滋賀県の地野菜・伝統野菜 1

2023.02.19

滋賀県は、比良(ひら)山地や鈴鹿山地などの山地によって囲まれている盆地(近江盆地)です。気候の特徴として、全域が内陸気候であり、北部は日本海側気候、南部は太平洋側気候、瀬戸内海側気候を併せ持っています。盆地特有の夏の暑さと冬の寒さを和らげているのは、琵琶湖があることで湖の水が暖まりにくく夏の気温上昇を抑え、気温の下降を抑えているので、冬も冷えにくいことが影響しています。従って、年間を通じ、最高気温と最低気温の差が少ないのです。

滋賀は「かぶ王国」

かぶは中国を経て日本に伝わりました。「日本書記」にも記録があるほど歴史のある野菜です。日本には80を超える在来種のかぶがあり、関ケ原を境界に「かぶらライン」を引くと、東側(東日本)はヨーロッパ経由で伝えられた寒さに強い洋種系、西側(西日本)は温暖な気候を好む和種系の品種が多いです。和種系はルーツが不明で、突然変異でうまれた品種も多くあります。

京の都へ続く天下の要所として栄えた近江は、固有の野菜が今も多くありますが、中でも「かぶ」は要注目です。

日野菜

室町時代、日野町鎌掛で発見された細長いかぶです。別名「緋の菜」「えびな」と呼ばれます。地元では「赤菜」と呼ばれます。県を代表するかぶで、日野町の吉野源兵衛という種子商人が宝暦年間(1751~1764年)に全国に広めました。紫色と白色のコントラストが美しく、ほろ苦さと辛みがあるのが特徴です。おもに漬け物にされますが、サラダや天ぷらで食べても美味しいです。

北之庄菜

近江八幡市北之庄町で江戸末期から栽培されてきたかぶです。首と葉の軸が紫紅色で、下ぶくれの愛らしい形が特徴です。名前に「菜」と付いていますが、かぶの仲間です。光があたる地上部は紫紅色で地下部は白色です。肉質は緻密で、辛みと酸味のバランスがよく、主に漬け物にして食べられますが、油との相性もよいのでキンピラなどの炒め物にも活用できます。一度は途絶えた野菜ですが、1998年頃に栽培が復活しました。

赤丸かぶ

滋賀県の北部、米原市の湖辺部で明治時代から栽培されている赤かぶです。中は芯を中心に赤色の斑点がありますが、霜に当たると赤色が全体に広がり、芯まで色づき甘みが増します。赤丸かぶは、非常にかたく、よく締まった肉質とシャキシャキした歯ごたえが特徴です。ぬか漬けや酢漬けなど、漬物としてよく利用されますが、ポトフやソテーなど加熱しても美味しいです。

万木かぶ (ゆるぎかぶ)

万木かぶは、高島市安曇川町万木(ゆるぎ)地区で江戸時代から受け継がれてきた赤かぶです。この地方で作られていた蛭口かぶが白かぶと自然交配によってできたものといわれ、双方のよさを併せもちます。明治に品種改良をした地元の農家水口藤助氏にちなみ「藤助かぶ」とよばれていましたが、明治中期の頃に主産地である「万木」がその品種名になりました。肉質は柔らか過ぎずかた過ぎず、表面はつやのある赤色で、中は白色です。漬け込むと中の白い部分までピンクに染まり、色鮮やかな漬物になります。

自宅の菜園でも (小5)

近江かぶら

江戸時代に大津市尾花川を中心に栽培されていた扁平な白かぶです。京の伝統野菜である聖護院かぶの原種ともいわれています。肉質は緻密で甘みが強く、葉の部分が大ぶりなのが特徴です。大正天皇陛下に献上されました。

小泉紅かぶら

茎と果皮は濃い赤色で、下ぶくれが特徴です。果肉は白です。酢漬けやぬか漬けにすることで、全体が赤色に染まります。果肉はかたく歯ごたえがあります。一般的なかぶに比べると繊維質があります。彦根藩井伊家にも献上された記録があります。

守山矢島かぶら

滋賀県守山市矢島町で古くから作られてきた「守山矢島かぶら」は平たい球状をしており、地表に出ている部分の表皮と茎が紫色、地中に埋まった部分が白色、果肉は白色をしているのが特徴です。なめらかな質感と甘みがあります。永禄年間(1560年頃)に織田信長が守山市矢島町で寺院を焼き討ちした後、その土地にかぶの種をまいたところ彩の良いかぶができたという逸話が残っています。

関連する記事