サクラマス(桜鱒)

2024.02.26

旬:3月~6月(本州)
  4月~7月(北海道)
主産地:北海道、岩手県、新潟県

サクラマス(桜鱒)を選ぶ

“渓流の女王”「ヤマメ」と鮭に似ている「サクラマス」は同じ種類の魚?!

川で生まれた稚魚は1年間、川で生活します。その後海へ降りるものと、そのまま川に残るものに分かれます。生まれた川で一生を過ごすものが「ヤマメ」となり、川から海に出て大きくなって、再び川に戻ってくるものが「サクラマス」になります。戻ってくる時期が桜の咲く頃、または身肉の色がサーモンピンクである桜色であることから、さらに産卵期の魚体の婚姻色が明るい桜色になることから「サクラマス(桜鱒)」と呼ばれるようになったといわれています。同じように「イワナ」が海へ降りると「アメマス」。「アマゴ」が海へ降りると「サツキマス」になります。

脂が乗っているのにあっさりとした味。

サクラマスは桜の咲く時期が美味しい旬の時期です。僕はムニエルにして食べました。見た目もサケに似ていますが、肉質は柔らかく、焼くとホロッとしており、ふんわりした食感です。脂も程よく乗っていますがくどくなく、サケよりも少し甘みと旨みが濃いように感じました。サクラマスを選ぶ時は、腹が厚く硬いものが、脂の乗っているものです。頭が小さく、体全体がずんぐりしているものを選ぶようにしましょう。切り身の場合は、身の色が赤色よりもオレンジ色(サーモンピンク)の方が脂の乗りがあり美味しいです。また身肉は加熱しても硬くなりにくいです。

幻の魚になってしまったサクラマス

サクラマスは現代においてはダムの建設などで漁獲量が減り、高級魚として取引されています。生まれて間もない稚魚の間、河川の上流にて生活していますが、夏に始まるアユの網漁から逃れ生活します。河川を下り、翌3月~4月、海の大海原に出て1年間の大回遊をします。豊富にある海のエサを食べ大きくなりますが、同時に自分がエサとして狙われる大きな魚から逃れ、人間の漁という強敵からも逃れ、生まれた河川へ戻ってきます。戻ってくることが出来るサクラマスは0.2%程度の選ばれしサクラマスなのです。まさに幻の魚なのです。

サクラマス(桜鱒)のおいしい食べ方

「ルイベ」で食べるのがおススメ

塩焼き、味噌漬け、ムニエル、煮つけなどシンプルな調理法も美味しい食べ方ですが、「ルイベ」で食べるのも美味しい食べ方です。「ルイベ」とは北海道に暮らすアイヌ民族の伝統的な食べ方で、一度凍らせることで寄生虫を死滅させ、水分が抜けることで独特の脂の臭いを感じにくくします。解凍するときは身肉に包丁がすっと通るくらいまで自然解凍して、半分凍った半シャーベット状のサクラマスを薄く切り、刺身として食べます。また、サクラマスのうろこは取りやすく骨も柔らかいですが、細かい骨が多くあるので食べるときには注意が必要です。

河川残留型(陸封型)のヤマメは幼魚期の暗青色の斑紋(パーマーク)が成熟しても残ります

成長してパーマークが取れると、体全体が銀色(スモルト化)になり、海水でも生きていくことが出来ます

サクラマスの遡上(そじょう)。頭部にある「磁気」と「匂い」を利用して母川回帰(ぼせんかいき)しているといわれています

「サクラマス」の名は、異性にアピールするために体の模様に出す婚姻色が明るい桜色をしているのが由来との説もあります

サクラマス(桜鱒)の豆知識

川に残るか?それとも海に降りるか?

川に留まるとヤマメ、海に降りるとサクラマスになりますが、何が理由で留まったり、降りたりするのでしょうか?まだその理由が解明された訳ではないですが、水温が上がったり、日照時間が長くなったりする環境変化によることが降海への要因になっているのではないかという説や、エサの量によることが要因ではないかとする説があります。分かっていることは、北海道など北に行くほど海に降りてサクラマスになる割合が高く、関東以南の温暖な地方では、川に留まりヤマメのままの割合が高いようです。生態系が豊かな海には、川とは比べものにならないほどエサが豊富にあります。多くのエサがある海ではどんどんエサを食べることが出来、体が大きくなります。しかし、川に比べ自分よりも大きな魚のエサになってしまう割合も高くなります。九州など暖かい地方の川には、北海道など寒い地方に比べエサが多いので、エサを求め海に降りるヤマメは少ないです。北海道では75%程度のヤマメがエサを求め海へ降りているようです。降海するのは、ほぼ全てのメスとオスの50%程度とのことです。なので、川に残ることが出来るのは強いオスといえます。そのことからヤマメがエサのなわばり争いをして、負けたほうが海に降りる、「なわばり争い」が要因とする説もあります。

サクラマス  富山県編:ます寿司

サクラマスの代表的なご当地料理、富山県編:ます寿司

ます寿司ってどんな料理?

駅や空港、サービスエリア、デパートの駅弁大会でおなじみ

ます寿司(鱒寿司)は富山県の郷土料理です。富山名物といえば、まず思い浮かぶのが「ます寿し」という方も多いのではないでしょうか。駅弁としても知られ、塩漬けで味付けしたサクラマスを用いて発酵させずに酢で味付けした押し寿司(早ずし)の一種です。「ます寿し」「ますの寿し」「鱒寿司」など、呼び方の違いはありますが、どれも同じものを指します。

ます寿司に必要な材料は?(4人分)

ます寿司容器
笹 9枚
酢飯480g 
酢づけ鱒 10切れ
寿司酢 (米1升に対し、米酢200cc、砂糖170g、塩40g) 

・米は通常よりやや水を少なくする。1合の米を炊くと320gほどになる。
・ますは冷凍の3枚おろしを使用してもよい。ますに粗塩を振り締めるため1時間置く。
・その後ボール等に酢を入れ塩を洗い落とす。甘酢に20~30分つける。
・笹は冷凍したものに熱湯をかけると色がきれいになる。

ます寿司の作り方

木製の曲物(わっぱ)の底に笹を敷き、塩漬けで味付けをしたサクラマスの切り身を並べて、そこに酢めしを押しながら詰め、笹を折り曲げて包み込み、重石をして作ります。

1、酢飯づくり
炊きたてのご飯にすし酢を手早く混ぜます。

2、ますの酢締め
下ごしらえしたますを、酢で締めます。水分を出し、旨みを立たせます。

3、笹の上に酢飯を詰める
熊笹の葉を容器に敷き詰めます。熊笹のもつ香りと防腐・殺菌作用を利用します。

4、ますを敷き詰める
酢飯の余熱がとれた後、ますを隙間なく敷き詰めていきます。

5、押し
ますの旨味と笹の香りがなじむまで、しっかりと重石で押しをします。

ます寿司、発祥の由来とは?

食通の吉宗をうならせた「鮎寿司」が「ます寿司」に

ます寿司の歴史は、江戸時代半ば、富山藩士で料理人でもあった吉村新八が三代目藩主 前田利興に「鮎寿司」を献上したのが始まりといわれています。これは旨いと気に入られた藩主が、富山の名物として八代将軍徳川吉宗に献上したところ、賞賛されたそうです。吉村新八が作った「鮎寿司」のレシピも残されており、当時は神通川で獲れた鮎を20日ほど塩漬けし、酒で洗って塩出ししてから米飯と塩に12日間ほど漬け込みます。そして、提供する前日に取り出して新しいご飯に塩と酒で味付けして鮎と一緒に出していたそうです。当時は鮎の寿司でしたが後には鱒(ます)の寿司も作られる様になり、吉宗への献上以降、「ます寿司」は富山藩の献上品となったといわれています。それは富山市内にある鵜坂神社に、神通川で獲れた一番鱒(ます)を塩漬けにして春の祭礼に供えていたものが、江戸時代に現在の様な「ます寿司」へと変化していったとも考えられているようです。

ます寿司がどうして全国区で有名になったのか?

「ます寿司」が富山県を代表する特産品として全国的な知名度を得たのは、駅弁として販売されていたことが大きいといわれています。明治時代、近代化が急速に進み鉄道網も整備される中、富山駅構内で旅館経営をしていた「源(みなもと)」が駅弁「ますのすし」の販売を始めました。
その後、高度成長や駅弁ブームなどの恩恵も受けて徐々に人気を博したます寿司は、全国的に知られる駅弁となり、現在まで歴史と伝統のある弁当として親しまれています。
2007年、農林水産省により農山漁村の郷土料理百選に、富山県の郷土料理として「ぶり大根」と共に選ばれました。

ます寿司の栄養価・効能は?

生のサクラマスにはDHA(ドコサへキサエン酸)、EPA(エイコサぺンタエン酸)が含まれており、 焼くことでそれぞれDHAとEPAが増加します。血液をサラサラにし高血圧の予防や脳内の血管を健康に保つのに役立ち、良質なタンパク質やアスタキサンチン、レチノール(ビタミンAの一種)も含む優れた栄養のある魚です。
その他、サクラマスに含まれる栄養素です。
・糖質の代謝を助けエネルギーをつくり出し疲労回復に役立つビタミンB1(世界で一番最初に発見されたビタミン)
・細胞の新陳代謝を促進し、皮ふや粘膜の機能維持や成長に役立つビタミンB2(美容には欠かせない栄養素)
・皮ふや粘膜の健康維持をサポートしたり、脳神経を正常に働かせるのに役立つナイアシン(ビタミンB3)やビタミンB6(皮ふ炎を予防することから発見されたビタミン)
・動脈硬化を予防しストレスをやわらげる働きのあるパントテン酸(別の名をビタミンB5)
・貧血を予防し、細胞の生まれ変わりや、新しい赤血球をつくり出すために欠かせないビタミンである葉酸やビタミンB12(別名コバラミン)
・抗酸化ビタミンであるビタミンCやビタミンE

2018年1月12日「広辞苑」の改訂版(第7版)に、「ますずし」が新たに収録

ます寿司は、お店によってお刺身に近いタイプから、よく締められたタイプまで、味付けや、鱒の厚みや並べ方、酢飯に至るまでバリエーション豊富です。元来ます寿司に使う鱒は、神通川に遡上してきたサクラマスを使用していましたが、現在では神通川で獲れる天然のサクラマスが少なくなったことと、需要が増えたことから外国産の鱒類や北海道産を使用されるます寿司店もあり、神通川で獲れる天然のサクラマスを原料にしようするます寿司店は少なくなりました。古くから続く製法や味を守る伝統の老舗店や、研究を重ね、進化を続ける店など富山県内にはます寿司を製造する企業が40社以上あります。代表的なものとしては、駅弁などでもおなじみの「ますのすし本舗 源」、さっぱりとした酸味で天然の桜鱒を使った「特選」シリーズが有名な「青山総本舗」、分厚い生に近いタイプのますを使用した「扇一 ます寿し本舗」などがあります。食べ比べをするうちに、自分の好みのます寿司に出会えますよ。

サクラマスの漁獲方法は?

定置網漁

定置網や刺し網や一本釣りで漁獲します。
定置網漁は魚の習性を利用した伝統的な漁法です。定置網漁は、文字通り定まった漁場に巨大な網を設置し、回遊する魚群を誘いこむことで漁獲します。網に入った魚は数十人の漁師たちが力を合わせて網起こしを行い水揚げします。定置網は沿岸付近で行うため、獲った魚は新鮮な状態で市場に届けられます。

刺し網漁

刺し網は帯状の網を魚が通過する進路を遮るように張って使用し、魚を網目に刺したりからませて獲る漁法です。サクラマスは網を固定しないで海の流れや風に任せて網を漂流させる「流し刺し網」で漁獲します。網は広い範囲を移動するため、沖合の漁場で使用されます。

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