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バラをもっと深く知る㉞ 昭和レトロのバラ① 目に新鮮なバイカラー

バラをもっと深く知る㉞ 昭和レトロのバラ① 目に新鮮なバイカラー

純粋の青色と黒色以外、バラには実にさまざまな花色があります。

最近の発表品種で人気を集めるのが、オレンジ色や赤色、黄色のはっきりとした鮮やかな花色のバラで、2024年新発表品種でも多くあります。

目立つのは昭和の時代に流行った花弁の表側と裏側の色が違う「バイカラー」の品種。

丈夫になって再デビューしてきました。

(写真:仏メイアン作出、2024年日本発表の‘エンチャンティッド ピース。堂々とした大きな花で銘花‘ピース’に印象が似るが、表弁も裏弁も色はより濃く、香りがあり、樹は丈夫に)。

はっきりとした花色で複色のHT~昭和

赤系、ピンク色系、黄色・オレンジ色系、白色系、複色、そして青色や茶色などアンユージアルカラー(珍奇な色)。

かつてのバラの花色分類です。とくにHT全盛だった昭和の時代、はっきりとした花色の大きな花が好まれていました。

その一つ「複色」は2色以上が一つの花の中に混じるもので、「絞り」や、次第に紅色に染まる「色のり」、さまざまな色が混じり合う花色などの表現に使います。

中でも表側と裏側の色が違う2色で、色表現ではとくに「バイカラーbi-colour,bicolor」と呼ばれています。

「バイbi」はラテン語の数詞の「2」から。例えば表側が鮮やかな赤色や紅色で、裏側が黄色(白色)で、単色よりもさらに華麗に見えます。

HTは花の中心が盛り上がって、花弁の裏と表を交互に見せる「高芯咲き」が日本ではとくに主流。

高芯咲きの花は斜俯瞰45度で見ると、弁先と少しふっくらとして中央に向かって巻き上がる姿が同時に目に入ります。

バイカラーだと外側にはねた花弁の中央から違う色が交互に見え、さらに鮮やかな印象に。

代表的な品種には‘コロラマ’(赤色と黄色のHT、1967年仏メイアン)、‘ラブ’(赤色と白色のHT、1980年米ウォリナー)など。

日本のバラとしては‘希望(きぼう)’(赤色と黄色のHT、1986年京成バラ園芸)(下の写真)などがあります。

なお、黄色の色素は褪めやすいので、赤と黄の品種は、咲き進むと表弁は赤色から紅色に、裏弁は黄色から白くなる場合が多くあります。

淡い色の花が主流の中で~平成の時代

さて昭和の時代は1989年までで、平成の時代へと。21世紀となって、アプリコット、ソフトピンクなど淡い花色のシュラブローズが主流に。

その中で新たに紹介された、絞りやミックスカラーなどフランスのバラの大胆な色遣いが人目を引きました。

バイカラーのバラでは、‘ソレイユ ロマンティカ’(メイアン)があります。

オレンジピンクと黄色のカップ咲き。つるバラ利用可能なシュラブ(2013年日本発表)

ドミニク・マサド育成品種でもバイカラー品種が目立ちます。同じようなバイカラーでも表弁が紫みを帯びると落ち着いた雰囲気に。

また花を主に一輪で観賞するHTと違い、房に咲く数輪で見て、さらに全体の株姿を草花と混植した庭の中で見ると、かなり印象が違います。(写真はコピスガーデンで)。

ルビーレッドと黄色~白の大輪シュラブ‘ドクトール マサド’(2016年日本発表)

赤みの強いパープルと白の中輪シュラブ‘ベル デ セゴサ’(2018年日本発表)

赤紫と白の小中輪シュラブ‘ソムリエール’(2020年・令和2年日本発表)

人気を集める複色花

さて令和(2019年~)の時代。最近は耐病性の高さを中心とする樹の機能も重視され、花色は徐々に黄色やオレンジ色の花も人気を集めるように。

耐病性の高さの上に花色のバリエーションを広げる木村卓功さんの近年の育種テーマの一つが「複色の復権を目指す」こと。

その第一号が2021年に発表された複色花‘シャルール’(ロサ オリエンティス プログレッシオ)です。

新たな愛好者に受け入れられ、従来からの愛好者には目に新鮮に感じられたからでしょう。

その後バイカラーのシュラブ‘アルゴノーツ’や‘ライオンハート’が発表され、いずれも人気を集めています。

表弁が濃いオレンジ、裏弁が黄色の‘アルゴノーツ’(2022年)

‘ライオンハート’。コーラルピンクで裏弁がオフホワイト。複色のボタンアイの中心にグリーンアイがみられることも(2023年)

蘇る花色

2024年春に新発表された品種には、昭和レトロスタイルの咲き方では剣弁高芯咲きのHTタイプもあり、花色では鮮やかではっきりとした花色の品種も。

バイカラーでは、仏メイアンのHT‘エンチャンティッド ピース’と、ロサ オリエンティス プログレッシオの‘ピュール’があります。

‘ピュール’。鮮赤色とクリーム色のバイカラー高芯咲き中輪・房咲き。‘シャルール’の姉妹品種。樹は木立性

丈夫になって再デビュー

花色はバラの最初の選択理由。鮮やかな花色が昭和の時代から時を経て、令和の時代に丈夫になって再デビュー。

私たちの目に新しく映ります。樹は丈夫になってカジュアルに気軽に楽しめるよういなってきました。

同じく過去よりはるかに丈夫になったくすみカラーのバラなどとともに、花色からの選択肢が、ますます広がってきているといえるでしょう。

著者紹介

玉置 一裕

バラの専門誌『New Roses』編集長。

『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。

また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。

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