明石の魚 (兵庫県)

2020.12.19

明石(あかし)は、兵庫県南部の地名です。
『源氏物語』や『日本書紀』にも登場する古い地名で、語源は明石川の西にある赤石(あかいし)からとも、明るいという意味の「明し」ともいわれています。
瀬戸内海に面し東西に約16kmの海岸線を有し、特にタイ、タコなどが有名です。
コロナが落ち着いたらまた行こうと思う街です。

明石の魚

漁場である明石海峡は潮の流れが激しいので身の引き締まった魚が育つ漁場です。
そして明石海峡は魚のエサとなるプランクトンやイカナゴ、エビ、カニなどが多く集まる絶好のエサ場ですので、自然と明石の魚は良い味になります。
魚を獲った後、船上で活け〆や神経〆など魚に合わせた〆を行い、徹底した温度管理と空気管理で港に水揚げします。
また、「昼網」と呼ばれるセリ市により、朝に水揚げされた魚が昼には鮮魚店や料理店に届けられ、鮮度の高い魚介類が味わえるのです。
特に明石ノリ、明石ダコ、明石鯛、イカナゴ、アナゴが有名です。

魚の棚商店街「うおんたな」の店頭にならぶタコ

昼網のタイ

魚の棚商店街「うおんたな」

年末大売出しの様子

ノリ(海苔)

明石ノリの収穫量は、全国トップクラスです。
明石といえば「タイ」「タコ」が有名ですが、明石のノリは明石海峡の速い潮流と寒冬の季節風にもまれながら育つため、色が黒く、芳醇な香りと歯切れが良いのが特徴です。
漁業者のうち5割がノリ養殖漁業に従事し、漁業生産額のうち約7割を占めるほど、ノリ養殖は明石の基幹漁業なのです。

僕の家もノリは「鍵庄」さんの明石海苔を買っています。

タコ

明石と言えばタコという人もいるほど、全国的にも名高い明石ダコ。
底引き網による漁が中心ですが、「タコつぼ」を使った漁や一本釣りによる漁なども行われています。
明石海峡の潮流に鍛えられ、豊富な餌を食べて育つ明石ダコは身が引き締まり、足が太く短く、陸でも立って歩くほど力強いのが特徴です。
タコが成長して食べ頃になるのが5月~7月。特に甘みが強くなり、歯応えがありつつもほどよく柔らかい食感が楽しめます。
また、夏の漁師は麦わら帽子姿で漁に出るので、この時期のタコは「麦わらダコ」とも呼ばれ、非常に美味とされています。

タイ

明石と言えば、明石鯛。全国的には春の「桜鯛」が有名ですが、春の「桜鯛」に対して秋の鯛を明石では「紅葉鯛(もみじだい)」と呼びます。
流れの速い明石海峡の潮流に鍛えられた身は締まり、9月から11月にかけ脂ののった明石の真鯛は上質な脂を蓄え、甘みと旨味を持ち合わせた明石鯛のおいしさを味わえます。
明石の鯛が美味しいのは、素材だけではなく、漁協の鮮度保持技術の高さにも理由があります。
獲った鯛はすぐに出荷するのではなく、一度暗い水槽で一晩活け超し、興奮状態にある鯛を落ち着かせます。
出荷時には神経〆を行いベストな状態で出荷されます。

イカナゴ

明石のイカナゴといえば、甘辛く炊きしめて保存食の「くぎ煮」が有名ですが、全国区の人気となったのは1995年の阪神淡路大震災がきっかけだといわれています。
被災した明石・神戸の人たちがお世話になったお礼として、くぎ煮を全国各地の知人へと送ったことが、人気へと繋がっていきました。
イカナゴの新子漁解禁とともに、魚屋やスーパーに、獲れたての新子を求めた消費者が列を作る光景や、各家庭から漂うくぎ煮を炊く香りは、明石の春の風物詩です。
家庭でくぎ煮を作る文化が定着するとともに、既成品のくぎ煮も需要が広がり、いろんなお店でそれぞれの個性あるくぎ煮が販売されています。
ここ数年はイカナゴの不漁でなかなか手に入りにくくなっていますが、春になればまた期待したいと思います。

アナゴ

明石のマアナゴの特徴は、他の地域のものよりも太短くて濃い茶色をしていると言われています。
明石では300g以上の大きなアナゴを「伝助アナゴ」と呼び区別して扱います。
明石のマアナゴの旬は7月~9月。伝助アナゴの旬は11月~2月です。
伝助アナゴはハモのように骨切りしてから料理し、普通のアナゴのように、天ぷら、八幡巻きや煮アナゴなどで食べますが、明石ではしゃぶしゃぶにして食べます。
アナゴの身が鍋の中で花が開くのを待ってさっと引きあげます。脂が乗っているので濃厚な風味が楽しめます。

明石と言えば…

明石焼(玉子焼)

タコ焼きのルーツともいわれている明石を代表する郷土料理。
外見はタコ焼きに似ていますが、柔らかくて平べったい形で、ふわふわの生地の中に歯ごたえのあるタコが入った明石焼は、お出汁でいただくのが基本です。
卵をたっぷり使うので地元では昔から「玉子焼」と呼ばれています。市内には約70店舗の専門店があり、明石の食文化として定着しています。

明石でおいしい魚が獲れる理由

大阪湾と播磨灘を結ぶ明石海峡は、潮流の速さが最大で時速13 kmともなり、古来より「イヤニチ(いやな満ち潮)」といわれておりました。凄まじい潮を生む一因となっている場所は、JR明石駅と西明石駅の中間地点から南におよそ1kmあたり。およそ林崎海岸付近。さらにこの漁港沖合1kmから、西方2km先のJR西明石駅と山陽電鉄藤江駅の中間地点。この沖合5kmまでの特別な海の流れが「イヤニチ」と呼ばれています。
この辺りでは2万年前の太古の地殻変動で、「かばち」と呼ばれる急激に深くなった河川後がそのまま残っており、この激しい潮流が、地底に堆積した砂を絶えず巻き上げております。
巻き上げられた砂は、循環を繰り返し、ミネラル・タンパクを豊富に含んだ広大な砂地を形成しており、多くの魚が産卵場所、栄養を蓄える場所として集まってきます。
この砂地は、「鹿の瀬」と言われ、古来より豊かな漁業をもたらしてくれました。鹿の瀬はイカナゴやタイ、チヌ、スズキ、マダコなどの産卵や生息場所になっており、瀬戸内海随一の「魚の宝庫」=明石となっているのです。

明石大橋をバックに(2019年7月)

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