フィロデンドロンの育て方| 特徴や育て方のポイント、剪定時期を分かりやすく紹介
「フィロデンドロン」は店舗や一般家庭で観賞用として置いているところが多い一方、育て方について詳しく知る人は少ないのではないでしょうか。
今回はフィロデンドロンの育て方として、特徴や種類、育て方のポイントや剪定方法、増やし方など詳しく紹介します。ぜひ最後までお読みください。
フィロデンドロンとは
フィロデンドロンはサトイモ科フィロデンドロン属の植物で、主に熱帯地域や亜熱帯地域に分布しています。
名前はギリシャ語で「愛する」は「フィロン」、「樹木」は「デンドロン」が由来です。
フィロデンドロンはまっすぐ伸びる直立型、幹が短く葉が広がるロゼット型、つるのようにほかの木に絡まるタイプの3つがあります。
根は地面の外に出ると幹や茎みたいに太くなり、「気根」と呼ばれています。
花言葉
フィロデンドロンの花言葉は2つあり「華やかな美しさ」「壮大な美」です。
同じフォロデンドロンでも品種によって葉の形や色、さらに背丈も異なる姿は花言葉どおり個性豊かな魅力があります。
フィロデンドロンの花について
フィロデンドロンの花は、バラやマーガレットのような花びらがある品種とは違い、ミズバショウやサトイモのような白い花に似た花が咲きます。
仏炎苞(ぶつえんぽう)と呼ばれるくるりと巻かれたなかに、円柱状の花(花序:かじょ)があります。
鉢植えで育てる場合は、花を咲かせるまでに時間がかかるため、根気強く育てることが大切です。
また、品種によっては赤や黄色の仏炎苞もあります。
寿命はどのくらい?
フィロデンドロンの寿命は、10年程度といわれています。ただし、品種や生育環境など手入れ次第で寿命は左右されます。
室内環境で育てる場合でも、きちんと世話をすれば20年~40年ほど生きるフィロデンドロンもいます。
なお、熱帯で自生しているフィロデンドロンはスギなどの樹木と同様に100年生きるといわれているため、非常に逞しい植物といえるでしょう。
フィロデンドロンの特徴
フィロデンドロンの特徴について、耐陰性や葉の模様など3つ解説します。
耐陰性が強い
フィロデンドロンの特徴は、耐陰性が強いことです。フィロデンドロンの原産地である熱帯のジャングルには、周りに大きな木がたくさん繁っています。
丈が小さい植物ほど日差しが当たりにくい環境のため、フィロデンドロンは日光を求めて木根やつるをどんどん伸ばす性質があります。
一方、耐陰性にも強いフィロデンドロンではありますが、まったく日光の当たらない場所に置いてしまうと弱ってしまいます。
また、影の多い場所は間伸び(徒長)の原因となるため、日当たりのよい場所に移すことでより生長しやすくなるでしょう。
ただし、フィロデンドロンは直射日光には弱いため、太陽の光がほどよく当たる場所に置いてあげましょう。
ハート形に美しい模様の葉
フィロデンドロンの品種のなかには、ハート型の葉で美しい模様の葉があります。
白い斑点模様が入っているフィロデンドロンを見かけたことのある方もいるでしょう。
フィロデンドロンの斑点の色は、白以外にもピンクや黄色もあります。また、茎が褐色や黄色の品種もあります。
ほかにもフィロデンドロンの葉の色は、赤色や銀色に見えるものもありバリエーションが豊かです。
柄のないシンプルな品種、ツヤがある品種も生き生きとしていて非常に魅力的です。
品種が多く650種以上あるといわれている
フィロデンドロンの品種は多く、650種以上あるといわれています。
同じフィロデンドロンでも葉の種類も模様があるもの、葉の色が違うものなどさまざまあり、どの品種を買っても同じに見えないのが面白いところです。
フィロデンドロンの主な種類
650品種もあるフィロデンドロンですが、そのなかで人気のある品種を厳選して6つ紹介します。
バーキン
バーキンは、フィロデンドロンのなかでも人気の品種です。葉に白い斑点模様があるのが特徴で、お店でもよく見かけるはずです。
同じバーキンでも持ち主の育て方次第で白い斑点の模様が異なるため、個性の光る品種といえます。
バーキンの葉は、生長とともに白の斑点が少なくなり緑色がより深くなっていきます。
また、気根も生長すると発達し、ほかの樹木や岩などにまとわりつくこともあるほどです。
葉に斑点がある観葉植物でよく似ているのが、ポトスの葉です。バーキンとの違いを挙げると、ポトスのほうが葉は分厚くつるがからみます。
斑点の色もポトスは白のみですが、バーキンは白のほかにピンクや黄色があります。
セローム
セロームは、ギザギザした不揃いな切れ込みがある葉が特徴のフィロデンドロンです。
葉が海の生物であるヒトデのような形に似ていることから、「ヒトデカズラ」とも呼ばれています。
切れ込みがないバーキンなどの品種と比べると、一見同じフィロデンドロンの仲間には見えない品種です。
切れ込みがある大きな葉と、存在感のある太い幹がまっすぐ伸びている見た目から、お部屋のインテリアとしてもぴったりです。
葉が落ちたあとの幹には丸い形が残り、気根がよく伸びる性質から高くて2mになるものもあります。
クッカバラ
フィロデンドロンのクッカバラは、ワライカワセミが羽ばたく姿に似ていることから名付けられています。
別名「ザナドゥ」とも呼ばれており、葉の形はセロームと同じく葉に切れ込みがあります。
セロームとの違いは、葉の大きさです。セロームは葉が大きいですが、クッカバラの葉は小さいのが特徴です。
ギザギザした切れ込みは、クッカバラのほうが規則的、かつ控えめです。
また葉の分厚さは、セロームよりもクッカバラのほうが厚いため、これが2つの種類を見分けるポイントです。
クッカバラは、セロームとくらべると気根はあまり伸びません。
高さは1mほどのコンパクトな観葉植物のため、配置スペースに余裕がない場合はクッカバラを選ぶとよいでしょう。
クッカバラは、初めてフィロデンドロンを育てる方にもおすすめの品種です。
ロジョコンゴ
フィロデンドロンのロジョコンゴは葉っぱが大きく、分厚くて葉色が濃いのが特徴です。
茎が赤褐色で、緑色の葉の表面と裏面の赤褐色が独特な色合いが個性を引き立てます。
そのため、大人な印象が強く、お部屋のインテリアとしても個性のあるロジョコンゴは人気の品種です。
ビレッティア
フィロデンドロンのビレッティアは葉が大きく、細長いハート型で弓矢の矢尻にも似ているのが特徴です。
幹と葉をつなぐ葉柄(ようへい)がオレンジ色で、葉は濃く光沢がありおしゃれな見た目をしています。
園芸店ではあまり流通されていない品種のため、飾ると珍しがられるかもしれません。
インペリアルグリーン
フィロデンドロンのインペリアルグリーンは、葉は濃い緑色で光沢があり肉厚がしっかりしています。
生長とともに、下側から葉が増えていくロゼッタ型であるのが特徴です。
インテリアとして部屋に配置すると、下側のボリュームが観葉植物の美しさを引き立てます。
インペリアルグリーンの葉の色は緑だけでなく、赤や黄緑に近いイエローもあります。
フィロデンドロンの育て方とポイント
フィロデンドロンは放っておいても育つものと思いがちですが、気をつけないと枯れてしまうこともあります。
ここではフィロデンドロンの育て方とポイントについて置き場所や水やりなど、細かい部分を解説します。
置き場所
フィロデンドロンの置き場所は直射日光を避け、日当たりのよいところに配置しましょう。
とくに日差しが強い夏は、セロームなどの一部の品種は夕方の西日で葉焼けしやすいため、置き場所には気をつけます。
室内であれば、風通しのよい窓側がよいでしょう。
もともと熱帯の植物のため暑い場所にも耐えられますが、湿気が多いと葉が集まる品種は蒸れやすいため、窓を開けて風通しの調節が必要です。
水やり
フィロデンドロンを植えている土が乾いたら、水を与えましょう。とくにフィロデンドロンは春から秋がよく生長するため、水をより必要とします。
夏場と冬場では水やりの回数が異なります。
夏場
フィロデンドロンは熱帯地方の植物のため夏場は強いものの、生長期のため水やりは春や秋と同様に1日2回与えます。
夏は日照りが強く土が乾きやすいため、朝と夕方にわけて水やりをしてもよいでしょう。
冬場
冬場のフィロデンドロンには、春~秋とは異なり毎日水を与えなくてもよいでしょう。
冬場は生長が鈍い時期のため、2~3日に1度の水やりでも構いません。
ただし、室内で育てている場合は例外です。
常に室内温度が生長をしやすい環境下に置かれているため、朝と夕方など1日2回程度水やりをするとよいでしょう。
温度
フィロデンドロンが過ごしやすい温度は、25℃~28℃のあいだが適温です。
熱帯植物のため暑さには比較的強く、春から秋はとくに温度管理に気をつける必要はありません。
フィロデンドロンの耐寒温度10℃ほどまで耐えられます。
しかし、日本は冬場の気温が10℃を下回る地域が多いため、できるだけ室内に移動して育てましょう。
室内で育てる場合はエアコンなどの空調を使用するため、急激な温度変化や乾燥に注意します。
肥料
フィロデンドロンは肥料を与えないと、栄養が足りず葉の色が薄くなることもあります。
美しい色を保ち続けたい場合や葉の数を多くしたいときは、しっかり追肥をあたえましょう。
置き肥『プロミック観葉植物用』は、早く効く成分とゆっくり効く成分を含み、安定した肥料効果が約2ヵ月間持続します。 置くだけで葉の色を鮮やかに丈夫に育てます。
生育期には液体肥料『ハイポネックス原液』を1週間~10日に1回程度の頻度で与えることでより丈夫な株に生長します。
肥料を与える期間は、フィロデンドロンが生長しやすい春~秋までで構いません。
冬のフィロデンドロンはゆっくりと生長するため、肥料は控えましょう。
なお、鉢を植えかえる場合は必ず肥料(元肥)を与えます。元肥には肥料期間が約2年間持続する緩効性肥料『マグァンプK大粒 』を土に混ぜ込みます。
土の選び方
フィロデンドロンを育てるための土は、赤玉土や腐葉土などが適しているでしょう。
どちらも通気性と保水性に優れており、とくに腐葉土はふかふかの土壌にできます。
しかし、腐葉土は有機物が含まれているため、小バエが寄りつきやすい欠点があります。
室内で育てたり害虫が気になったりする場合は、無機質の土が多く含まれるものや、多肉植物土を選ぶとよいでしょう。
植えかえ
フィロデンドロンの植えかえ時期は、生育期のうち5月から8月のあいだが適切であるといわれています。
植えかえの回数は1年に1度、もしくは2年に1度であればちょうどよいでしょう。
植えかえの際は、植えかえたい株よりも余裕を持たせたい場合は2回り大きい鉢を選びます。
植えかえが面倒と思うかもしれませんが、今の株よりも大きすぎるサイズの鉢に入れて育てると、根よりも土の面積が広過ぎてしまいます。
土の面積が広過ぎると、水やりのときに土が乾きにくくなってしまいます。
とくに冬場は湿った土が根を冷やしてしてしまい根腐れの原因になります。
フィロデンドロンの剪定
フィロデンドロンも必要に応じて剪定します。
ここでは、フィロデンドロンの剪定時期・剪定方法と注意点について解説します。
剪定の時期
フィロデンドロンの剪定は、春から夏の時期にかけて行います。
5~8月がちょうどよいでしょう。春から夏の時期は、生育期のため剪定に適しています。
剪定の方法
弱々しくすぐに取れそうな枝葉であれば、幹から生える葉の根元を引っ張るとすぐに取れます。
幹に葉の根元が残ってしまうと気になりますが、残った根元は自然に取れて落ちるため、無理に抜く必要はありません。
まだ枯れていない葉を剪定する場合は、葉の付け根側をはさみで切るとよいでしょう。
伸び過ぎて鉢が収まらないほど葉が繁っている場合は、新芽が出ている部分から下部を剪定すれば挿し木用に使えます。
余分な葉を下の葉から順番に取り除き、気根をどれくらい土に埋めていくかを考えながら切り取るとよいでしょう。
つる性の品種はつるがどんどん伸びるため、伸ばし過ぎると栄養が足りなくなり枯れてしまいます。
伸びているつるは、できるだけ早めに剪定するようにしましょう。
剪定の注意点
剪定する際の注意点は、フィロデンドロンの幹に手が触れないことです。樹液には、肌がかぶれる成分が含まれているためです。
フィロデンドロンはサトイモの仲間のため、サトイモと同じ肌のかぶれの原因となるシュウ酸カルシウムが含まれています。
普段の生活でも肌が弱い方は、予防策として手袋などの対策をおすすめします。
フィロデンドロンの挿し木での増やし方
フィロデンドロンは、挿し木でも増やせます。 春~秋のあいだで、気温の高い日に挿し木をするのが理想です。
具体的な時期は、5~8月がおすすめです。気温が15度以上続く日が長いほど、挿し木が成功しやすいです。
生育期に行う挿し木は早く根が出やすいですが、冬場は生育期ではないため挿し木をしても失敗しやすいでしょう。
フィロデンドロンの挿し木のやり方は簡単です。
茎の部分を2節以上残してはさみで切り、余分な下葉を取り除き、葉を1枚もしくは2枚程度にします。節の近くから根が出たあとは、茎を水に挿します。
茎に水が十分浸かるくらいの量を入れますが、挿し木の場合は毎日水を替える必要はなく、水温がぬるく感じた場合に水を替える程度でも構いません。
フィロデンドロンの根が出てきたら、鉢替えと同じように鉢底ネットと鉢底石を用意して土に植えましょう。
つる性のフィロデンドロンの品種でも挿し木が可能で、つるを2節分~4節分残すようにはさみで切り、下葉を取り除き上側の葉を2枚ほど残して水に挿します。
土で挿し木も可能
フィロデンドロンは、水だけでなく土の挿し木も可能です。挿し木用の土に穴を開けて、茎を傷つけないように挿し木をします。
挿し木用の土は無菌で清潔な土が適しており、水はけがよく栄養分を含まないものがポイントです。
挿し木専用の土は、市販で販売されているものを使用するとよいでしょう。
挿し木の注意点
フィロデンドロンを挿し木する場合の注意点としては、錆びたはさみは細胞が傷つきやすく初根の妨げになるおそれがあることです。できるだけ清潔で、新しいはさみを使いましょう。
また、挿し木には葉を多く残さないようにします。
「葉を多く取ると挿し木が上手くいかないのでは?」と不安になるかもしれませんが、挿し木して根が十分に出るまでは水分をたくさん吸収できずに、葉から水分を放出してしまいます。
葉が多ければ多いほど、水分が逃げてうまく挿し木ができない恐れがあるため注意が必要です。
新規で株を選ぶ場合
フィロデンドロンは挿し木で増やせますが、挿し木をする時間もなかったり挿し木が面倒だったりする場合は、新たに購入してもよいでしょう。
新規でフィロデンドロンの株を選ぶポイントは、葉数が多く、根の軸がしっかりしていることです。
植えつけは、植えかえと同様にひと回りまたはふた回り大きな鉢を用意し、根は太い部分を優先に軽くほぐして植えます。
気温が20℃くらいの春~秋に植えつけをしますが、室内で空調が20℃を保てる場合は冬場に植えつけをしても問題ありません。
フィロデンドロンが枯れてしまう原因
もともと熱帯で自生している植物のため丈夫で、だれでも育てやすいとされているフィロデンドロンですが、時には大切に育てていても枯れてしまうことがあります。
フィロデンドロンはが枯れてしまう原因については、病気によるものや害虫によるものもあります。
病気によるもの
フィロデンドロンが病気によって枯れてしまう原因は2つあります。
軟腐病
フィロデンドロンの葉の一部が、黒く枯れて溶けてしまった状態を軟腐病といいます。フィロデンドロンの葉の傷口から入り込んで発生する病気です。
葉腐病
葉腐病とは、フィロデンドロンの葉の至るところに水浸状の赤い斑点(病斑)が発生する病気で、土の中にある菌糸をとおして感染する病気です。
雨量が多い日のあとに発生しやすいといわれています。
害虫によるもの
フィロデンドロンは、害虫により病気を引き起こすことがあります。
ハダニやカイガラムシ、アブラムシ、ナメクジなどは、フィロデンドロンによくつきやすい害虫です。
ナメクジは葉が好物のため、放っておくと美しい葉が台無しになってしまいます。
また、カイガラムシは黒カビが発生する「すす病」と呼ばれる病気の原因になりやすいです。
年間を通じて見かける害虫のため、見つけたらすぐに対処する必要があります。
対処法
もし害虫を見つけたら、早急に駆除しましょう。
フィロデンドロンの手入れの際に縮れていたり葉が変色していたりと異常な葉を見つけたら、速やかに取り除きましょう。
早く対処することで、フィロデンドロンが枯れてしまうリスクを回避できるでしょう。
まとめ
フィロデンドロンは人気の観葉植物で、お部屋のインテリアのアクセントにもぴったりです。
葉や幹も品種により異なるため、育て方のポイントや特徴などを把握したうえで丁寧にお手入れを続けることで長く元気に育てられるでしょう。
ぜひこの機会に、フィロデンドロンをご自宅で育ててみてください。
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