アユ (鮎)

2024.02.28

旬:6月~7月 
主産地:栃木県、茨城県、和歌山県(養殖)

アユ (鮎)を選ぶ

市場に出ているアユの8割は養殖物

市場に流通するアユは養殖物が多いです。天然アユは、四万十川、長良川、久慈川、那珂川産のものが有名です。養殖アユは、近年餌や養殖池を改良し、「半天然」、「天然仕上げ」、「天然仕立て」等の名でより天然アユに近づくようなアユを育てています。アユを選ぶときは腹に張りがあり硬く感じられそうなアユを選びます。アユはとても繊細な魚ですので、素手で触ってしまうと体温で手の後が付いてしまいますので、直接触らないようにしましょう。また、体色がはっきりとしているものがおススメです。骨ごと食べる場合、まだ骨が柔らかい夏のはじめの頃までの若アユにしましょう。

アユは香る魚

獲れる川によってアユの香りや味が違うといわれています。一般的には水質が良い河川で獲れる稚魚や若アユはスイカのようないい香りがし、そうでない場合はキュウリのような香りと言われており、漢字表記では「香魚」と書きます。養殖アユはこの香りがほとんどなかったり、あってもごくわずかしか感じられないようです。現在の「鮎」の字が当てられている由来は諸説ありますが、神功皇后がアユを釣って戦いを占ったことから「占魚」と漢字を当てた説。 アユは縄張りを持つ魚なので、「占拠」「独占」の意味で「占」が使われた説があります。また一年で一生を終えることに由来して、「年魚」とも書きます。

天然アユと養殖アユの違いって?

川の流れが激しい場所ほど美味しいコケが育ちやすく、天然のアユはその水の底に生えたコケを食べます。急流で育った美味しいコケを食べている天然のアユは急流で激しく運動をしているので、ほどよく脂肪のついた美味しいアユになります。養殖のアユの脂肪量は天然アユの約3倍もあり脂っぽいです。養殖アユは細かな粒状の餌を与えられ食べますが、天然アユはコケを大きく口をあけて削ぎとって食べるので口の周りが引き締まり、養殖アユに比べ口元がより鋭く尖っています。天然アユは尾びれ、背びれが大きくシャープに尖っていますが、養殖アユは体格は立派ですが、ヒレは小さいのが特徴です。

アユ (鮎)のおいしい食べ方

かぶりつく?それとも上手に箸を使いますか?

6月1日は全国的に、アユ釣りの解禁日となっている地域が多い日で、「アユの日」という記念日です。アユの塩焼きはアユ本来の旨味を引き出し、アユの特徴である香りを楽しむことができます。「おどり鮎」というアユが踊っているかのように曲げた状態で串に刺しています。その塩焼きをきれいに食べる方法があるのを知っていますか?それは「アユの骨抜き」という方法です。まず、アユから串をはずします。次にアユの全体を箸でぐっぐっと上や横から押さえて身をほぐします。骨がある場所をイメージしながらしっかりと押さえていきましょう。次に尾を、折って取り、尾びれ、腹びれなどもはずします。頭の後ろの皮を切り離し、頭を持って、ねじるように骨ごと引っ張ります。すると骨がきれいに取れて、身だけ残りますので、完成です。身だけになったアユは箸で簡単に食べる事ができ、蓼酢などに浸しやすくなります。

琵琶湖に生息するアユは普通のアユのように海には下らず、琵琶湖を海の代わりとして利用しています。琵琶湖では稚魚を氷魚(ひお、ひうお)、成魚を小アユ(こあゆ)と呼びます。

炭火の塩焼きで食べるのが、アユの最も美味しい食べ方だといわれています。魚の水分をとばしてじっくり焼きあげますので1~2時間位の時間を要します。

6月「旬の走り」、7月8月が「旬の盛り」、9月下旬は「旬の名残り」で子持ちアユ、落ちアユの時期です。それぞれの時期のアユを食べ比べしてもいいですね。

日吉八王子神社には、江戸時代に浅川の鮎を徳川幕府に献上していたなごりから、明治32年に「あゆ塚」が建立され、アユの慰霊をしています。

アユ (鮎)の豆知識

アユは英語でも「ayu」。シーボルトによって、初めて世界に紹介。

アユはなんといっても塩焼きが美味しいです。他には、生のまま輪切りにした「せごし」や干物、天ぷら、内臓を塩辛にした「うるか」も美味しいです。アユは住む川によって味や香りが異なるのですが、吉野川(徳島)、四万十川(高知)、長良川(岐阜)、日田川(大分)、球磨川(熊本)などのアユは美味しいです。熊本県人吉駅の「鮎すし」、新八代駅の「鮎屋三代」の寿司も絶品。琵琶湖のアユは成長しても大きくならないので、小アユの山椒炊きは滋賀名物です。
天然アユと養殖アユを食べ比べると、香り、身質、脂など天然のアユの方が勝るといいますが、最近では、養殖業者の方の努力と技術革新により、天然仕上げアユと呼ばれている育成方法が確立して、より天然に近い美味しいアユとなり、市場でも評価されています。余計な脂肪が溜まらないように工夫され、姿も味も栄養価も天然アユに近づいています。機会があれば、いろいろ食べ比べてみるのも良いですね。

鮎ごはん(鮎めし・鮎飯)

アユの代表的なご当地料理、栃木編:鮎ごはん(鮎めし・鮎飯)

鮎ごはん(鮎めし・鮎飯)ってどんな料理?

旬ならではの風味豊かな「鮎ごはん」。
焼いたアユを丸ごとお米と一緒に炊き上げます。ほぐしたアユの身と、アユの旨みや香りをぎゅっと閉じ込めたご飯を一緒に味わうことができる贅沢なご飯です。

鮎ごはん(鮎めし・鮎飯)に必要な材料は?(4人分)

・米 : 3合
・鮎: 3~5匹
・しょうゆ: 1/4カップ
・酒: 大さじ1
・しょうが: 適量

鮎ごはん(鮎めし・鮎飯)の作り方

①米を研ぎ、水に30分浸しておく。調味料を合わせておく。米は浸水後、しっかりと水気を切る。

②アユはさっと洗い、フンが残っている可能性があるので肛門を尾に向かって絞り出す。アユに塩を適量振って、魚焼きグリルなどで表面が焼けるまで火を通す。

③炊飯器で炊く場合は米、合わせ調味料、アユを入れて炊く。鍋や釜で炊く場合は同じ材料を入れ、火にかけて沸騰したら弱火から中火にし、ふたをして10分炊き上げ、火を止めてさらに15分蒸らす。

④食べる際にアユから骨を取り除き、ほぐして盛り付ける。木の芽は手のひらに置き、一度たたいて香りを出して添える。

鮎ごはん(鮎めし・鮎飯)、発祥の由来とは?

春夏秋冬、1年を通じてアユとともに

春に日本各地の川でアユの遡上が始まります。アユ釣りで有名な神奈川県の相模川では2018年も6月1日にアユ釣りが解禁されました。新聞やテレビでの報道によりますと今年は、昨年の1442万尾の約3倍となる4642万尾(5月26日時点)の天然遡上を相模大堰(海老名市)で確認されています。神奈川県内水面漁業振興会の調査によると、平成11年以降の観測以来で最も多いそうです。原因は分かっていませんが、静岡・興津川、狩野川、茨城・久慈川、栃木・那珂川でもアユの遡上は好調の様です。夏の旬を過ぎ、秋を迎えると、アユは産卵のため川を下ります。「落ちアユ」です。落ちアユをじっくりとあぶり、いろりにつるして薫製にし、保存食にする風習が各地に残っています。鮎ごはん(鮎めし・鮎飯)は、保存したアユをみんなで、おいしく食べるための先人の知恵だったのです。

鮎ごはん(鮎めし・鮎飯)はご当地ではどんな時に食べられる?

土用鮎と言われる夏場までのアユと、やなを仕立て捕える落ちアユが出回る9月末頃からと年に2回の旬があるアユを使い、鮎ごはん(鮎めし・鮎飯)として祭りなどに振る舞われますが、現在では一般的に各家庭でも食べられています。

鮎ごはん(鮎めし・鮎飯)の栄養価・効能は?

天然アユと養殖アユでは、食べているエサが異なりますので、含まれる栄養素が若干異なりますが、どちらも、タンパク質、カリウム、カルシウムが豊富です。骨ごと食べた場合のカルシウムは、マイワシの約3倍です。天然アユは、タンパク質の合成や代謝に欠かせないビタミンB12が、養殖アユでは、ビタミンA、カルシウムの吸収に必要なビタミンDが豊富です。養殖アユは脂質が天然アユの約3倍と多いですが、その脂肪酸にはEPAやDHAも含みます。季節の香り楽しむには天然アユが良いですが、栄養面では養殖アユが優れている面もあります。

アユ料理に欠かせない「蓼酢(たです)」の蓼は、「蓼(たで)食う虫も好き好き」の蓼。

ことわざに「蓼(たで)食う虫も好きずき」というのがあります。これは、他に草があるにもかかわらず辛い蓼を食べる虫も居るように、人の好みは様々で、一般的には理解しがたい場合もあるという意味です。蓼(たで)には特有の香りと辛みがありますが、アユ料理に欠かせない蓼酢の材料でもあります。「鮎蓼(あゆたで)」と呼ばれるぐらい、アユとの相性が抜群によいのです。蓼(たで)の辛味成分はタデオナールと呼ばれるもので、舌の表面にある味覚を感じる味蕾という細胞の中に、このタデオナールを認識する部分があり、辛く感じるといわれています。また「蓼(たで)」という名前は、舌をただれさせるほど辛いということから名付けられています。アユの内臓のほろ苦さと蓼(たで)の辛さがマッチしてアユの美味しさを深いものにしているのでしょう。

アユ漁の方法は?

アユ漁は、魚が流下できるように川に仕掛けを設け、その隙間に棚を設けて、その上から人が網を用いて魚をとる漁法である「待網(まちあみ)」、川に打ち付けた杭に藁をとりつけた縄を張り、仕掛けに魚を誘導してとる漁法の「瀬張網(せはりあみ)」、柴などを用いて川を分断し、滞留した魚をとる漁法「柴ぜき」が中心ですが、川に魚を誘導する仕掛けを設けて下ってくるアユをとる漁法の「梁(やな)」もあります。「梁(やな)」は明治時代から行われている伝統漁法です。海のない栃木県では、川魚から栄養を摂取しようと、清流・那珂川で「梁(やな)」が始まったといわれています。

アユの魅力

岐阜のアユ、水戸のアンコウ、明石のタイ

四方を海に囲まれた日本では魚が身近にあり、魚に関して、またアユに関してのことわざがあります。アユに関してのことわざの多くは、「釣り」に関しての言葉が多いです。友釣りというのは有名ですが、「アユの寄るところ竿が寄る」という言葉もあります。これはアユは釣り人が集まっている場所で釣れば、まずあぶれることがないといわれており、大勢が知らず知らずに集まるところは、やはり良いポイント。釣りは第一に場所であることを表しています。また「初夏の増水後は豊漁、秋の増水後に好漁なし」という言葉が示す通り、春の若アユは上流の清流域を目指して遡上しますが、大雨などの増水で押し戻されても再び遡り、「差し返しアユ」「差し戻しアユ」と呼ばれて、また釣れるようになります。しかし、秋は産卵期を迎えて「落ちアユ」となり、川を下るので、このときに増水があると、そのまま下ってしまい二度ともどってきません。
「岐阜のアユ、水戸のアンコウ、明石のタイ」というのは、アユ・アンコウ・タイの美味な筆頭産地を表し、岐阜のアユは長良川が最良のものとされています。

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