【ぶどうの育て方】甘い実を育てるコツと肥料の使い方

果物の中でも人気が高いぶどう。家で育てられると、たくさんの実を自由に食べられるのが魅力です。
栽培するにはスペースが必要なイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、鉢植えにしてコンパクトに育てることもできます。
ぜひ、お庭やベランダなどで、ぶどう栽培にチャレンジしてみましょう。
今回は、ぶどうの特徴や適した肥料、基本的な育て方など、さまざまな情報をご紹介します。
- 目次
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- ぶどうの基本情報
- 主なぶどうの品種
- 初心者におすすめのぶどう品種
- 棚仕立て・垣根仕立ての違いと選び方
- 棚仕立て
- 垣根仕立て
- 家庭栽培の魅力
- ぶどうの育て方|栽培の流れと管理ポイント
- 土づくり、元肥
- 苗選び
- 栽培場所の決定
- 植えつけ
- 芽かき、誘引
- 花房の整形
- 摘房
- 追肥
- 摘粒
- 袋かけ
- 収穫
- お礼肥
- 剪定
- 寒肥(元肥)
- ぶどうの育て方|上手に育てるポイント
- 水やり
- 日当たり、風通し
- 雨よけ
- ぶどうの育て方|冬越し・夏越し管理のポイント
- 冬のぶどう管理|剪定と寒さ対策
- 夏のぶどう管理|乾燥・高温対策
- プランターぶどうの季節ごとの管理方法
- ぶどうの育て方|初心者が失敗しないためのコツ
- 育てやすい品種を選ぶ
- 剪定ミスや管理不足に注意
- つるの誘引は計画的に
- ぶどうの育て方|おすすめの肥料
- ぶどうの育て方|肥料の施し方
- 地植えのぶどうへの肥料の施し方
- 鉢植えのぶどうへの肥料の施し方
- おわりに
ぶどうの基本情報
ぶどうは、ブドウ科ブドウ属に属するつる性の落葉果樹です。
日本の気候にもなじみやすく、日当たりのよい場所で育てれば、8月~10月にかけて収穫が見込めます。
つるを伸ばして成長するため、棚やフェンスなどに誘引して仕立てるのが一般的です。
主なぶどうの品種
ぶどうの品種は、欧州種・米国種・欧米雑種の3つに大別されます。
- 欧州種(ヨーロッパブドウ):味や見た目に優れるがやや栽培が難しい
- 米国種(アメリカブドウ):病気に強く育てやすい
- 欧米雑種:両者の特徴を併せ持ち、味と育てやすさのバランスがよい
品種ごとの栽培難易度も異なるため、家庭で育てる際は、目的やスキルに合わせて選ぶとよいでしょう。
初心者におすすめのぶどう品種
初めてぶどうを育てる方には、病気に強く、管理がしやすい米国種(アメリカブドウ)をおすすめします。
例えば、「デラウェア」はタネなしで甘みが強く、小粒ながら人気の高い品種です。ガーデニング初心者の方、ぶどう栽培に初めて挑戦する方に向いています。
棚仕立て・垣根仕立ての違いと選び方
ぶどうの仕立て方は、「棚仕立て」と「垣根仕立て」の2種類に大別されます。
家庭菜園では、庭の広さや管理のしやすさを考慮して、どちらかを選ぶとよいでしょう。
棚仕立て
棚仕立ては、つるを上方に誘引し、水平に張った棚の上に広げる伝統的な方法です。
この方法では、枝葉を広く展開させることができるため、日当たりや風通しがよくなり、病害虫の被害を抑えやすくなります。
また、果実のつきがよく収穫量も多くなりやすく、大粒で甘みのある品種を栽培するのにおすすめです。
ただし、棚の設置にはある程度のスペースと手間がかかります。広い庭を活用したい方、果樹栽培を本格的に楽しみたい方に適した方法です。
垣根仕立て
垣根仕立ては、フェンスや支柱を使って、つるを横方向に誘引する省スペース型の方法です。自然な景観になじみやすいため、庭の仕切りや緑のアクセントとして活用することもできます。
高さを抑えた構造のため、剪定・収穫の作業もしやすく、管理の手間が軽減される点も魅力です。
反面、果実が日陰になりやすく、全体の収穫量がやや少なくなる傾向があるため、実の量よりも育てやすさ、見た目を重視する方におすすめします。
家庭栽培の魅力
ぶどうの家庭栽培の魅力は、完熟した果実を収穫できる点です。
市販品では味わえない濃厚な甘さを楽しめるほか、つる性植物として日よけやお庭の装飾にも活用できるため、実用性と観賞性を兼ね備えた栽培を楽しめます。
ぶどうの育て方|栽培の流れと管理ポイント

ぶどう栽培の方法は品種や環境によって細かく違いますが、主なやり方は共通しています。
こちらでは、基本的な栽培の流れや、施肥のタイミングについてご紹介します。
土づくり、元肥
ぶどうは、排水性と保水性を兼ね備えた土を好みます。自分で配合する場合は、小粒の赤玉土と腐葉土を7:3程度で混ぜたものがおすすめです。
市販されている果樹用土を使用してもよいでしょう。
また、元肥として緩効性肥料『マグァンプK大粒』を土に混ぜ込みましょう。
庭や畑などに地植えする場合は、植えつけ予定地を掘り返して、堆肥や腐葉土を混ぜて耕しておきます。
掘り返す穴の大きさ・深さは50cm程度が目安です。
苗選び
ぶどうの苗は、ホームセンターや園芸店などで入手できます。
見た目が弱々しく、ひょろひょろとしているものは避け、がっしりとして元気な苗を選びましょう。
苗木には「挿し木苗」や「接ぎ木苗」などの種類がありますが、育てやすいのは接ぎ木苗のほうです。価格は高い傾向があるものの、病気に強く管理の手間がかかりにくいメリットがあります。
一般的に、ぶどうを植えつけた年は結実しないことがあります。実がついたとしても、それほど多くはありません。
最初は果樹の生長を優先させ、収穫は2年目、3年目まで待つとよいでしょう。
栽培場所の決定
ぶどうはつるを長く伸ばして育ちます。スペースがある場合は、ぶどう棚を作ってつるをはわせることがおすすめです。
バルコニーの屋根やカーポートなどを利用して、棚代わりにすることもできます。
スペースが足りない場合は、鉢植えにしてあんどん仕立てにする方法があります。主枝が長くなったら、リング部分につるを巻きつけて仕立てていくのが基本です。
コンパクトに育てられる分、地植えよりも収穫量は少なくなる点に注意が必要です。
植えつけ
ぶどうの植えつけ適期は、休眠期に当たる11月~3月が目安です。ただし、真冬は避けましょう。
地植えの場合は、耕しておいた場所に、根鉢よりもひと回り大きな植え穴を掘ります。苗の根を広げて穴へ入れ、土を埋め戻しましょう。
鉢植えの場合は、鉢底ネットや鉢底石を敷いた上に土を半分ほど入れ、根鉢を入れます。土が鉢の縁よりも数cm低くなるように位置を調整しましょう。
植えつけ後はたっぷりと水を与えます。生育初期の小さな苗は特に弱りやすいため、丁寧に管理することが大切です。
また、植えつけた直後、40cm程度を残して先端を切り詰めておきます。
まずは主枝を優先して伸ばすように育てていきましょう。
芽かき、誘引
ぶどうはわき芽をたくさんつけます。4月~5月に、必要な数だけ残して新芽を摘み取りましょう。1節につき1つだけを残すのが目安です。
開花する前の時期になったら、支柱やネットへつるを誘引しましょう。
花房の整形
着果をよくし、おいしい果実を育てるには、花房をすべて残さずにある程度カットし、必要な分を残すようにします。開花し始めた時期に、花房の整形を行うとよいでしょう。
一つの花穂には、大量の花房がついています。不要な部分をカットしていきましょう。花穂の先端に花房を残して、根元側はほとんど取り除いてしまいます。
残す粒の数は品種によって違うため、事前に調べておきましょう。例えば、巨峰なら1房あたり30粒、デラウェアなら100粒程度が目安です。
摘房
ぶどうの枝には、複数の房がつくことがあります。すべてつけたままにしておくと、一つひとつを十分に育てることができません。
枝1本あたり1~2房を残して摘み取りましょう。
追肥
ぶどうの追肥時期は6月ごろです。緩効性肥料を与えますが、樹勢が強い場合は様子を見て、施肥を避けることもあります。
特に地植えの場合は、多肥にならないように注意が必要です。
鉢植えは6月と9月に『錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用』を施肥することがおすすめです。
摘粒
ぶどうの房についている粒数が多くなり、混みあっている場合は 間引いてください。
内側に入り込んでいるものや、小さすぎるものなどを取り除きましょう。摘粒することで、残した粒が肥大しやすくなります。
袋かけ
摘粒まで終えたら、袋かけをして害虫被害や鳥害を予防します。専用の袋が売られているため活用しましょう。
透明な袋であれば、中身を確認しやすくなります。
収穫
ぶどうの粒が十分に育ったら収穫できます。熟したかどうか分かりにくい場合は、房の下のほうについている実を食べてチェックしてみましょう。
ハサミで房ごと丁寧に切り取ってください。
お礼肥
収穫が終わったらお礼肥を与えます。
庭植えは10月下旬~11月上旬、鉢植えは2月に堆肥と肥料成分がひとつになった『土を豊かにする肥料』を与えましょう。
剪定
ぶどうの葉が落ちた1月~2月は剪定の時期です。
1年目の冬剪定では、横から伸びる余分な枝はすべてカットしていきます。2年目は勢いの弱い枝を切り、残すつるを誘引していきます。
また、ぶどうの品種や栽培する地域によって、長梢剪定と短梢剪定を使い分けることがあります。
長梢剪定は、前年に伸びた勢いのよい枝を残し、後は切り落とす方法です。枝には、4~5あるいは7~8ほどの芽が残るようにカットします。
短梢剪定では、前年に伸びた枝を、2~3ほどの芽を残して切り落とします。短い枝をたくさん残す方法です。
寒肥(元肥)
地植えの場合は11月頃ごろに、鉢植えの場合は2月ごろに肥料を与えておきます。
土の表面を軽く耕して緩効性肥料『マグァンプK大粒』を混ぜ込みましょう。
ぶどうの育て方|上手に育てるポイント

ぶどうの日々のお手入れでは、水やりの頻度や日当たりなどに気をつけることが大切です。
ぶどうを管理するときに知っておきたいポイントをご紹介します。
水やり
ぶどうは過湿に弱いため、水のあげすぎに注意が必要です。
鉢植えのぶどうには、土の表面が乾いてから水をたくさん与えます。鉢底から流れ出る程度が目安です。
地植えの場合、根づいた後はほとんど水やりしなくても問題ありません。根づくまでの期間は、鉢植えと同様に土が乾いた段階で水やりします。
また、夏の高温の時期、日照りが続いていたら水をあげましょう。
日当たり、風通し
ぶどうは日光を好むため、日当たりのよい場所を選んで植えつけるのがおすすめです。
病害虫被害を防ぐため、風通しのよさも重要となります。湿気がこもりやすい場所は避けましょう。
雨よけ
ぶどうは雨に弱いことが特徴です。雨に当たると病気が発生し、うまく育たなくなってしまうことも。雨が直接当たらない場所に植えることが大切です。
露地栽培にする場合は、ビニールなどで雨よけを作るとよいでしょう。
ぶどうの育て方|冬越し・夏越し管理のポイント
ぶどう栽培では、季節に応じた適切な管理が、果実の品質や収穫量に大きく影響します。
ここでは、冬越し・夏越し管理のポイントを整理してお話します。
冬のぶどう管理|剪定と寒さ対策
冬場は、枝の剪定が重要です。ぶどうの樹液は寒さとともに流動を止めるため、剪定は1月~2月にかけて行いましょう。
ただし、北海道などの積雪が多い地域では、11月中に剪定を終えておくと安心です。
また、寒冷地でのぶどう栽培では、防寒対策が欠かせません。
プランターの場合は鉢全体を不織布で覆ったり、株元にマルチング材を敷いたりすることで、冷気の侵入を抑えられます。
わらや不織布をかぶせて保温する方法も効果的で、越冬後のスムーズな生長が期待できます。
夏のぶどう管理|乾燥・高温対策
夏の管理では、水分と日差しがコントロールポイントとなります。
特にプランターでは土の乾燥が早いため、土の表面が乾いたタイミングでたっぷりと水を与えてください。
ただし、水を与えすぎは根腐れの原因となるため、与える時間帯に注意が必要です。
朝の涼しい時間や、夕方の日差しが和らいだ頃に水やりを行えば、地温の上昇による根へのダメージを抑えられます。
プランターぶどうの季節ごとの管理方法
春は新芽が展開する時期であり、芽かき作業が欠かせません。
芽かきとは、複数出てきた新芽の中から太く健康なものを1本残し、ほかの芽を早めに除去する作業です。これにより養分を集中させ、健全な枝の育成につながります。
秋は、ぶどう収穫後の剪定と休眠準備のための管理期間です。
果実を収穫した後は、疲れた株を回復させるため、緩効性の有機肥料の『ブリリアントガーデン バラの有機肥料』や、堆肥と緩効性肥料がひとつになった『土を豊かにする肥料』を与えるとよいでしょう。
プランターで育てている場合、根詰まりが起きやすいため、鉢底の状態を確認し、必要に応じて植えかえをしてください。
ぶどうの育て方|初心者が失敗しないためのコツ

剪定と枝の整理は、ぶどうを健康に育て、おいしい実を収穫するために欠かせない作業です。
ここでは、初心者が栽培に失敗しないためのコツをご紹介します。
育てやすい品種を選ぶ
品種選びの段階でも注意が必要です。育てやすさや病気への耐性、地域の気候への適応性などを事前に確認してから選ぶと、失敗を防ぎやすくなります。
剪定ミスや管理不足に注意
ぶどう栽培で初心者が失敗しやすいポイントの一つが、剪定ミスです。
特に注意したいのは、花芽がついた枝を誤って切ってしまうことです。その年の収穫量が大きく減ってしまいます。
また、新しく伸びる枝(新梢)の管理が不十分だと、つるが絡まりやすくなり、枝のあいだに十分な光が届かなくなります。
光合成が妨げられ、果実の品質が落ちる原因になるため注意してください。
つるの誘引は計画的に
つるの誘引は、ぶどうの育てやすさと実のつきやすさに大きく関係します。
主枝を一文字型に仕立てることで、枝の位置や方向を整えやすくなり、全体の管理がしやすくなるでしょう。
地植えの場合は、T字型に広げて誘引するのが一般的です。一方、プランター栽培ではスペースに制限があるため、縦に仕立てる「あんどん仕立て」をおすすめします。
ぶどうの育て方|おすすめの肥料

肥料を選ぶ際は、チッソ・リンサン・カリの3要素のバランスについて着目することが大切です。
例えば、チッソを過剰に施してしまうと徒長の原因となり、実つきが悪くなってしまいます。
反対に、不足した場合は葉や梢が色あせ、生育が悪くなってしまうことも。
各成分を過不足なく与えることで、ぶどうが元気に育ちます。迷った場合は、果樹用に配合された肥料や、ぶどう専用肥料などを購入するとよいでしょう。
ぶどうの育て方|肥料の施し方
肥料を施す方法は、いくつかの種類があります。地植えと鉢植えの主な施肥のやり方についてご紹介します。
地植えのぶどうへの肥料の施し方
果樹に肥料を施すときは、土全体に肥料をまんべんなく施す方法や、溝を掘って肥料を埋める方法などがあります。
土全面に施肥する場合は、株周辺の土を少し掘り返して肥料を混ぜ込みましょう。
手間がかかりにくいのは、幹の周囲に輪を描くように溝を掘って肥料を施す方法です。5~10cmの深さの溝を掘り、肥料を混ぜましょう。
ただし、水はけが悪い場所に深い穴を掘ってしまうと、水がたまりやすくなるため注意が必要です。難しい場合は、置き肥を使うこともおすすめです。
いずれの場合も、根に当たる場所は避けるように気をつけましょう。
鉢植えのぶどうへの肥料の施し方
鉢植えの場合は、土全体に肥料が行き渡るように混ぜ込む方法や、置き肥を使う方法などがあります。
液体肥料を使う場合は、水やり代わりに土に注ぐのが一般的です。
使用する肥料によって適した与え方が異なるため、事前に説明書を確認しておきましょう。
おわりに

初心者の方は、まず病気に強い品種を選び、適切な仕立て方を決めることから始めてみましょう。
日当たりと風通しのよい環境で、適期に肥料を与えながら丁寧に管理していけば、甘くておいしいぶどうの果実を収穫できるはずです。
ぜひご自宅で、ぶどう栽培にチャレンジしてみてください。
公開:2022年6月8日
更新:2025年7月7日
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