アサリ(浅利)

2024.02.26

旬: 3月~4月、9月~10月
主産地:愛知県、静岡県、三重県

アサリ(浅利)を選ぶ

薄い貝より厚みのある貝を選びましょう

殻は丸くふくらみがある大きなもの、殻を固く閉じているものが良いです。殻が多少開いていても、軽く触って殻がぴたっと閉じるなどの反応を見てみましょう。塩水にひたすと勢い良く水を噴射するもの、水管を出すものは新鮮な証拠です。水管にさわると引っ込むなど反応がよいものはさらに良いです。水管が出て垂れたままのものや、塩水にひたしても口を開かないものは取り除きましょう。

アサリの味と模様に関係がある?!

一般的には、アサリの貝の模様は、味には関係がないといわれています。岸に近いところにいるアサリは貝殻が丸っこく黒っぽい色をしていますが、 沖合にいるアサリは貝殻が扁平で横に広がり、薄い茶褐色の貝です。また沖合は水が岸に比べきれいなので、アサリの味も海の香りが強く身が柔らかいので人気です。逆に岸に近い砂泥地にいるアサリは味が濃いといわれています。

昔はザクザクと獲れたアサリも最近は・・・

アサリの名前の由来は「漁(あさ)る」です。干潟を掘ればザクザク、容易にとれる貝だったようです。そんなアサリですが、最近は各地でアサリの漁獲高が減少しており、市場の半分近くは中国・韓国からの輸入品が占めているようです。漁獲高減少の理由は産地により異なるようですが、地球温暖化による海水温の上昇も原因の一つといわれています。

アサリ(浅利)のおいしい食べ方

砂抜きが終わったらアサリの持つうま味成分コハク酸をさらに引き出す

砂抜きと表示されているアサリでも再度塩水につけて砂抜きしたほうが味も良くなります。まずはアサリをバットに入れ、塩分の濃度約 3%塩水に浸します。海にいる状態に近づけるため、アサリが重ならないように広げます。塩水の量はアサリの頭がギリギリ出るくらいの高さです。深いボールなどを使う場合は、中にザルを入れ、その上にアサリを置きましょう。そうすることで一度吐いた砂を吸わないようにします。アサリは直射日光が苦手ですので、新聞紙をかぶせるなどして常温の暗い所に置きます。冷蔵庫など温度が低すぎる場所では砂を吐きません。砂抜き表示のアサリならば1~2時間程度、潮干狩りで取ってきたアサリならば一晩で砂が抜けます。あまり長時間かけると酸素不足で死ぬこともありますので注意しましょう。

アサリの砂抜きが終わったら、次はアサリの旨みを引き出します。
アサリには、旨みエキスであるコハク酸がたっぷり閉じ込められています。そのコハク酸の引き出し方は、20度前後の室温で約3時間、濡らして絞ったキッチンタオルをアサリにかけて乾燥を予防しながら、待ちます。ただそれだけです。そうすることで、アサリのコハク酸が増え美味しい状態でアサリを食べることができます。

加熱した時に出る汁に、旨み成分と栄養がたっぷり含まれています。水から徐々に温めることで、旨味が汁によく出ますよ。

江戸時代から深川漁師の船上料理として親しまれてきた「深川めし」。深川めしにもいろいろな種類があるようです。

ボンゴレ・ビアンコは南イタリア発祥の「アサリ」を使用したパスタです。ボンゴレは「貝」、ビアンコは「白」という意味のようです。

アサリご飯は、アサリの煮汁をそのまま使ってご飯を炊くので、お米の一粒一粒にアサリの旨みと香りがしみ込みます。

アサリ(浅利)の豆知識

三河湾のアサリの美味しさ

アサリは海の中にいます。海にいるときにはプランクトンを食べていますが、潮が引くとエサを食べることができなくなるので、体内に蓄積していたグリコーゲンを消費します。グリコーゲンを消費する時に出来るのが、アサリの旨み成分であるコハク酸です。上述のアサリ(浅利)のおいしい食べ方のコーナーでも記載していますが、アサリを入れているバットから海水を抜きストレスをかけます。そうすることでアサリはコハク酸を体内に溜め込みます。春の三河湾では、それと同じことが起こっているのです。一日およそ4時間も干潟が現れるのです。三河湾のアサリが美味しい理由です。三河湾産のアサリは、殻が薄く肉厚でふっくらとした身が特徴で幻の鬼アサリ等の産地で知られている六条潟は日本一のアサリの産地です。5月から10 月の禁漁期間を設けてアサリ資源の保護にも取り組んでいます。三河湾だけではありません。静岡県・浜名湖、千葉県・富津干潟、盤州干潟、船橋、熊本県・八代海、長崎県・島原湾、有明海などでもアサリ資源の保護にも取り組んでいます。

アサリの代表的なご当地料理、東京編:深川めし

深川めしってどんな料理?

「深川めし」は当時、今でいうところのファストフードのようなものだった

深川めしは、江戸の雰囲気を今に感じることの出来る料理の一つで、ざっくりと切ったネギとアサリ、ハマグリ、アオヤギなどの貝類を味噌で煮込んで、どんぶりご飯にのせて食べる、「あさりご飯」のことです。炊き込みタイプの深川めしや、汁掛けタイプの深川めしがあります。深川(現在の東京都江東区)で生まれたことから、「深川めし」と名付けられました。江戸時代、現在の東京都江東区の深川エリアは深川浦と呼ばれ、潮が引けば砂が露出する砂州が広がり、江戸前寿司に使う魚介や海苔を採る漁師が多く住み、漁師の町として栄えていました。深川名産としてアサリ、ハマグリ、カキ、貝柱(アオヤギ)がよく採れていたそうです。深川の漁師たちはアサリを使って、仕事の合間に食べる賄い飯であった「ぶっかけめし」を作っていたそうです。いわゆる「漁師めし」が現在の深川めしのルーツとされています。

炊き込みタイプの深川めしは明治以降にできたものだそうで、当時深川近くの木場あたりに住んでいた、大工さんたちがアサリを炊きこんだご飯を握り飯にして弁当に使ったことが炊き込みタイプの始まりだと言われています。その後「ぶっかけめし」は屋台や一膳飯屋でも出されるようになりました。調理に時間がかからず、それでいて栄養価が高いので、彼らにとって日常食だったようです。旧暦3月3日には深川洲崎で潮干狩りがスタートしたと「東都三十六景」にはあり、アサリ漁は潮干狩りで庶民の娯楽として楽しまれ、家庭では、アサリを入れた「炊き込みご飯」が広く普及しました。新鮮なアサリが安価で手に入る深川ならでは家庭料理でした。深川めしは、「忠七めし(埼玉)」「さよりめし(岐阜)」「かやくめし(大阪)」「うずめめし(島根)」と並ぶ 日本五大銘飯の一つに数えられている東京の郷土料理です。

深川めし(ぶっかけタイプ)に必要な材料は?(4人分)

・炊き立てのご飯 どんぶり4杯分
・アサリ(むき身)300g
・白味噌30g ※味噌は好みに合わせて割合を変更
・赤味噌160g
・砂糖40g
・酒大さじ2
・みりん大さじ2~3
・水2~3カップ
・長ネギ2本 
・きざみのり適宜

深川めし(ぶっかけタイプ)の作り方

①白味噌、赤味噌、砂糖、酒、みりんを混ぜ合わせておく。
②水を入れた鍋を火にかけ、沸騰したら、①を溶き入れる。
③味噌が十分溶けたら、アサリを加える。
④食べやすい大きさにざく切りした長ネギを加える。
⑤長ネギが透きとおるくらいまで、火が通ったら、火を止め、どんぶりに炊き立てご飯を入れ、汁ごと具をかけ、きざみのりを乗せれば出来上がり。

深川めし、発祥の由来とは?

漁師が漁の合間に食べた『ぶっかけめし』が深川めしのはじまり

スカイツリーの南側、清澄白河駅からほど近い「深川」。江戸時代、この辺りは江戸の人口増加とともに、漁師の町として発展したところです。特にアサリなど貝がよく採れていました。忙しい漁の合間に手早く美味しく、漁師たちがご飯の上にアサリの味噌汁をぶっかけて食べていたことが「深川めし」の発祥といわれています。

深川めしはご当地ではどんな時に食べられる?

かつて深川では大量のアサリが採れていたので、とても安価で買うことが出来、深川めし江戸庶民向けの格好の食べものでした。現在ではアサリは年中流通していますが、アサリの旬は春と秋。旬には一般家庭でも頻繁に食べられていたそうです。現在では深川めしの専門店、割烹、和食店のほかにも、そば、寿司、天ぷら、中華、洋食、居酒屋などそれぞれの特徴を活かした創意工夫の「オリジナル深川めし」を提供するようになっています。

ぶっかけタイプは、アサリ本来の濃厚な旨みが味噌とともに溶け込んだ一品。炊き込みタイプは、アサリをダシとともに炊き込んでいるので、香りがすばらしく、ぶっかけタイプの味噌味とは対照的に、上品な薄めの味付けです。

深川めしの栄養価・効能は?

深川めしに欠かすことのできないアサリには、肝機能を高め代謝を促進するタウリンやグリコーゲンがたっぷりと含まれています。また必須アミノ酸を多く含み、ビタミンA、B、B2、B6、B12、C、D、H、葉酸、コリンなどのビタミン群も豊富で、その上、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄分、ヨード、亜鉛、銅、コバルトといった、人間が正常体で健康に過ごすために不可欠必須のミネラル群も非常に多く含まれています。風邪の時にはネギを首に巻くと治るといわれているように、ネギや玉ねぎには粘膜を刺激する独特の匂いのアリシンが含まれます。アリシンは、疲労回復や殺菌効果、血行促進作用、免疫力を高める、胃腸の働きを増進させる、といった様々な効能があるといわれています。実際に風邪の時にはネギを首に巻くと、揮発成分であるアリシンが口や鼻からのどに入り吸収されることで風邪の症状が緩和されます。アサリとネギの成分で江戸の人々は元気だったのです。

ポイントは「江戸味噌」

第二次世界大戦中には賛沢品という理由で醸造が禁止された味噌

深川丼に使われている味噌は、江戸の昔から伝わる「江戸味噌」といわれているものです。米麹をつかった米味噌で、仙台味噌などと同じ赤みを帯びた褐色をしています。江戸味噌は光沢のある茶褐色の外見からは想像もつかないほど甘みを醸し出します。たっぷりの糀を使った甘みと、少ない塩分を特徴とした江戸味噌は、将軍家ご出身地の三河「八丁味噌」の旨みと、京都「白味噌」の上品さを兼ね備えた味噌です。その独特の味は、深川丼だけでなくどじょう鍋などの江戸下町の味には欠かせないものでした。江戸の人たちがこの味噌を愛してやまない理由は美味しさだけではありません。『粋』が売りの江戸の人は、江戸前の新鮮な魚が手に入りますので、魚の中まで完全に火を通してしまうことを嫌います。したがって、江戸料理では、煮詰めて味を染み込ますのではなく、周りのタレの味を濃くします。

しかし一般的な普通の味噌では、味を濃くする為に味噌の量を増やせば、塩辛くなりますが、江戸味噌は塩分が通常の半分以下ですので、それが可能だったのです。江戸料理の濃厚な味付けには江戸味噌は欠かすことができない存在でした。そんな味噌ですが、江戸味噌は通常の倍以上の米糀を使い、米をたくさん使うことから、第二次世界大戦中には賛沢品という理由で醸造が禁止されました。戦後醸造禁止が解禁されましたが、商圏が広く大量生産に向く保存性の高い味噌に取って替わられ、醸造が一時中断していましたが、最近江戸味噌が復刻されています。

アサリ漁の方法は?

アサリ漁の方法は大きく分けると3つの方法があります。

小型機船底びき網漁は、水深3mから5m程度の海底に沈めた「貝けた」と呼ばれる鉄製の枠でできた大きな漁具を船の力で動かしてアサリを獲る漁法です。

腰マンガ漁は、たくさんの爪がついたマンガ(万牙)と呼ばれる漁具を体につなぎ、腰の力で動かして海底の砂を掘り起こしながらアサリを採る漁法です。

手掘り漁は、岩場ではマンガが使えないため、潮が引くのを待って、潮干狩りのように「手かぎ」を使って手で掘ります。

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