更新日:2020.04.07
東京花散歩 皇居東御苑と乾通り サクラと雑木林に注目
今年はサクラの開花が早く、満開になるのも早かったのですが、2週間経ってもまだサクラが見られる状況です。これは、サクラのマダラ咲きというそうで、暖冬のせいで休眠打破がちゃんと行われず、さらに開花を迎えた後に低温が続いたりして、一斉開花にならず、次々に咲き続けているからとのこと。
しかし、せっかくの長持ちしたサクラ、そして春の花を楽しめる今ですが、終わらない新型コロナウイルスへの対応で、感染拡大が加速している東京の植物スポットは、多くが臨時休園をしています。注意を喚起している3つの密とは間逆の環境ではありますが、人が集まれば感染のリスクは免れませんし、移動自体にリスクもあります。そう思えば植物園などの休園も致し方ないですね。ここでは、今、見ごろなのに見られない植物スポットを、ここ数年のストックから紹介し、Webで花散歩を楽しんでもらおうと思います。
さて、今回は都心の真ん中にある植物スポット、「皇居東御苑」と春と秋に一般公開されている「乾通り」の春の風景を、ご紹介します。
皇居東御苑
ここは旧江戸城の本丸・二の丸・三の丸の一部を皇居附属庭園として整備したもので、昭和43年から公開されています。近年、インバウンドの訪問増加もあり、2019年は年間入苑者の最高記録を更新したそうです。出入り口は3ヶ所、大手門、平川門、北詰橋門になります。最もポピュラーな出入り口が大手町からすぐの大手門です。
苑内は広く、江戸城本丸の天守台や赤穂浪士で知られる石垣や松の廊下跡など見どころは多いのですが、ここでは植物的な見どころを見ていきましょう。まずは、春4月はサクラが見ごろです。本丸の周囲に咲くサクラは、早咲きのカワヅザクラやカンザクラから、ソメイヨシノにオオシマザクラやエドヒガン、そしてイチヨウなど多種多様なサクラが楽しめます。本丸は昨年10月に大嘗祭が行われた場所で、今はすべての設営物が取り払われ、元の景色に戻りつつあります。
そして、もう一つの見どころは二の丸雑木林です。ここは昭和天皇が発意され作られたと聞きます。この林の中にいると、ここが千代田区で皇居の中だとは思えないくらい、すてきな空間、まさに武蔵野の雑木林を体感できます。春はフキノトウやスミレ、チゴユリなどの野草、そしてキンラン、ギンランなどの野生ラン、雑木林に咲くヤマツツジも新緑と緋色の花のコントラストがとても美しい景色を見せてくれます。
そして、 2018年1月の歌会始で上皇さまが歌われたのが、
語りつつ あしたの苑(その)を 歩み行けば
林の中に きんらんの咲く
です。ご夫妻で散策のときに見た、林地で咲くキンランを詠まれました。
乾通り
皇居の乾通りは、上皇さまの傘寿(80歳)を記念して、2014年の春から、秋も含め年2回一般公開されるようになりました。春のサクラと秋の紅葉が楽しめ、多くの人で賑わってきましたが、さすがに新型コロナウイルスの拡大で一般公開は中止になっています。通りを歩くとわかるのですが、堀に沿った櫓など、それまで見られなかった皇居の建物が見られたり、春はいろいろなサクラが楽しめます。途中、皇居東御苑と連絡していて両方を回遊できるのもいいですね。東御苑とはまた違ったサクラの風景、東京の真ん中でこれだけの植物を楽しめるのは本当に奇跡的なことかもしれません。
今年は春に訪問できる望みは現状ないように思われます。早く新型コロナウイルスの蔓延が落ち着いて、苑が開苑されることを願うばかりです。感染のリスクといわれる3密とは最も遠いところにある空間ですし、私が思うに皇居が大丈夫だと日本が大丈夫という気持ちにさせてくれる気がします。それまで、画面を通してですが花をお楽しみください。
※写真は2017~2019年のもの
取材・構成・文・撮影 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。
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