ヤブコウジ(十両)の育て方|剪定方法や植えかえのポイントも

ヤブコウジは、艶のある葉と赤い実が美しい、古くから日本で縁起物として親しまれてきた常緑低木です。
草丈が低く、日陰でもよく育つため、和風庭園の下草やグランドカバーとして重宝されています。生長がゆっくりで手入れも簡単なため、初心者にも育てやすい植物です。
この記事では、ヤブコウジの特徴や栽培に適した環境から、育てるポイント、盆栽の仕立て方まで詳しく解説します。
長く美しく育てるためのポイントを知って、ヤブコウジとの暮らしを楽しみましょう。
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ヤブコウジ
学名 Ardisia japonica 別名 藪柑子、十両 原産地 日本、朝鮮半島、中国、台湾 分類 常緑低木 耐寒性 普通 耐暑性 強い 栽培カレンダー
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月開花期実の鑑賞期葉の鑑賞期植えつけ・植えかえ肥料剪定
ヤブコウジの基本情報

ヤブコウジ(藪柑子)は、サクラソウ科ヤブコウジ属に属する常緑低木で、艶やかな緑の葉と冬に色づく赤い実が特徴です。
和名は「藪柑子」、別名として「十両」とも呼ばれています。
日本や東アジアに広く分布しており、日本では古くから親しまれてきました。お正月の縁起物として万両や千両とともに飾られることもあります。
樹高は15㎝〜20cmほどとコンパクトで、庭木としてはもちろん、盆栽やグランドカバーとしても人気があります。
日陰や寒さに強いため、和風庭園の下草など日陰の空間を彩る植物としても重宝されており、洋風の庭では斑入り品種がアクセントとして使われることもあります。
開花時期は7月〜8月で、下向きに白い小さな花を咲かせます。樹高が低いため見逃してしまうことも多いですが、開花後には結実し、秋から冬にかけて赤い実をつけます。
多くの植物が休眠する冬でも、ヤブコウジは赤い実を保ち続けるため、彩りの少ない冬の庭を華やかにしてくれるでしょう。
ヤブコウジは管理も比較的簡単なことから、園芸初心者にも育てやすい植物として人気があります。
一年を通して葉や実の変化を観賞できるため、季節の移ろいを感じながら長く楽しめるのも魅力の一つです。
ヤブコウジの育て方

ヤブコウジを元気に育てるための置き場所や水やり、剪定、肥料の与え方など、基本の育て方をわかりやすく紹介します。
初心者の方でも安心して育てられるように、季節ごとの管理ポイントもあわせて解説しています。
日当たり・置き場所
ヤブコウジは直射日光を嫌い、風通しのよい半日陰〜日陰を好む植物です。
日本の森林に自生しており、弱い光でも育つため、室内でも明るい窓際で、直射日光を避ければ栽培可能です。
特に、夏場の強い日差しは葉焼けの原因になるため、しっかりと日陰に置くことが大切です。
ただし、実つきをよくするためには適度な日光も必要なため、季節に応じた管理が求められます。
鉢植えの場合は、季節ごとに置き場所を調整しましょう。
- 5月〜9月(夏季):直射日光を避け、日陰に置く
- 4月・10月(春・秋):半日陰が適切
- 11月〜3月(冬季):日なたに移動し、霜や凍結を避ける
また、朝日が1〜2時間当たるような場所が夏以外は理想的です。冬は鉢が凍らないように、屋外での管理には注意しましょう。
適切な温度・湿度
ヤブコウジは15℃~35℃くらいを生育適温としますが、-5°Cの寒さから40°Cくらいの暑さまで耐えることができる、温度変化に強い植物です。
幅広い環境で育てやすいのが特長ですが、極端な環境では適切な対策が必要です。
夏は直射日光と高温により、葉焼けや乾燥を起こしやすいため注意しましょう。日陰に移すか、すだれや遮光ネットで日差しを和らげるなどの工夫をしてください。
冬は比較的寒さに強く、基本的には屋外でも越冬が可能です。ただし、寒風や霜、用土の凍結は避けたほうがよいでしょう。
最適な用土

ヤブコウジの植えつけは、新芽が伸びる前の春(2月〜4月)または涼しくなる秋(9月〜11月)が適期です。
新芽が動いている時期や真冬を避けて管理に注意すれば、適期以外でも植えつけが可能です。
植える際は、根がしっかり広がるように、植え穴を根鉢の2倍ほどの大きさに掘ることが大切です。植えつけ後はたっぷりと水を与えて、根つきを促しましょう。
また、苗を購入する際は葉の色つやがよく、健康な株を選んでください。
斑入りなどの品種もあるため、好みに合わせて楽しみながら選びましょう。
水やりの方法
ヤブコウジは、やや湿った環境を好む一方で、極端な過湿や乾燥に弱い性質をもっています。
水やりの頻度や方法は、植え方や季節によって調整することが大切です。
夏の場合
鉢植えでは、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えるのが基本です。極端に乾かさなければ問題ありませんが、水切れには注意しましょう。
夏は乾燥しやすく、日差しも強くなるため、朝と夕の1日2回程度の水やりが理想的です。また水やりに加えて、霧吹きなどで葉に水分を補う葉水も効果的です。
葉の乾燥防止になるだけでなく、植物全体の健康維持にもつながります。
冬の場合
冬も実をつけるためにある程度の湿度が必要ですが、気温が低くなると蒸発が少なくなるため、2〜3日に1回を目安に控えめな水やりを行います。
土の表面が乾いたときに水を与えるようにしましょう。
地植えの場合
地植えの場合は、植えつけから根が定着するまでの間のみ水やりを行います。
その後は、基本的に自然の降雨だけで育てることが可能です。
ただし、真夏などで雨が少なく日照りが続く場合は、朝や夕方の涼しい時間帯に水やりを行い、乾燥を防ぐようにしましょう。
肥料の与え方

ヤブコウジは肥料がなくても育つ丈夫な植物ですが、実つきを良くしたい場合や、生育を促したい場合は適度な施肥が効果的です。
肥料は、4月〜11月の生育期に2ヵ月に1回程度の頻度で与えます。
緩効性肥料『プランティア 花と野菜と果実の肥料』や固形の油かすを株元に軽くすき込み、たっぷりと水を与えてください。
施肥量は少なめで十分で、一度に多く与える必要はありません。
鉢植えの場合は、液体肥料『ハイポネックス原液』を時々与えるのも効果的です。
剪定・切り戻し
ヤブコウジは生長が緩やかなため、定期的な剪定は必要ありません。
ただし、数年育てていると枝が間延びしたり下葉が落ちたりして、樹形が乱れることがあります。樹形を整えたい場合は、株元から5cmほどの高さで軽く刈り込みましょう。
3月~4月が適期ですが、遅くとも6月までに剪定すれば、秋までには新しい葉がしっかり茂って元の姿に戻ります。
また、古い枝や徒長枝、不要な枝があれば、根元から切り落としてかまいません。斑入り品種で、斑のない枝が出てきた場合も、剪定して取り除くと元の状態を保てます。
刈り込みを行う際は、肥料を適切に与えていると健全な芽吹きを促しやすくなります。
肥料が不足している場合は無理に強く剪定せずに、春先に勢いのある枝を軽く整える程度にとどめると安心です。
ヤブコウジの増やし方

ヤブコウジは、挿し木や株分けの方法で手軽に増やせる植物です。挿し木と株分けのそれぞれの方法を詳しく紹介します。
挿し木
ヤブコウジの挿し木は、3月〜6月が適期です。
挿し木の方法は、剪定した若い枝を5㎝〜10cm程度の長さに切り取り、赤玉土(小粒)や鹿沼土、挿し木用培養土などの清潔な用土に挿します。
その際、風の当たらない日陰に置き、土が乾燥しないように水やりをします。根がしっかりと伸びたら、鉢や庭に植えかえて育てましょう。
斑入り品種は実がつきにくいため、挿し木での増やし方が適しています。
株分け
ヤブコウジの株分けは、4月または8月〜9月が適期です。
ヤブコウジは地下茎を伸ばして増える性質があります。株分けはこの地下茎を活用して行いましょう。
植えかえのタイミングなどに株を掘り上げ、根についた土をやさしくほぐして落とし、ナイフや手で適切なサイズに切り分けます。
その際、各株に茎や葉がしっかりと付くように分けると、植えつけ後の生育が安定します。
分けた株は、それぞれ鉢や庭に植えつけて、通常どおりに管理しましょう。
ヤブコウジの植えかえ方法

ヤブコウジの植えかえは、新芽が動き出す前の2月〜4月、または気温が落ち着く9月〜11月が適期です。
頻度は2年〜3年に一度が目安で、根が鉢いっぱいになったときや生長が鈍ったときに行いましょう。
大株に育てたい場合は、ひと回り大きな鉢に、新しい用土を使って植えかえます。
一方、コンパクトに育てたい場合は、古くなった葉の出ていない株を株元から切り落とし、芽が動いている元気な部分だけを残して、同じ鉢に新しい土で植えかえます。
ヤブコウジは地下茎で広がる性質があるため、植えかえ時には根鉢をよくくずし、地下茎を整理して植えつけるのがポイントです。
ヤブコウジの気をつけるべき害虫
ヤブコウジは病害虫に比較的強い植物です。まれにアブラムシやハマキムシ、カイガラムシが発生することがあります。
見つけたら、市販の薬剤を使って早めに駆除しましょう。特にカイガラムシは薬剤が効きにくいため、見つけたら歯ブラシなどでこすり落とすのが効果的です。
風通しのよい場所で育てることで、害虫の発生を抑えられます。葉や茎を定期的に観察し、早期発見・早期対処を心がけましょう。
ヤブコウジの育て方に関するよくある質問

ヤブコウジは、日本の気候に適応した育てやすい植物です。
しかし育てるうえで「実がつかない…」「大きくなりすぎない?」といった悩みや疑問を持つ方もいるかもしれません。
ここでは、ヤブコウジの育て方に関する質問とその答えを紹介します。
実がつかないのは何故?
斑入りのヤブコウジは、そもそも実がつきにくいという特長があります。
また、斑入りでない品種でも、長雨の時期に受粉がうまくいかないと実がつかないことがあります。
7月〜8月にかけて小さな白い花を咲かせるため、見逃さないようにして長雨を避けるなど環境に注意しましょう。
鉢植えの場合は、花が咲いたら移動させるのがおすすめです。地植えの場合は、シートなどで雨除けをして受粉環境を整えるのもひとつの方法です。
たとえ実がつかなくても、ヤブコウジは地下茎で増えるので安心です。春に剪定をして花を咲かせ、実がつくのをゆっくり待ちましょう。
長く楽しめる植物のため、あきらめずに育ててください。
暑さや寒さに強い?
ヤブコウジは、日本に自生する常緑低木で、-5℃の寒さから40℃程度の暑さまで耐えられる、温度変化に強い植物です。
ただし、寒冷地では土が凍結するほどの厳しい寒さになると、生育に影響が出るため防寒対策が必要です。
地植えの場合は防寒、鉢植えの場合は凍らない場所に移動させましょう。
また、直射日光に弱く、強い日差しに長時間さらされると葉焼けを起こすことがあります。夏場は、半日陰の場所で管理しましょう。
室内で育てる場合は、明るい窓際に置き、時々やさしい日差しに当てると健康に育ちます。
生長した場合の高さはどのくらい?
ヤブコウジは生長しても高さが10㎝〜20cm程度にとどまる、非常にコンパクトな常緑低木です。
幹の直径も1cmほどと細く、草のように見えることもありますが、実は何年もかけて生長を続ける立派な樹木です。
とはいえ地上部の生長は非常に緩やかで、1年ではほとんど変化を感じません。そのため、庭で育てても過度に茂って手に負えなくなる心配は少なく、管理がしやすい植物です。
背丈が低いかわりに、ヤブコウジは地下茎を伸ばして横に広がりながら増えていくのが特長です。
枝分かれのない地上茎をあちらこちらと出し、群生してグランドカバーとして活用されることもあります。増えすぎて困ることが少ない点は、グランドカバーとしての長所といえるでしょう。
また、生育環境に応じて地下茎が伸びる方向を変える柔軟さもあるため、長く楽しめる丈夫な植物です。
まとめ

ヤブコウジは、寒さや暑さに強く、日陰でも育つ常緑低木です。病害虫に強く、生長がゆるやかで手間も少ないため、初心者の方にもおすすめです。
赤い実や艶のある葉を長く楽しむためには、日当たりや水やり、剪定のタイミングなど、基本的な管理ポイントをおさえておくことが大切です。
今回紹介したポイントを参考に、ぜひご自宅でもヤブコウジの栽培を楽しんでください。
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