トリガイ (鳥貝)

2024.02.27

旬:4~5月(太平洋側)  6~7月(日本海側)
主産地: 愛知県、三重県、京都府

トリガイ (鳥貝)を選ぶ

噛んでいくうちに甘味が残って、舌触りがよい貝です

トリガイという名は、食用とする足の部分(別名オハグロ)が鳥のクチバシのように紫がかった黒色なので「トリガイ」という名がついたといわれています。トリガイは、普段は砂の中でじっとしていますが、天敵であるヒトデがトリガイを食べようと上にかぶさってきたとき、貝の中に折りたたまれている長い足を使ってジャンプして逃げます。貝としては噛み切り易い適度な歯ざわりとほのかな甘みがあり美味です。

一般的にトリガイの刺身といえば、湯通ししたものです

三角が大きく厚みがあり、黒いものほど高値が付きます。寿司ダネで知られるトリガイは、生のままで出回る事は少なく、足を開き、湯通しした加工品が流通しています。湯通ししたものは冷凍してもあまり味が落ちないので、冷凍物も利用してみましょう。スーパーや回転寿司などで見かけるトリガイの多くは中国や韓国から、同じように開いて湯引きされた輸入物です。

江戸時代に握りずしが誕生して以来の代表的ネタ

春に獲れる物を「春貝」と呼び、太平洋側で多く獲れます。食感が柔らかく甘味が強いのが特徴です。秋に獲れる物は「秋貝」と呼ばれ、主に日本海側で獲れます。身が大きく歯ごたえが楽しめますが「春貝」のような繊細な甘さは無いです。漁の盛んな地域ではヒモも食べられ、店頭に並ぶこともあります。千葉県船橋では小ぶりのトリガイを殻つきのまま茹でて食べることがあり、これを「とんぼ」といいます。

トリガイ (鳥貝)のおいしい食べ方

生のトリガイが手に入ったら、まず生で。次に茹でて食べてみましょう。

トリガイは開いて二等辺三角形状にしたものを湯通しし、寿司種、刺身、酢の物、酢味噌和えなどにして食します。トリガイはプロでも捌いた経験のない人がいるほど、活トリガイは貴重です。トリガイは消化管に泥を含んでいる物が多いことや、殻が割れやすいので注意が必要です。また、表面の黒い色素が取れやすく、寿司職人はガラス板の上で開きます。

もし、活トリガイを手に入れたら是非捌いてみて下さい。その場合、殻を剥いて、なるべく動かさないようにトリガイの黒い足の部分だけを紙一重残して二つに切り分け、内臓をきれいにとり除きます。次にたて塩といわれる塩水を作り、酢を少し入れ、さらに氷を入れ、開いたトリガイを沈めます。そして鍋に塩水、酢を入れたものを沸かし、この中に先ほどたて塩に沈めておいたトリガイをさっと2秒程度くぐらせます。最後にもとのたて塩で冷まします。

普通の湯で茹でるとトリガイの黒が湯に流れてしまいますが、酢は色落ちを防ぎ、身をコーティングします。たて塩を使うのは、甘さを際立たせ味が逃げないようにするためです。
生のトリガイはコリコリとしながらもフワフワとした食感と貝の旨みが特徴ですが、火を入れることによってシャキシャキしながらもフワっとした食感に甘さが加わります。
ホッキガイは、甘みを出すために茹でてから開くのですが、トリガイは開いてから茹でるのがセオリーのようです。今度、活トリガイが手に入ったら、ホッキガイのように茹でてから開いて食べ比べしてみたいと思います。

しなやかな歯触りとシコシコした歯ごたえが特徴の生トリガイ

1つの貝から1貫の握りしか出来ないトリガイは高級寿司店御用達です

アカガイの殻ととても似ていますが、筋の色が赤茶色がアカガイ、黒いのがトリガイです

貝類の中ではタンパク質の含量が多く、人の体内に入ると必須アミノ酸に変化します

トリガイ (鳥貝)の豆知識

京都府のプライドフィッシュ「丹後とり貝」

舞鶴湾や若狭湾はもともとトリガイの好漁場でしたが、水質汚染に弱く、年によっての豊凶の差が大きいのが悩みでした。そこで京都府立海洋センターが、稚貝を人工孵化させトリガイの育成(養殖)の実用化に成功しました。この方法で育てられたトリガイは天敵のタコやヒトデから守られ、天然物より大きく育ち、安定して供給することが可能で、「丹後とり貝」のブランド名で京都府のプライドフィッシュに認定されています。その大きさは一般のトリガイと比べると一回り以上も大きく、大きくなるほど肉厚になるのも特徴で、その味は柔らかく独特の甘味を持ち府内はもちろん、全国の高級飲食店で取り扱われています。

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