えにする場合は、根鉢よりも一回り~二回り大きい鉢を選びましょう。庭植えにする場合は、日当たりの良い場所に植えつけます。
植えつけの際には元肥としてリンサン成分を多く含み肥料効果が約2年間持続する『マグァンプK大粒』を土に混ぜ込みます。
なお、フジの根はとても細く繊細なので、植えつけ時に根を傷つけないように注意してください。
水やり
フジは水を好む植物です。鉢植え・庭植えともに水切れには注意しましょう。乾燥すると花つきが悪くなります。
鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出るくらいたっぷり与えます。
特に乾燥する夏場は朝と夕方の2回程度水やりが必要になることがあります。土の状態をこまめに確認してあげましょう。
地植えのフジについては、基本的には水やりは不要です。ただし、乾燥しやすい夏の時期や、雨が降らない日が続いたときなどは水やりが必要になることがあります。
夏は暑さの影響を避けるため、朝または夕方以降に水を与えましょう。
肥料
植えつけの際には元肥として緩効性肥料『マグァンプK大粒』を施します。
2月~3月頃には寒肥、開花後にはお礼肥として堆肥と肥料成分がひとつになった『土を豊かにする肥料』を与えましょう。
フジの葉は、12月から2月前後になると枯れ落ちます。春前の1月中旬~2月に、リンサンやカリを多く含む肥料を与えると花つきがよくなります。
おすすめはカリ成分を多く含む液体肥料『微粉ハイポネックス』です。
藤(フジ)の育て方|管理のポイント

フジを長く育てていくためには、適した方法でお世話をすることが大切です。
ここでは、フジを栽培するときに気をつけておきたい管理方法をご紹介します。
夏、冬の剪定
フジの樹形を整え、生育を良くするために必要なのが毎年の剪定です。基本的に、夏と冬に剪定作業を行います。
花が咲き終わった5月~6月は、花がら摘みを行いましょう。花がらを放置していると実ができ、種をつくってしまうため、株が消耗してしまいます。
来年の花つきを良くするためにも葉は残したまま、花房の付け根を手でカットして摘み取りましょう。
7月~9月にも剪定を行います。花後に伸びすぎた部分を切り落として整えましょう。剪定してつるの長さを整えておくことで混雑を防ぎ、風通しや日当たりを良くできます。
ただし、つるの根元はある程度残しておきましょう。残ったつるから伸びる葉の付け根部分に花芽がつきやすいためです。
フジの花芽はその年に伸びたつるの基部にできます。8月頃になるとはっきりと確認できるようになるでしょう。
11月~3月、落葉期に入ったら冬の剪定を行います。混雑した部分や枯れた枝、真上や伸びている枝、地面から伸びるひこばえなど、不要なところを切り落として樹形を整えましょう。
花芽を落としてしまわないよう、しっかりと確認しながら切ることが重要です。
この時期、フジの花芽は葉芽よりも丸みを帯びた形状をしており、見分けがつきやすくなります。
花芽と葉芽を間違わないように気をつけながら剪定しましょう。
誘引
フジをきれいに仕立てるためには、つるを誘引することが大切です。一つひとつの枝にしっかりと日光が当たるように意識しながら整えていきましょう。
誘引におすすめの時期は落葉している冬の時期です。剪定作業のついでに行うと良いでしょう。理想の形をイメージしながらつるを誘引し、紐で束ねておきます。
病害虫対策
フジがかかりやすい病気のひとつが「こぶ病」です。こぶ病は、小突起状のこぶが枝などに発生し、やがて大きくなる病気です。
防除のためには、株の風通しを良くすることがポイントとなります。枝が込み合ってきたら剪定を行いましょう。
また、初期症状である小突起状のこぶを見つけたら、罹患している部分をカッターで削り取ってください。
併せて、適した薬剤を散布し、被害の拡大を予防しましょう。
また、フジはフジノキクイムシやマメコガネ・マメドグガといった害虫の被害に遭うことがあります。これらの防除にも専用の薬剤を散布してください。
藤(フジ)の育て方|花が咲かない原因や対策方法

フジは丈夫な性質があり、基本的に放っておいても毎年花が咲くといわれています。
ただし、フジを栽培していたもののなぜか開花せず、困ってしまった経験を持つ方も少なくありません。
ここでは、フジの花が咲かなくなる主な理由や、対策のポイントを解説します。
剪定を失敗した
フジの花が咲かなくなる理由で多く見られるのが、剪定の失敗です。
剪定のタイミングや方法を誤ると、翌年に咲くはずの花芽ごと落としてしまうことがあります。
とくに、花芽がつくられる夏の時期には注意が必要です。
また、剪定の際に強く切りすぎてしまった場合も、株の勢いが弱まり、花つきが悪くなってしまうことがあります。
冬には強剪定を行えますが、切りすぎないように気をつけましょう。
樹齢が若すぎた
花木が花をつけるためには、木自体が十分に育つ必要があります。フジの樹齢が若すぎた場合も、花を咲かせないケースがある点に留意しましょう。
ただし、「一才藤」のように木が若いうちから開花しやすい種類もあります。
はやく花を楽しみたい場合、そういった品種を探してみるのも選択肢のひとつです。
水、肥料、日光が不足していた
フジがたくさんの花を咲かせるためには、株が充実していることが求められます。
水や肥料、日光が不足していると花つきが悪くなってしまう可能性があるため、管理方法を見直してみましょう。
フジは水切れすると生育が悪くなり、花も咲きにくくなるため注意が必要です。土が極端に乾燥しないよう、水をあげるようにしましょう。
とくに鉢植えの土は地植えよりも乾きやすいため、土の乾き具合のチェックが不可欠です。
肥料は過剰に与えても良くありませんが、不足するのも問題です。とくに、花後のお礼肥と冬の寒肥は忘れずに施してあげましょう。
肥料をたくさんあげすぎている場合は控えてみることをお勧めします。
フジを開花させるにあたっては、日当たりの良さも大事です。植えつけの際は、周囲の建物や木などの陰になっていないか確認しましょう。
枝や葉にまんべんなく日光が当たるよう、剪定を行うことも大切です。
おわりに

優美で上品な雰囲気を演出できるフジの花は、春から初夏にかけての穏やかな時期に咲き誇ります。
ご自宅に植えることで、美しい花の姿をゆっくりと味わうことができるでしょう。フジにはさまざまな品種があるため、お好みに応じて選ぶことがおすすめです。
日当たりの良い場所を選んで植えつけたら、水や肥料を与えながら育てていきましょう。定期的な剪定や誘引などのお手入れも不可欠です。
フジは適切なお世話を続けていけば、長く育てることができます。今回ご紹介したポイントも参考に、栽培を続けていきましょう。
公開:2019年2月15日
更新:2021年6月30日
更新:2025年4月21日
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