【家庭菜園】 【サツマイモの育て方】苗選びのコツやお手入れのポイント、収穫・貯蔵方法は?
秋から冬にかけて収穫のピークを迎えるさつまいも。焼き芋やふかし芋などで素材の味を楽しむのはもちろん、料理やスイーツなどでアレンジすることもできます。サツマイモがお好きな方は、ぜひ気に入った品種を育てて、お好みの方法で味わいましょう。
今回は、さつまいもの基礎知識や栽培方法、起こりがちなトラブルの対処方法などをご紹介します。家庭菜園でさつまいもを育ててみたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
☘201:【Q&A】サツマイモの育て方|甘く、大きなサツマイモを収穫する方法は?水やりや肥料などの管理方法もご紹介
サツマイモの栄養や種類、利用方法
サツマイモはたっぷりと栄養を含んでおり、さまざまな料理やお菓子などに活用されています。まずは、サツマイモの栄養や品種の違い、主な利用方法などについてチェックしていきましょう。
栄養の豊富さ
サツマイモはビタミンCや食物繊維、カリウム、ビタミンB群などが豊富です。加えて、整腸作用があるとされているヤラピンという成分も多く含まれています。こういった栄養を無駄なくとるためには、なるべく皮も一緒に食べることがおすすめです。
品種による違い
サツマイモには多くの品種があり、それぞれ食感や色などが異なります。たとえば、代表的な品種である「紅はるか」や「紅あずま」は黄色い果肉ですが、紅はるかのほうはしっとりとした食感で、紅あずまはホクホクとしています。
「パープルスイートロード」や「アヤムラサキ」などは果肉が紫色です。パープルスイートロードは紫芋のなかでも甘く、ホクホクした食感を楽しめます。対して、アヤムラサキは鮮やかな色を生かして加工されるのが一般的で、甘みは強くありません。サツマイモを育てる際は、品種ごとの違いにも着目してみましょう。
さまざまな活用方法
サツマイモは、さまざまな方法で活用されています。料理やスイーツの材料として活躍するのはもちろん、でんぷんをとってジュースなどに甘みをつけるために使われることも。
また、焼酎やビールといったお酒の原料になることもあります。ただ、酒造は法律によって条件が厳しく決められているため、サツマイモを使ったお酒が造れるのは許可を得た企業などに限定されます。家庭菜園で収穫したサツマイモは、焼き芋や天ぷら、スイートポテトなど、料理やお菓子で味わいましょう。
【サツマイモの基本の育て方】土づくりから植えつけまで
サツマイモを育てるときは、適した土や元気な苗を用意することが大切です。また、複数の植え方があるため、ぜひいろいろ試してみましょう。こちらでは、サツマイモの土づくりから植えつけまでのポイントを解説します。
土づくり
サツマイモは肥料の少ないやせ地での栽培に向いています。これまでほかの野菜などを育てており、肥料が残っている土であれば、元肥を入れずに植えつけたほうが良い場合もあります。初めて家庭菜園をする場合は、堆肥や緩効性肥料プランティア花と野菜と果実の肥料などを加えて耕しておくと良いでしょう。
水はけの良さも重要なため、排水性を高めるために高さ30cmほどの畝を立てておきましょう。通気性が良くなるよう、しっかりと耕してふかふかの土にすることも重要です。
プランター栽培の場合も同様に、水はけの良い土を使います。市販されている野菜用培養土を活用することがおすすめです。
苗選び
サツマイモは「挿し苗」と呼ばれるつるを植えつけて育てるのが一般的です。長さは30cm程度で、葉が5~6枚ついています。葉の色があせておらず、茎ががっしりと太いものを選びましょう。節がたくさんついていると、多くの芋を収穫しやすくなります。
購入後はすぐに植えつけます。葉がしおれていた場合は、植えつけ前に水につけましょう。また、水に挿したまま日陰で管理すれば、1週間ほどもたせることも可能です。
挿し苗づくり
挿し苗を購入するのではなく、ご自宅でつくる方法もあります。準備するのは種芋や培養土、プランターなどです。植えつけ予定日の1カ月ほど前から作業を始めましょう。
挿し苗をつくるときは、種芋を48℃のぬるま湯に40分ほどつけておくと発芽しやすくなります。お湯につけた芋をプランターに植え、水やりをしながら日に当てて育てましょう。つるが伸びて、葉が7~8枚ついたら挿し苗として使えます。下のほうについている葉を2枚ほど残して切り取り、日陰で3~4日乾燥させましょう。根が少し生えてきたら植えつけます。品種や大きさなどで変わりますが、ひとつの種芋から20本程度は苗をとることができるでしょう。
植えつけ
サツマイモは地温が18℃以上になったら植えつけを始められます。4月下旬から5月にかけて、霜の心配がなくなってから植えつけましょう。植えつけ時にビニールマルチをかぶせておくと地温が下がりにくくなるため、根張りも良くなります。
植えつけ時は、先端にある生長点は埋めずに地上へ出すことが大切です。土をかぶせてしまうと芽が伸びず、地上部を育てることができません。
また、サツマイモには、何種類もの植えつけ方が存在します。植えつけ方によって芋の付き方も変わるため、ぜひいくつかの方法を試してみることがおすすめです。以下では、代表的な植え方をご紹介します。
水平植え
サツマイモの一般的な植えつけ方法のひとつが水平植えです。苗を地面に対して水平になるように植えつけます。水平植えよりも深めに植える「改良水平植え」という方法もあります。
この方法だと芋の数が多くなり、大きさもそろいやすくなる点が魅力です。浅く植えるため、収穫しやすいメリットもあります。ただし、乾燥しやすく、寒さに耐えにくい点に気をつけましょう。
船底植え
船底植えは、苗の両端を少しだけ上向きにする植えつけ方です。苗を横から見たときに、船底のようなカーブを描くよう調整します。この方法だと、水平植えよりも寒さや乾燥に耐えやすくなるのがメリットです。ただし、植えつけの際に少々手間がかかります。
斜め植え
失敗しにくく、初心者にもおすすめの植え方が「斜め植え」です。畝に対して斜めに苗を植えつけます。短いつるでも植えつけ可能です。水平植えや船底植えと比較すると芋の数は少なくなり、形も細長くなる傾向にありますが、根づきやすい点がメリットです。
垂直植え
「垂直植え」は地面に対して垂直に苗を挿す方法です。根が縦方向に伸びることから、芋は短く丸い形に育ちます。芋の数は少なくなりますが、その分、一つひとつが大きくなるのが魅力です。植えつけ作業も手間なく終えられます。
釣り針植え
つるを釣り針のようにカーブした形に植えるのが「釣り針植え」です。短いつるでも芋ができる深さをそろえやすく、収穫量を増やしやすい点がメリットとなります。
【サツマイモの基本の育て方】日頃のお手入れ方法
サツマイモを育て始める前に、肥料の施し方や水の与え方などについて調べておくことが大切です。こちらでは、サツマイモの管理方法やポイントなどをご紹介します。
肥料
サツマイモに肥料を与えるときは、チッソの量に気をつけましょう。チッソが多すぎると「つるぼけ」して、葉やつるばかりが茂ってしまい、芋が育ちにくくなることがあります。チッソ・リンサン・カリがバランスよく含まれた肥料や、カリの多い肥料を使うことがおすすめです。プランティア花と野菜と果実の肥料は、バラまくだけで肥料効果が約2~3カ月間持続します。
追肥は基本的に行わず、元肥のみで育てます。植えつけ前に土に肥料を加えておきましょう。
ただし、夏頃に葉が黄色くなってきた場合は、肥料が不足している可能性があります。そのときは肥料を少量与えてみましょう。
水やり
さつまいもは過湿を嫌います。植えつけ直後から1週間程度はたくさん水をあげますが、その後はほとんど水やりをしなくても問題ありません。雨が降らず、乾燥した日が続いたときは水を与えましょう。
つる返し
さつまいものつるは、土についた部分から根を生やします。地上に出ているつるにまで芋がついてしまうと栄養が分散してしまい、収穫できるサイズが小さくなってしまうこともあるため注意が必要です。地中の芋をしっかりと肥大させるために「つる返し」を行いましょう。
つる返しとは、根が出ているつるをひっくり返して土から離すことです。地上部に根の生えたつるを見つけたら地面から引きはがし、葉の上へ載せてしまいましょう。
除草作業
雑草が増えるとサツマイモに日が当たりにくくなり、栄養も取られてしまいます。植えつけからしばらくは、こまめに除草作業を行いましょう。さつまいもが生長してある程度大きくなってきたら、雑草も生えにくくなってきます。早めに雑草を引き抜いておかなければ、すぐに茂って手が付けられなくなってしまうため気をつけましょう。
また、つる返しや除草作業の手間を省くため、マルチングをしておくこともおすすめです。地面をビニールで覆うことで地上に伸びたつるから根が生えにくくなり、雑草も抑制しやすくなります。
サツマイモの収穫と貯蔵方法
秋になったら、いよいよサツマイモを収穫できます。収穫のタイミングを把握しておくと同時に、保存方法についても確かめておきましょう。こちらでは、さつまいもの収穫や追熟、貯蔵方法をご紹介します。
収穫に適した時期
サツマイモの収穫時期は10月~11月です。植えつけから120~140日を目安に収穫できます。霜にあたると腐りやすくなり、長期間の保存が難しくなるため注意が必要です。霜が降り始める前に収穫を済ませましょう。
サツマイモの収穫は、早すぎると味が悪くなりますが、遅すぎると形がいびつになってしまいます。ちょうど良いタイミングを見計らって掘り上げることが重要です。葉が黄色く枯れ始める頃には収穫を済ませましょう。
地上部の様子だけではわかりにくい場合は、株元に手を差し込んで地中を探り、芋の大きさや形を確かめてみましょう。このとき十分に肥大している分だけ収穫することもできます。
収穫の方法やコツ
サツマイモの収穫は土が乾いているタイミングで行います。土が湿っていると芋が腐りやすくなるほか、傷がつきやすくなるためです。晴れた日の午前中に作業することがおすすめです。
芋を掘り上げる前に、つるを株元から切り落としておきます。つるは運びやすい長さに切り分けておくと片付けが楽になるでしょう。
手で軽く土を掘って芋の位置を確かめたら、スコップや鍬などで株の周辺を掘って収穫しましょう。サツマイモの皮は傷つきやすいため、丁寧に掘ることがコツです。
掘り上げた芋は、雨の当たらない場所で2~3日は乾かします。土は軽く落としますが、洗わないように気をつけましょう。水洗いしてしまうと腐りやすくなり、保存がきかなくなります。
追熟の方法やコツ
サツマイモは収穫後にある程度寝かせておくことで、さらに甘くなります。美味しいサツマイモを食べたいときは、ぜひ2~3週間は追熟しましょう。
収穫したサツマイモをしっかりと乾かしたら、もみ殻を詰めた箱に入れていきます。もみ殻がない場合、新聞紙に包んでから箱に入れる方法でも問題ありません。発砲スチロール箱を使う場合は空気穴をあけておきましょう。なるべく芋どうしが重ならないようにすることもポイントです。
気をつけたいのが追熟する場所の温度です。10℃を下回ると腐敗しやすくなるため冷蔵庫の保存は避けましょう。ただし、15℃以上になると発芽してしまうことがあります。なるべく12~13℃を保ちながら保存できると良いでしょう。
穴に貯蔵する方法
サツマイモが大量にある場合は、畑に穴を掘って貯蔵する方法もおすすめです。うまくいけば翌春まで保存することもできます。なるべく地下水位が低く水はけの良い場所を選んで、サツマイモを埋めておきましょう。
穴の深さは保存したいサツマイモの数によって異なりますが、70~80cmが目安です。穴の中に藁やもみ殻を詰め、つるが付いたままのさつまいもを入れていきましょう。傷がついてしまわないよう、丁寧に積み重ねていきます。
穴の上は土を盛り上げ、藁をかぶせます。雨が流れていくよう、土は山型に盛ります。周囲には排水用の溝を掘っておくことがおすすめです。また、竹筒などを挿して換気口をつくることもポイントです。
サツマイモ栽培で起こりがちなトラブルや対処方法
サツマイモを育てていると「つるぼけ」などに悩むケースが多く見られます。事前に対処方法を確かめておきましょう。最後に、サツマイモ栽培でありがちなトラブルやや対応方法をご紹介します。
つるぼけ対策
つるぼけしたサツマイモは十分に育たず、味も落ちてしまいます。しっかりと対策しておくことがおすすめです。
つるぼけの主な原因には「肥料の多さ」「天気の悪さ」「土の水はけの悪さ」などがあります。それぞれの原因別に対策を行いましょう。
肥料の多さが原因の場合
サツマイモは栄養を吸収しやすいため、少ない肥料でも元気に生長します。元肥を施す際は、量を少なめにすることがおすすめです。それでも多肥によるつるぼけが生じた場合は、何度かつる返しを行いましょう。つるから出た根を土から抜くことで、肥料の吸収を抑制しやすくなります。
天気の悪さ・水はけの悪さが原因の場合
サツマイモは日当たりが良く乾燥した環境を好みます。雨や曇りの日が続くと土が乾きにくくなり、湿った状態が続いてしまうことがあります。土壌の水分が多すぎてもつるぼけになるため注意が必要です。ただ、畑にさつまいもを植えている場合は雨を避けるのは難しいでしょう。なるべく高い畝をつくって排水性を高めておくことが重要といえます。
黒い汚れや白い液体の対策
収穫したサツマイモを見ると、黒いタールのようなものが付着していることがあります。これは「ヤラピン」という成分が流れ出て硬化したものです。つるの切り口や皮についた傷などから染み出してきます。気になる方もいるかもしれませんが、食べてしまっても問題ありません。
ヤラピンは元から黒いわけではなく、最初は白色をしています。時間が経つと、皮に豊富に含まれるクロロゲン酸などと結びつき、黒く変色することがあります。また、芋を料理しようとカットした際、断面から白いヤラピンが染み出してくることもあります。この場合も食べても問題ありませんが、気になる場合は洗い流してから調理しましょう。
黒い汚れがつかないようにするには、サツマイモを慎重に扱うことが大切です。収穫作業時や運搬時、傷がつかないように気をつけましょう。
ちなみに、「ヤラピンの黒い汚れがたくさんついているサツマイモは甘い」という噂を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。実際のところ、ヤラピンの量と芋の甘さは関係がないとされています。甘いサツマイモを食べたい場合は、甘みの強い品種を探すことがおすすめです。
おわりに
サツマイモは、一度植えつけた後はそれほど管理の手間がかかりません。収穫した後は長期間の保存ができる点も魅力です。ぜひお好きな品種を選んで、ご自宅で育ててみることがおすすめです。秋の収穫に向けて栽培し、美味しいサツマイモを味わいましょう。
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