バラをもっと深く知る㊾フルスペックのバラをコンクールで探す
国際コンクール入賞花からは人気品種が多く生まれている。岐阜県可児市のぎふワールド・ローズガーデンの「ぎふ国際ローズコンテスト」の審査会場
さまざまな要素が同時に実現したバラを
「そんなバラないでしょう…」「あったら、自分が欲しい!」。バラの専門家でさえもそういうのが、フルスペックのバラ。
●花が良い
●耐病性が高く、育てやすい
●繰り返しよく咲く
●香り高い
●花保ちが良く、長く楽しめる
…の各要素を満たすバラです。
とくに最近「香りがあって花保ちが良い」ことは、多くの愛好者が希望するところ。「こんなにきれいで香るバラは、ずっと見ていたい-」。ごく当たり前の心理でしょう。
別の側面も。日本では、海外と違って多くの愛好家は花が散ることを好まれません。バラには香りも欲しいけれど、スグ散ることは残念ですし、散ったら片づけたいし、お隣さんへ飛ぶことも気になります。
それもあって、香りと花保ちの両立が望まれているのでしょう。なお「花保ち」と「花が自然に散る(離弁性・セルフクリーニング性)は、別の機能要素です。
国際コンクールの受賞品種に
ところが育種技術上これらを同時に実現することはとてもたいへんなこと。まず、「耐病性」と「花保ち」の両立は困難。それでもいくつかの品種が登場しています。
その上で「香り」と「花保ち」の両立については「ティー系の香りはまだ可能だが、ダマスクの香りとの両立は難しい」(木村卓功さん)といいます。
確かにティー系で耐病性が高く花保ちが良い品種は続々と登場していまが、ダマスクやフルーツ香で香り高い品種は…。
実は、国際コンクールの受賞品種で、すでに実現されていました。日本で行われる3つの国際コンクールのうち、ぎふワールド・ローズガーデン(岐阜県可児市)の「ぎふ国際ローズコンテスト」受賞作品の中に、ダマスクを感じる強香で花保ちの良い主な品種を見つけました。
「ぎふ国際ローズコンテスト」は、1998年に開始、2000年に第1回表彰式以降継続して実施。2026年で第24回を迎えます。
「日本の気候風土に適応し耐病性に優れたバラ」を顕彰するので、入賞花はみな“育てやすい”品種といえるでしょう。
タルト アブリコ
第23回(2025年)で銀賞を受賞したのが、‘タルト アブリコ’(ローズ ドゥ メルスリー2025年)。小中輪カップ咲きで小型の木立性。
花名の「アプリコットのタルト」にふさわしい、ティーとフルーツにダマスクの、おいしそうな強い香り。しかも花保ちがとても良い品種です。ポレンジとピンクが混じる花色で、春花(上)は明るく、秋花(下)は抱え気味に咲きます。
株姿はコンパクトさをキープ。草花と一緒に咲く春(河本バラ園)
秋もあまり大きくならずに花がたくさん咲く株姿(ぎふワールド・ローズガーデンで)
トリニティ
第21回(2023年)で銀賞受賞の‘トリニティ’(ロサ オリエンティス プログレッシオ2021年)は、純白の小中輪ロゼット咲き。
半直立のシュラブで、樹高1.5mと少し枝が伸びますが、秋にも咲き続けるタイプ。ダマスクにフルーツの強香。花色の印象からか、さわやかな感じがします。それでいて花保ちが良い品種です。
写真は花菜ガーデン(神奈川県平塚市)で。
雪璃(シュエリ)
第24回(2026年)金賞を受賞したのが‘雪璃(シュエリ)’(ロサ オリエンティス プログレッシオ2026年)。雪を透かしたようなほんのりピンク色の、ふっくらと重なるロゼット咲きで、少し大きめの中大輪。
樹は高さ1.2×幅1.1mの木立性。ダマスクにティーの強香がありながら花保ち良い品種で、花と香りの印象がよく合っています。(下の写真:バラの家)。
香りに優劣はない
一般にダマスクやフルーツの香りは強く感じるので「強香」と、ティー系の香り品種はやわらかく感じるので「中香」と表示されています。それに上下はありません。
たとえ「微香」でも例えば‘ピエ-ル ドゥ ロンサール’のように、多くの人が“香る”と感じるバラもあります。花が良く香りが良くても、生育がおとなしい‘ガブリエル’のようなバラもあります。
人それぞれ好みはあるのでしょうが、スペックのチェックもともかく、あまり難しく考え過ぎず、まず「花」を見て感じることが、いちばん大切です。
そういっても国際コンクール受賞品種は、バラ育種の進歩の一つの現れ。育種家たちの工夫や苦労をかたちにし、専門家の審査を経た、“美的側面でも機能面でも優れた品種”であることは、間違いないでしょう。
国際コンクールの受賞作品が見逃せません。
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#バラ #バラの育て方 #特集
玉置一裕
バラの専門誌『New Roses』編集長。
『New Roses』の編集・執筆・アートディテクションを行うかたわら、ローズコーディネーターとしてバラ業界のコンサルティングやPRプランニング、関連イベントのコーディネート、バラの命名等に携わる。
また園芸・ガーデニング雑誌への執筆や講演を通じて、バラの「美」について語ると同時に、新しいバラの栽培法の研究も行っている。