【キクの育て方】小菊からガーデンマムまで!初心者でも美しい花を咲かせるコツ
秋の庭を彩る花として、キク(菊)を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。
家庭での栽培は一見難しそうに感じるかもしれませんが、小菊や洋菊(ガーデンマム)はとても丈夫で、初心者でも育てやすい品種もあります。
難しい手入れは必要なく、水やりや日当たりといった基本的なお世話に注意するだけで立派な花を咲かせることができます。
この記事では、キクの基本的な特長から毎日の管理方法、初心者がつまずきやすい失敗とその対処法を詳しくご紹介します。
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☘28:菊(キク)の育て方|どんな品種があるの?置き場所や、摘心、肥料の与え方などもご紹介
キクの育て方|特長と主な品種
キクの魅力は、種類の豊富さと奥深い美しさにあります。大輪から小輪まで、また伝統的な和菊から華やかな洋菊まで、さまざまな姿を楽しませてくれるのが特長です。
まずは、キクの特長と代表的な品種を見ていきましょう。
キクとは?
キクは、中国原産のキク科キク属に属する多年草で、寒さや暑さに強い丈夫な性質を持っています。
花の大きさによって、大菊(18cm以上)、中菊(9〜18cm)、小菊(9cm未満)の3種類に分類されます。
大菊は見ごたえがありますが、仕立てに専門的な技術が必要です。中菊や小菊は家庭でも育てやすく、園芸初心者に向いています。
特に、小菊は管理の手間が少なく、盆栽仕立てや寄せ植えなど幅広い楽しみ方ができるため、ガーデニング初心者の方にもおすすめです。
代表的な品種と花色
現在の園芸市場では、伝統的な「和菊」と、西洋で改良された「洋菊」が広く流通しています。
洋菊の代表であるスプレーマムは、一本の茎から複数の花をスプレー状に咲かせるのが特長で、フラワーアレンジメントにもよく使われます。
また、ガーデンマムはコンパクトな草姿に加えて花つきがよく、耐寒性にも優れているため、地植えでも安心して育てられます。
花色は黄色、白、ピンク、赤、紫、緑、複色など非常に豊富で、好みに合わせて選ぶ楽しさもあります。
古典菊と洋菊の鑑賞ポイント
古典菊には、江戸時代に育種された「江戸菊」「嵯峨菊」「伊勢菊」「肥後菊」などがあり、それぞれが独特の花形や個性を持ちます。
繊細な花姿とともに、古来より受け継がれた美意識や伝統的な風情を味わえるのが特長です。
一方、洋菊は日本からヨーロッパに渡って品種改良され、のちに逆輸入される形で国内に広まりました。
ダリアのように大輪で華やかな品種が多く、和の雰囲気を残しつつも、モダンで洗練された印象を与えます。
切り花としても人気が高く、現代の暮らしにも取り入れやすい種類です。
キクの育て方|基本的な栽培方法
美しいキクを咲かせるためには、環境を整え、水やりや肥料の管理をきちんと行うことが大切です。
これらの基本を押さえれば、初心者でも立派な花を咲かせられます。
キクが好む栽培環境
キクは日が短くなると花芽をつける「短日植物」です。
開花時期は光の当たり方に大きく左右されるため、1日あたり10時間ほどしっかり日光が当たる場所で育てましょう。
日に当たる時間が短すぎると、想定より早く開花してしまうことがあります。
さらに、夜間に街灯などの人工的な光が当たると、逆に開花が遅れることもあるため、そのような環境では段ボール箱などを使って遮光するとよいでしょう。
土づくり
キクを元気に育てるためには、水はけ・保水性・肥料の保持力のバランスが取れた土が必要です。
鉢植えの場合、市販の草花用培養土『ハイポネックス培養土鉢・プランター用』や菊専用の培養土を使うと手軽で失敗が少なくなります。
地植えや、自分で配合する場合は、赤玉土(小粒)3:腐葉土4:パーライト2:くん炭1で混ぜ合わせるのがおすすめです。
ほかにも、赤玉土5:腐葉土3:ピートモス2といった配合もあるので、栽培環境に合わせて調整しましょう。
植えつけ
キクの植えつけは、4月~7月中旬にかけておこないます。秋咲に咲く品種は6月〜7月中旬までに植えつけを終えるようにしましょう。
また、鉢植えでは苗よりひと回り大きな鉢を用意し、地植えでは株間を15cm〜20cmほどあけて植えつけます。
作業後はたっぷりと水を与え、根が土にしっかり馴染むようにしましょう。
水やり
鉢植えの場合、土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷり与えましょう。特に開花期間中は水を多く必要とするため、水切れに注意が必要です。
地植えの場合、植えつけ後に根づけば、基本的に降雨だけで育てることができます。
ただし、病気を防ぐために花や葉に水をかけず、株元にそっと与えることを意識してください。
肥料
植えつけ時に、元肥として緩効性肥料『マグァンプK中粒』を土に混ぜ込んでおきます。
生長期にあたる3月~10月は月に1回程度、置き肥『プロミック 草花・鉢花用』を与えるか、週1回程度薄めた液体肥料『ハイポネックス原液』を施してください。
開花時期にはリンサンを多く含むタイプの肥料を与えることで、美しい花を咲かせることができるでしょう。
ただし、チッソ分が多すぎると葉ばかり茂ってしまい、花つきが悪くなるため、バランスの取れた施肥を心がけましょう。
摘心・支柱立て
摘心とは、茎の先端にある生長点を摘み取る作業です。この作業によって脇芽が伸び、株全体がこんもりとまとまった姿になります。
植えつけから2週間ほど経ち、根がしっかり張った頃に摘心を行いましょう。
また、草丈が高くなる品種は、風や重みで倒れやすくなるため、支柱で支えることが大切です。
植えつけと同時に支柱を立て、株の成長に合わせて茎をやさしく誘引していきます。
さし芽
さし芽の適期は5月~6月です。親株から5cm〜10cmの新芽の先端を切り取り、切り口を斜めにカットします。2時間ほど水に浸けておきましょう。
その後、さし芽用の培養土に挿し、明るい日陰で管理します。土が乾かないように注意しながら、水やりをこまめに行うと、1〜2週間ほどで発根します。
根が十分に育ったら、ポットや鉢に植えかえてください。
キクの育て方|病気・害虫対策
キクを元気に育てるには、日当たりや風通しを整えるなど、栽培環境を適切に管理することがとても重要です。
病害虫の発生を予防し、葉の変色や虫の食害を早めに見つけることができます。
こまめに観察し、初期の段階で対処することで、多くのトラブルを防げるでしょう。
主な病気と対策
うどんこ病
葉の表面に白い粉をまぶしたようなカビが生える病気で、春や秋の乾燥した時期に発生しやすくなります。
日当たり・風通しが悪い場所で原因になることが多いため、株同士の間隔をあけ、枝葉が混み合わないように管理しましょう。
発生初期に気づいた場合、薬剤を散布して広がらないうちに対処しましょう。
白さび病
葉の裏に白や肌色のイボ状斑点ができる病気で、梅雨や秋の長雨時期に発生しやすくなります。
泥はねや多湿が原因になるため、雨除けやマルチングによるが有効です。
発病した葉は速やかに取り除き、薬剤散布で蔓延を防ぎます。
主な害虫と対策
アブラムシ
新芽や葉の裏に群生して汁を吸い、株の生長を阻害する害虫です。発生初期でも繁殖力が強いため、見つけ次第薬剤で徹底的に駆除します。
排泄物がすす病を誘発したりウイルス病を媒介したりする恐れがあります。
より確実に対処したい場合は、アブラムシ退治と施肥が同時にできる液体肥料『ハイポネックス原液 殺虫剤入り』を与えるのがおすすめです。
ハダニ
高温で乾燥した環境を好む小さなダニの仲間で、葉の裏に寄生して汁を吸います。
水に弱いため定期的な葉水が有効ですが、大量に発生した時は専用の薬剤を使用して駆除しましょう。
キクの育て方|よくある栽培トラブル
栽培中に起こりがちなトラブルも、原因を知れば適切に対処できます。
ここでは、キク栽培のよくある悩みや対処法をご紹介します。
花が咲かない原因は?
主な原因は日照不足と夜間の人工光です。キクは短日植物のため、1日6時間~8時間、理想的には10時間近くの直射日光が必要です。
夜間は街灯や室内の人工的な光が当たると、逆に開花が遅れることもあるため、段ボール箱などを使って光を遮断してあげましょう。
葉が枯れる・黄変する原因は?
肥料不足や水の与え方に問題があることが多いです。特に、チッソ不足や乾燥しすぎ・過湿による根腐れが考えられます。
土の表面が乾いてからたっぷり水を与えることを心がけ、定期的な追肥を行いましょう。
茎が徒長して倒れる原因は?
日照不足や水の与えすぎ・チッソ肥料の過剰施肥が原因です。
日当たりのよい場所で管理し、適切な水やりと施肥を行い、草丈が高くなる場合は必要に応じて支柱を立てましょう。
株が年々弱る原因は?
連作障害や株の老化が影響している可能性があります。
1年~2年に1回は植えかえを行い、挿し木や株分けで株を更新するのがおすすめです。
植えかえはどれくらいの頻度で必要?
鉢植えの場合は、1年~2年に1回が目安です。根詰まりや土の劣化を抑えるためにも、春または秋の適期に作業を行いましょう。
地植えの場合も病害虫のリスク軽減のために同様の頻度で植えかえを行うのがおすすめです。
おわりに
キクは手をかけた分だけ美しい花で応えてくれる、魅力あふれる植物です。
今回ご紹介したポイントを参考にすれば、ご家庭でも育てる喜びを感じられるでしょう。
秋の庭を華やかに彩るキクの花を、ぜひ暮らしの中に取り入れてみてください。
公開:2023年11月9日
更新:2025年10月24日
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