バラをもっと深く知る㊻長く愛されるバラ
細めの枝。よく茂る株にピンクの中輪芳香花。草花ともよく合い、つるバラ仕立ても可能。
1983年作出ながら、長く愛されているイングリッシュローズの‘メアリー ローズ’(軽井沢レイクガーデンで)。
日本では毎年80~100の新品種が発表されます。花の美しさはさまざまで、樹はますます丈夫で育てやすくなってきています。
中には一時期ぱっと人気を集めても、残念ながら次第に忘れ去られるバラも。しかし、ずっと育てられ愛され続けるバラもあります。
それらのバラは、少しの仕立てや手入れ、あるいはほとんど手をかけずとも、まとまりの良い株に四季を通じて安定して花を咲かせ続ける品種です。品種によっては芳香も。
近年発表の主な中輪~大輪品種から、その良さを探ってみましょう。
ローズ ポンパドゥール
2026年日本デビュー20周年のデルバール社。この品種は2009年に日本で発表、フランスでは2016年に‘ポンパドゥール’名で発表されました。
大きな花は、カップから少し乱れたロゼットに、ピンク色から咲き進んで、少し青みをおびたピンク「ポンパドゥールピンク」色(花名の意味)に。
ポンパドゥール侯爵夫人が庇護したセーブル陶器の色のイメージにちなむ命名です。ローズとフルーティな芳香もあり、まさに華麗なロココ時代の宮廷を思わせます。
樹はシュラブで高さ約1.5m。丸いかたちの株に花の重みでしなってやわらかく咲きます(写真:ながおか香りのバラ園で)。伸びた枝を構造物に誘引して小型のつる仕立てとすることも可能です。
枝変わりに、花色が淡いピンクになった‘ローズ アントワネット’(2020年発表、アントワネットピンクの意味)があります。
ボレロ
メイアン社作出で、2004年に日本発表。白いロゼット咲き中輪花は花の中央に微妙にピンクやアプリコットをさすことも。
フルーティで、かすかにスパイシーな香りが混じります。国際取引のコードネームはメイデルワイスMEIDELWEISで、エーデルワイスのようなイメージ(アラン・メイアンさん)とか。
樹は高さ0.8mとコンパクトで、株は丸いかたちに。
苗のうちから多くの蕾をつけすぐ花を咲かせるので、株を大きくしたければ初期は摘蕾をした方がよいでしょう。草花やリーフともよく似合います(株はKIOI ROSE GARDENで)。
フィネス
京阪園芸・小山内健さんが育種を再開、2017年に最初に発表された品種です。濃いめのピンク色の波状弁・ロゼット咲きの中輪花からは、ダマスク系の香りにスミレやレモンバームなどが溶けこむアロマティークな芳香が漂います。
樹は高さ1.0~1.2mの木立性でふわっと横に広がります(鉢植え・地植えともにながおか香りのばら園で)。「常に咲き、常に香る」「大きくも小さくもできる」バラと、小山内さんは言います。花名はワインの表現用語の「ファイン」の意味のフランス語です。
マイローズ
バラの家の耐病性品種「ロサ オリエンティス プログレッシオ」として、2019年に‘シャリマー’とともに発表されました。
真っ赤な中輪ロゼット咲きの花が房になってうつむき加減に咲く花が、強い花色と厚い花弁・トゲの多い枝・硬めの樹を、やわらかく見せています。
香りは微香ですが、とても花保ちが良く、終わった花のすぐ下から花枝を伸ばしまた咲くので、年中花が咲いている感覚をもたらします。「夏剪定不要」と育種した木村さんは言います。
樹は初期成育が早く、樹高表示0.9mの横張り性ですが、次第に全体に丸く大きくなってボリュームを増していきます(鉢植えは若い株、地植えは、ぎふワールド・ローズガーデンで)。
葉の耐病性はとても高く、バラの家の殺菌剤散布区分のタイプ0。発表当時「次世代のバラ」と言われましたが「あまり手間をかけずに咲き続ける」という点でまさしくいまの、これからのバラの性質を兼ね備えています。
レヴリ
ローズ ドゥ メルスリーは2026年でデビュー10周年。‘レヴリ’は2022年秋に耐病性が高い藤色系の日本のバラとして発表されました。
花は藤色でブラウンのニュアンスもある、中輪ロゼット咲き。ティー系の中香。
高さ0.6~0.8mのコンパクトな株に咲き、短い花枝の先に花色のニュアンスを微妙に変えながら咲き続けます。
コンパクトな鉢植え(写真:花ごころ)に。また地植えにして草花と混植(写真:河本バラ園)すると、その魅力は一層増します。小花と一緒になって風に揺れ、季節ごとの夢想(花名の意味)の世界へと私たちを誘います。
手間をかけずにいつも咲く
長く愛されるバラは、いつも咲いている感じで、育てていて安心感もあります。
いまのバラは、美しさはさまざまながら、ほとんどが四季咲きで繰り返しよく咲く品種が多くなりました。加えて葉の耐病性が年を追うごとに高くなり殺菌剤の散布はそこそこで済むように。
品種によりけりですが、ハサミを使った手入れは日常の花がら切りだけ、株が大きくなり過ぎたら夏剪定・冬剪定でサイズダウンするくらいで済む品種も増えてきています。
手間がかからず身近に咲き続けるバラが、こらからもどんどん増えて、その中から長く愛されていくバラが登場していくことでしょう。
著者紹介
#バラ #バラの育て方 #特集
玉置 一裕
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。