落ち葉アート2020~柵山直之さんの世界
2019年、みなさんにご紹介して好評を得た落ち葉アートです。2020年、新型コロナウイルス感染拡大が止まらない冬ですが、落ち葉アートの第一人者、柵山直之さんのアート活動は続いています。以前にもまして、見るものを驚かせる、また和ませる作品を創造しています。落ち葉が単なる邪魔ものではないということが分かっていただけるのではないでしょうか。
2020年の作品の紹介と、落ち葉アートについて柵山さんに話をお聞きしました。
――今年はどんな落ち葉アートにしようと思いましたか
以前から、落ち葉で地模様を描いて、ヨーロッパの刺繍花壇のような風景を作りたいと思っていました。ガーデンデザイナーの僕にとって最高に楽しく贅沢な作業です。ただ、なかなかそういう場所とタイミングに簡単には巡り合えないのですが。あとは、基本的に、その場所で感じるままに作品のデザインを考えます。そこで考えるという行為が重要だと思っています。
――新型コロナウイルス感染拡大の最中、どういった点に注意して活動されましたか。
外部での活動ですので影響は少ないのですが、マスクは着用して作業しました。こんな時だからこそ、人の気持ちを和ますようなことができたらいいなという気持ちはありました。それにしても、落ち葉を掃いていると、マスクの落とし物がたくさんあることに気づきましたね。
――落ち葉アートは周りのみなさんにどんな影響を与えていると思いますか
通り過ぎるすべての人が反応するわけではないのですが、一部の喜んでくれる方のリアクションが、すごいんです(笑)。興奮というか、共感の幸せですね。見ず知らずの人と分かり合えるその瞬間がたまりません。落ち葉アートは、風が吹いたら消えてしまう、というイメージがすぐに浮かぶわけですから、その作品に巡り会えた偶然というものを噛みしめてくれる方も多いです。
――これからの落ち葉アートの活動はどのようになっていけばいいですか
落ち葉アートは、秋の美しさを表現し楽しむ行為です。さまざまな表現手法があります。ぜひ、落ち葉をモチーフにしたアーティスト達と落ち葉イベントをしてみたいですね(笑)。そして、僕のように街なかで作ってみたい!という若者が現れて欲しいです。技法を伝授したいし、一緒に大作を作ってみたいです。秋になったら、街や公園に落ち葉のアートが出現するという,そんな遊び心ある街が日本中にあったら、とても素敵だと思いませんか! 私は、木々が邪魔者扱いされることが、本当に悲しいと思っています。日々、安らぎや木陰を提供していた木々が、落ち葉の時期になると一気に悪者になり、伐採される姿を何度も見てきました。路上に落ちた葉が、多くの人にとってゴミでなく、宝の山に見えたら、世の中が変わる気がします。私にとって、落ち葉は宝の山ですから。
―ご自身で今回気に入った作品は
ケヤキの大木の下に作った音符の中で子どもが遊んでくれた風景が印象に残っています。ファンタジーのような世界を日常空間に表現でき、子どもたちに味わってもらうことができたことがうれしかったですね。そして、これがコストゼロできるってことが、落ち葉アートのいいところ! あと、クリスマスの夜に公園で作ったツリーも思い出深いですね(笑)。今年で小学生を卒業する娘との共作も思い出です(涙)です。あー、今年の秋が本当に待ち遠しいです!
落ち葉アート、単に落ち葉を掃くことで作り上げ、わずかな時間ではかなく消えていくアートです。しかし、そこに季節感を大切にして、植物のあらゆる時期、状態を知りそれを楽しむ、植物への深い愛が注がれていることに気づきます。私は特に、お子さんと楽しむとよいのでは、と今回あらためて感じました。
落ち葉アート、晩秋から初冬のわずかな期間しか取り組めない特別なアートです。そして画像でしか残せない作品です。また、来年も楽しみにしたいと思います。柵山さん、ありがとうございました。
柵山直之(さくやま なおゆき)
(有)メイガーデンズ代表 、ガーデンデザイナー、1級造園施工管理技士。昭和46年生、長野県松本市出身。大学卒業後、大手生花店の事業部で6年半勤務後、2000年に独立。現在、三重県の御在所岳の麓でガーデンを作り、そこで暮らしながら、主に東海地区で庭作りの業務を行う。造園業務の傍ら、植物のある暮らしを広げるための活動としてさまざまな取り組みも展開している。定期ガーデンイベント「森のピクニックガーデン」(ノリタケの森)、「星が丘ポタジェ」(星が丘テラス)を主催。ノックノックス(東京)という劇団の一員でもあり、生の植物による舞台美術を担当。
naoyuki-sakuyama(@maygardens.sakuyama) • Instagram写真と動画
過去の落ち葉アートの記事→こちら
取材・撮影 出澤清明
園芸雑誌の元編集長。植物自由人、園芸普及家。長年関わってきた園芸や花の業界、植物の世界を、より多くの人に知って楽しんでもらいたいと思い、さまざまなイベントや花のあるところを訪れて、WEBサイトやSNSで発信している。
記事カテゴリから探す
Garden Tourから探す
いま話題のキーワード